【不整脈の説明】

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治験担当モニターのための不整脈の説明





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■■■ 不整脈について(1)■■■

正常な心臓は規則正しく協調的に拍動するが,これは固有の電気的特性をもつ電気パルスが筋細胞により生成されて広く伝達され,一連の組織的心筋収縮を誘発するからである。

不整脈および伝導障害は,これらの電気パルスの生成や伝導,または両方の異常に起因する。

先天的な構造異常(例,房室副伝導路)または機能異常(例,遺伝性イオンチャネル疾患)を含む心疾患はいずれも調律を障害しうる。

調律障害を引き起こす,またはその一因となる全身要因には,電解質異常(特にKまたはMgの低下),低酸素症,ホルモンの不均衡(甲状腺機能低下症,甲状腺機能亢進症),薬物および毒物(例,アルコール,カフェイン)がある。



●解剖および生理

上大静脈と高位右房外側の接合部には,各正常心拍の最初の電気パルスを生成する細胞群があり,洞房結節または洞結節と呼ばれる。

これらのペースメーカー細胞の放電は隣接細胞を刺激し,連続する心臓領域に規則正しい順序で刺激が伝わる。

パルスは,心房から結節間伝導路および機能の特化されていない通常の心房筋細胞を選択的に経由して房室結節へ伝導する。

房室結節は心房中隔の右側に位置する。房室結節の伝導速度は遅く,したがってパルス伝導が遅延する。

房室結節伝導時間は心拍依存性であり,自律神経緊張および血中カテコールアミンにより調節され,心房拍動数がいくつであっても心拍出量を最大化する。

心房は前壁中隔領域以外では線維輪により心室と電気的に絶縁されている。

前壁中隔領域では,房室結節から連続するヒス束が心室中隔の上端部に進入して左脚と右脚に分岐し,プルキンエ線維で停止する。

右脚ではパルスは右室の前壁および心尖部心内膜領域に伝導する。左脚では心室中隔の左側全体に扇形に広がる。

左脚の前部(左脚前枝)および後部(左脚後枝)は心室中隔の左側を刺激し,これは心室において電気的に興奮する最初の部分である。

したがって,心室中隔は左から右へ脱分極し,それに続いて心内膜表面から心室壁を経て心外膜表面に至る両心室の興奮がほぼ同時に起こる。





●電気生理学:

心筋細胞膜を通るイオンの通過は,心筋細胞の周期的な脱分極および再分極(活動電位と呼ばれる)を引き起こす特異的イオンチャネルを介して制御されている。

活動中の心筋細胞の活動電位は,心筋細胞が収縮期膜電位-90mVから約-50mVに脱分極するときに起こる。

この閾電位で,電位依存性の速いNaチャネルが開口し,その急激な濃度勾配に従ったNa流入が介在して急速な脱分極が生じる。

速いNaチャネルは急速に不活性化されてNa流入が停止するが,時間依存性および電位依存性の他のイオンチャネルが開口し,遅いCaチャネルからCaを流入させ(脱分極事象),KチャネルからKを流出させる(再分極事象)。

最初はこれら2つの過程が均衡を保つので膜電位が正に維持され,活動電位のプラト-相が延長する。

この相の間は,心筋細胞内に流入するCaが電気機械的結合および心筋細胞収縮に関与する。

最終的に,Ca流入は停止してK流出が増加し,心筋細胞の急速な再分極が生じて静止膜電位-90mVに戻る。



心臓組織は一般に2種類ある。

速いチャネルから成る組織(心房および心室の活動中の筋細胞,ヒス-プルキンエ系)にはNaチャネルが高密度に認められ,自発性拡張期脱分極がほとんどまたは全くないこと(したがってペースメーカー活動がきわめて遅い),早期脱分極速度が非常に速いこと(したがって伝導速度が速く),不応期の消失が再分極と同時に生じること(したがって短い不応期で高頻度に反復パルスを伝導できる)を特徴とする活動電位が生じる。

遅いチャネルから成る組織(洞房結節および房室結節)にはNaチャネルが低密度に認められ,自発性拡張期脱分極がより急速であること(したがってペースメーカー活動がより速い),早期脱分極速度が遅いこと(したがって伝導速度が遅い),不応期の消失が再分極より遅れて生じること(したがって不応期が長く,高頻度の反復パルスを伝導できない)を特徴とする活動電位が生じる。

正常では,洞房結節は最も速い自発性拡張期脱分極速度を有するので,その細胞は他の組織よりも高頻度に自発性活動電位を生成する。

したがって,正常心臓では,洞房結節が自動能を有する主要組織(ペースメーカー組織)である。もし洞房結節がパルスを生成しなければ,洞房結節に次いで自動能が高い組織がペースメーカーとして機能し,典型的にはこれは房室結節である。

交感神経刺激はペースメーカー組織の放電頻度を増加させ,副交感神経刺激はこれを減少させる。
■■■ 不整脈について(2) ■■■

●正常調律:

成人における安静時の洞心拍数は通常60〜100拍/分である。

心拍数の低下(洞徐脈)は若年者,特に運動選手(スポーツと心臓: 診断を参照 ),および就寝中に起こる。

心拍数の上昇(洞頻脈)は,交感神経および循環カテコールアミンの作用を介して運動,疾患,または情動とともに起こる。

正常では,心拍数の著明な日内変動が起こり,早朝覚醒直前の心拍数が最も低下する。



吸気時のわずかな心拍数増加および呼気時の心拍数減少(呼吸性洞性不整脈)も正常である;

迷走神経緊張の変動がこれを介在し,特に健康な若年者に一般的にみられる。この変動は加齢とともに減少するが,完全には消失しない。

完全に規則的な洞調律拍動は病的であり,自律神経系の脱神経(例,進行した糖尿病)または重度心不全を有する患者に生じる。

ほとんどの心臓電気活動は心電図に現れるが,洞房結節,房室結節,およびヒス-プルキンエ系の脱分極は,関与する組織が少なく検出されない。

P波は心房脱分極を示す。QRS波は心室脱分極を示し,T波は心室再分極を表す。



PR間隔(P波の開始からQRS波の開始まで)は,心房興奮開始から心室興奮開始までの時間である。

この間隔の多くは,房室結節におけるパルス伝導の遅延を反映する。

RR間隔(2つのQRS波間の時間)は心室拍動速度を表す。

QT間隔(QRS波の開始からT波の終了まで)は,心室脱分極の持続時間を表す。

QT間隔の正常値は,女性においてわずかに長く,心拍数が低下しても長くなる。

QT間隔は心拍数の影響について補正する(QTc)。





●●● 病態生理 ●●●

調律障害は,パルス生成,パルス伝導,またはその両方の異常から生じる。

徐脈性不整脈は,主に房室結節やヒス-プルキンエ系内の内因性ペースメーカー機能低下や伝導ブロックから生じる。

ほとんどの頻拍性不整脈はリエントリーに起因するが,一部は,正常自動能の亢進または自動能機序の異常から生じる。



リエントリーとは,伝導特性および不応期が異なる2つの伝導路が相互に連絡し,それをパルスが旋回伝播することである(不整脈および伝導障害: 典型的回帰の機序)。

特定の状況下(典型的には期外収縮によって促進される)で,リエントリーは興奮波面の持続的な旋回を引き起こし,頻拍性不整脈が生じる(不整脈および伝導障害: 房室結節内リエントリー性頻拍の開始)。

正常では,リエントリーは刺激に続いて起こる組織の不応期により阻止される。

しかしながら,次の3状態ではリエントリーが好発する:

組織の不応期の短縮(例,交感神経刺激による),伝導路の延長(例,肥大または伝導路異常による),パルス伝導の遅延(例,虚血による)。





●●● 症状と徴候 ●●●

不整脈および伝導障害は無症候性のこともあるが,動悸(脈の欠滞,速い脈,もしくは激しい脈の感覚―心疾患患者へのアプローチ: 動悸を参照 ),血行動態不全症状(例,呼吸困難,胸部不快感,前失神状態,失神),または心停止を引き起こすこともある。

ときに,遷延性の上室性頻拍中に心房性ナトリウム利尿ペプチドの放出による多尿が生じる。



脈の触診や心臓の聴診により心室拍動およびその規則性や不規則性が明らかにされる。

頸静脈波の診察は,房室ブロックや心房性頻脈性不整脈の診断に有用となる。

例えば,完全房室ブロックでは,房室弁が閉鎖するときに心房が断続的に収縮し,頸静脈波に巨大a(キャノン)波が生じる(心疾患患者へのアプローチ: 静脈を参照 )。

不整脈の身体所見は他にほとんどない。
■■■ 不整脈について(3) ■■■


●●● 診断 ●●●

既往歴および身体診察によって不整脈が検出され,考えられる原因が示唆されるが,診断には12誘導心電図,または信頼度は低いがモニター心電図が必要であり,これは症状と調律との関係を確立するために症状発現中に実施することが望ましい。



心電図は系統的に判読する;

キャリパーで間隔を計測し,微細な不規則性を同定する。

診断上の重要な特徴は心房興奮の頻度,心室興奮の頻度および規則性,ならびにこの2つの関係である。

不規則な興奮シグナルは,規則的な不規則または不規則な不規則(検出可能なパターンなし)に分類される。

規則的な不規則性は,それ以外は正常な調律における間欠的な不規則性(例,期外収縮),または予測可能な不規則性パターン(例,拍動群間の反復的な関係)である。

幅の狭いQRS波(0.12秒未満)は上室起源を示す(ヒス束分岐部より上部)。幅の広いQRS波(0.12秒以上)は,心室起源(ヒス束分岐部より下部)を示すか,または心室内伝導障害やWolff-Parkinson-White症候群の心室早期興奮により誘発される上室性調律を示す。




●徐脈性不整脈:

徐脈性不整脈の心電図診断は,P波の有無,P波の形態,およびP波とQRS波との関係による。

P波とQRS波との間に関係のない徐脈性不整脈は房室解離を示す;

その補充調律は接合部性の場合(幅の狭いQRS波)と心室性(幅の広いQRS波)の場合とがある。

P波とQRS波との関係が1:1の規則的なQRS調律は房室ブロックの不在を示す。

QRS波に先行するP波は,洞徐脈(P波が正常の場合)または心房性補充調律を伴う洞停止(P波が異常の場合)を示す。

QRS波の後ろにくるP波は,心室補充調律および逆行性室房伝導を伴う洞停止を示す。この場合,QRS波は幅広となる。

QRS調律が不規則な場合,P波の数は通常QRS波よりも多い;

すなわち,一部のP波はQRS波を生むが,一部はこれを生まない(第2度房室ブロックを示す―不整脈および伝導障害: 第2度房室ブロックを参照 )。

P波とそれに続くQRS波との間に1:1の関係を呈する不規則なQRS調律は,通常,洞性拍動の緩徐な促進および抑制を伴う洞性不整脈を示す(P波が正常な場合)。

それ以外の点では規則的なQRS調律における休止期は,第2度房室ブロックによるものだけでなく,非伝導性P波(異常P波は通常,先行するT波の直後に認識されたり,先行するT波の形態を変形させる),洞停止,または洞進出ブロック(不整脈および伝導障害: 洞結節機能不全を参照 )によっても引き起こされうる。




●頻拍性不整脈:

拍性不整脈は4群に分類され,明らかに規則的か不規則か,QRS波の幅が狭いか広いかで定義される。

不規則で幅の狭いQRS波の頻脈性不整脈には,心房細動,心房粗動または種々の房室伝導を伴う真性心房頻拍,および多源性心房頻拍がある。

鑑別は心房の心電図信号に基づいて行われ,これはQRS波間の休止期が長くなった際に最もよくみられる。

独立したP波を伴わず,連続性で,出現時期および形態が不規則で非常に速い(300/分を超える)心房の心電図信号はAFを示す。

収縮毎に異なる少なくとも3種類の形態を伴う独立したP波は,多源性心房頻拍を示唆する。

途中に等電期が介在しない,規則的で独立した一様の心房シグナルは,心房粗動を示唆する。



不規則で幅の広いQRS波の頻拍性不整脈には,脚ブロックまたは心室早期興奮のいずれかを伴って伝導される前述の心房性頻脈性不整脈4種,および多形性の心室頻拍がある。

鑑別は,心房の心電図信号および心拍数の非常に速い(250/分を超える)多形性心室頻拍の存在に基づいて行われる。



規則的で幅の狭いQRS波の頻脈性不整脈には,洞頻脈,一定の房室伝導比を伴う心房粗動または心房頻拍,および発作性上室性頻拍症(房室結節回帰性頻拍,房室副伝導路による順行性房室回帰性頻拍,洞結節回帰性上室性頻拍)がある。

迷走神経刺激または薬理的房室結節伝導遮断は,これらの頻拍の鑑別に役立つ場合がある。

これらの手法を用いても洞頻脈は停止しないが,洞頻脈が緩徐化するかまたは房室ブロックが発現して正常P波が露呈する。

同様に,心房粗動および真性心房頻拍は通常停止しないが,房室ブロックにより粗動波または異常P波が露呈する。

最も一般的な型の発作性上室性頻拍(房室結節回帰性および順行性回帰性頻拍)は,もし房室ブロックが起こるならば,停止するはずである。



規則的で幅の広いQRS波の頻脈性不整脈には,規則的で幅の狭いQRS波の頻脈性不整脈で挙げた不整脈(それぞれが脚ブロックまたは心室早期興奮を伴う)および単形性心室頻拍がある。

迷走神経刺激はこれらの鑑別に役立てられる。

心室頻拍と心室内伝導障害を伴う上室性頻拍とを鑑別する心電図基準が提案されている。

疑わしい場合,調律が心室頻拍であれば上室性頻拍用の一部の薬物により臨床状態が悪化するため,その調律は心室頻拍であるとみなす;しかしながら,その逆は真ではない。
■■■ 不整脈について(4) ■■■

●不整脈の治療(1)

治療の必要性は様々で,不整脈の症状およびリスクにより左右される。

例え悪化しても,重篤なリスクを伴わない無症候性の不整脈は治療の必要はない。

症候性の不整脈は生活の質を改善するために治療が必要となりうる。

致死的となる恐れのある不整脈は治療を要する。

治療は原因に向けられる。

もし必要であれば,抗不整脈薬,カルジオバージョン除細動,ペースメーカー,またはこれらの併用を含む直接的な抗不整脈療法が用いられる。

血行動態不全症状を起こしている,または起こすと思われる不整脈患者では,治療に対する反応が評価されるまで車の運転を制限する必要があることがある。






●●● 不整脈に対する薬物 ●●●

ほとんどの抗不整脈薬は,主要な細胞電気生理学的作用に基づいて(ヴォーン-ウイリアムズ分類)主に4クラスに分類される(不整脈および伝導障害: 抗不整脈薬(ヴォーン-ウイリアムズ分類))。

ジゴキシンおよびアデノシンはヴォーン-ウイリアムズ分類には含まれない。

ジゴキシンは心房や心室の不応期を短縮し,迷走神経刺激性を有するので,その結果房室結節伝導および房室結節不応期を延長させる。

アデノシンは房室結節伝導を遅延または遮断し,房室結節伝導に依存して持続する頻脈性不整脈を停止できる。




●クラスI:

Naチャネル遮断薬(膜安定化薬)は速いNaチャネルを遮断し,速いチャネル組織(活動中の心房および心室の筋細胞,ヒス-プルキンエ系)での伝導を遅延させる。

心電図では,この作用はP波の拡大,QRS群の拡大,PR間隔の延長,またはこれらの組み合わせとして反映される。

クラスIの薬物はNaチャネル作用の動態に基づいて細分される。

クラスIbの薬物は速い動態を,クラスIcの薬物は遅い動態を,クラスIaの薬物は中等度の動態を示す。

Naチャネル遮断の動態は,電気生理学的作用が現れる時点の心拍数を決定する。

クラスIbの薬物は速い動態を有するため,その電気生理学的作用は速い心拍数でのみ発現する。

したがって,正常心拍数の正常調律中に得た心電図は,速いチャネル組織の伝導遅延の証拠を通常は示さない。

クラスIbの薬物はそれほど強力な抗不整脈薬ではなく,ごくわずかな作用を心房組織に及ぼす。

クラスIcの薬物は遅い動態を有するため,あらゆる心拍数でその電気生理学的作用を発現する。

したがって,正常心拍数の正常調律中に得た心電図は通常,速いチャネル組織の伝導遅延を示す。

クラスIcの薬物はより強力な抗不整脈薬である。

クラスIaの薬物は中等度の動態を有するため,速いチャネル組織の伝導を遅延させる作用は,正常心拍数の正常調律中に得た心電図上に認められることも認められないこともある。

クラスIaの薬物はKチャネル再分極も遮断し,速いチャネル組織の不応期を延長する。

心拍数が正常でも,心電図上でこの作用はQT間隔延長として反映される。

クラスIbの薬物およびクラスIcの薬物はKチャネルを直接遮断しない。

主な適応は,クラスIaおよびIcの薬物が上室性頻拍,クラスIの全薬物が心室頻拍である。

最も懸念される副作用は,治療中の不整脈以上に悪性の薬物関連不整脈を引き起こす催不整脈作用である。

クラスIaの薬物はtorsade point型心室頻拍を惹起しうる;クラスIaおよびクラスIcの薬物は心房性頻脈性不整脈を十分に抑制,緩徐化して,心室拍数の著明な増加を伴う1:1の房室伝導を生じさせる。

クラスIの薬物は全て心室頻拍を悪化させうる。

これらはまた,心室の収縮性を抑制する傾向がある。

クラスIの薬物のこうした副作用は構造的心疾患の患者に起こりやすいので,クラスIの薬物は一般にそのような患者には勧められない。

したがって,これらの薬物は通常,構造的心疾患のない患者または構造的な心疾患を有するが他に治療選択肢のない患者にのみ用いられる。




●クラスII:

クラスIIの薬物はβ遮断薬であり,これらは主に遅いチャネル組織(洞房および房室結節)に作用して,自動能を低下させ,伝導速度を遅延させ,不応期を延長する。

したがって,心拍数は低下し,PR間隔は延長して,房室結節では速い心房脱分極が低い頻度で伝導する。

クラスIIの薬物は主に,洞頻脈,房室結節回帰,心房細動,および心房粗動を含む上室性頻拍の治療に用いられる。

これらの薬物は心室頻拍の治療にも用いられ,心室細動の閾値を上げ,βアドレナリン受容体刺激の心室性催不整脈作用を抑制する。

β遮断薬の忍容性は一般に良好である;副作用には,倦怠感,睡眠障害,および消化管障害がある。これらの薬物は喘息患者には禁忌である。



●クラスIII:

クラスIIIの薬物は主にKチャネル遮断薬であり,これは遅いチャネル組織および速いチャネル組織において活動電位持続時間や不応期を延長する。

したがって,高頻度でパルスを伝導する心臓組織全体の機能は低下するが,伝導速度はさほど影響を受けない。

活動電位が延長するため,自動能は低下する。

心電図に及ぼす主な作用はQT間隔の延長である。

これらの薬物は上室性頻拍および心室頻拍の治療に用いられる。

クラスIIIの薬物には心室性催不整脈,特にトルサードドポアンツ心室頻拍のリスクがある。



●クラスIV:

クラスIVの薬物は非ジヒドロピリジン系カルシウムチャネル拮抗薬であり,これは遅いチャネル組織においてCa依存性活動電位を抑制するので,自動能および伝導速度は低下し,不応期が延長する。

心拍数は低下して,PR間隔は延長し,房室結節では速い心房脱分極が低い頻度で伝導する。

これらの薬物は主に上室性頻拍の治療に用いられる。
 ■■■ 不整脈について(5) ■■■

●不整脈の治療(2)

ペースメーカー:

ペースメーカーは電気的事象を感知して,電気刺激を心臓に送ることが必要な場合に反応する。

恒久的ペースメーカーのリードは開胸術により,または経静脈的に設置されるが,緊急時の一時的ペースメーカーのリードは胸壁に設置されることもある。

適応は数多いが,一般に症候性徐脈または高度の房室ブロックが含まれる。

一部の頻脈性不整脈はオーバードライブペーシングにより停止でき,これはより速い心拍で短時間のペーシングを行うことで心室を捕捉するものである;

その後,ペースメーカーは望ましい心拍数まで緩徐化する。

とはいえ,心室性頻拍性不整脈は,植え込み型除細動器のようなペーシングだけでなく心変換および除細動も可能な器具を用いることでより良好に治療される。



ペースメーカーのタイプは3〜5つの文字により示されており,これらの文字は,ペーシングされる心腔,センシングされる心腔,センシング事象に対するペースメーカーの反応(抑制または誘発ペーシング),労作中の心拍数増加の可否(速度変調),多部位ペーシングの可能性(両心房,両心室において,または1つの心腔に2つ以上のペーシングリード)を表している。

例えば,VVIRペースメーカーは心室の事象をペーシング(V)およびセンシング(V)し,センシングされた事象に反応してペーシングを抑制して(I),労作中はレートを増加できる(R)。



VVIおよびDDDペースメーカーは最も一般的に使用されている器具である。

これらは,同等の延命効果をもたらすが,VVIペースメーカーと比較して,生理的ペースメーカー(AAI,DDD,VDD)はAFおよび心不全のリスクを低下させ,生活の質をわずかに改善するようである。


ペースメーカーのデザインの進歩には,低エネルギー回路,新しい電池デザイン,およびコルチコステロイド溶出リード(これはペーシングの閾値を低下させる)が含まれ,これら全てがペースメーカーの寿命を延ばす。

モード切り替えとは,センシング事象に反応してペーシングのモードを自動的に変更することである(例,心房細動中にDDDRからVVIRへ)。


ペースメーカーは,事象の過剰感知や感知低下,ペーシングや捕捉の失敗,または異常レートでのペーシングによる誤作動を生じうる。

頻拍は特に頻度の高い合併症である。

レート変調ペースメーカーは振動,心筋活動,またはMRIの磁場により誘発される電位に反応して刺激を増加させることがある。

ペースメーカー起因性頻拍では,正常に機能している二腔ペースメーカーが,房室結節または逆行性副伝導路を介して心房に伝導される心室性期外収縮またはペーシング拍動を感知し,これが速い周期で反復して心室刺激を誘発する。

正常に機能している装置に関連する合併症にはさらに,二腔ペースメーカーの心室チャネルが心房ペーシングパルスを感知することで心室ペーシングが抑制されるクロストーク抑制や,心室ペーシングが誘発する房室非同期によって漠然とした変動性の脳症状(例,浮遊感),頸部症状(例,頸部拍動),または呼吸器症状(例,呼吸困難)が起こるペースメーカー症候群がある。



外界からの干渉は,外科用電気焼灼器やMRIなどの電磁気源に由来するが,ペースメーカーのジェネレータおよびリードがMRIの磁石の内側にない場合,MRIは安全である。

携帯電話および電子セキュリティ装置は干渉源となる可能性がある;

電話をペースメーカーの近くに置くべきではないが,通常の会話に使用するときは問題にならない。


金属探知機を通過する場合,患者が立ち止まらない限りはペースメーカーの誤作動は起こらない。

移植中の合併症はまれであるが,心筋穿孔,出血,気胸が生じうる。

術後合併症には,感染症,リードの移動,およびパルスジェネレータの移動がある。



以上
   

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