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 治験におけるCAPA、QM、リスクマネジメント
 
 QM(Quality Management、CAPA(Corrective Action and Preventive Action)
まず、「QM(Quality Managementについて。CAPA(Corrective Action and Preventive Action)」とは何か?について考えてみましょう。

僕は昔、QA(Quality Assurance:監査)をやっていた時期がある。

で、思ったですが、監査を行って、問題を指摘しても、「それって、あとの祭りだよね。」とか「今更、そんなこと言われても困る、だよね。」的な気持ちがいつもあった。

そこで、問題が発生したかどうかを監査で確認することもいいのですが、もっと良いのは「問題を発生させないようにする」ことだと思った(大事なことは予防だ)。

そのためには「モニターの教育」だよね、となった。

問題を発生させないモニターの人材作りが重要だ。



「治験届」の届出に問題が有った場合、その多くは「モニターが治験変更届を提出しないといけない事柄を知らない」ために発生している。

ここで大事なことは、治験変更届けが必要な事項をモニターにしっかりと教えることだ。

もちろん、電子モニタリング管理システム(DDワークス等)を使っている人はそれをつかって、たとえば、システムのマスターファイルにある治験責任医師の氏名とモニターがモニタリング報告書に記載した治験責任医師の氏名が異なっていたら、注意喚起をシステムが行う、という手もある。

そういう手もあるが、それだとお金がかかるし、問題の根源的な解決にならない。

こういう場合、「何故?」を5回繰り返すとよい。

なぜ、「治験変更届」が適切に届出されていないのか?

それはモニターが治験変更届けの対象事項を知らなかったから。

なぜ、モニターはそれらを知らないのか?

それはモニターがそういう教育を受けていなかったから。

だから、モニターに「治験責任医師が変更になる場合は治験変更届を事前に当局に提出する必要があるからね。」と教育すれば、ほぼ一発でこの問題は解決する(それに無料だ)。





●治験におけるCAPAについて


さっきも書いたが治験においてQA(Quality Assurance:監査)は事後の点検なので、手遅れなことが多い。

QC(Quality Control:品質管理)は、監査ほどではないが、事後のことが多々あり、また、QCによるチェック指摘が問題の根源的解決にならないことが多い。

そこで、「CAPA」だ。

CAPAはキャパと発音する。キャパと言ってもあの著名なカメラマンの名前ではない。(ちょっとピンボケ)

CAPAとは「ミスをみつける、それに対応する」そして「ミスを予防する、リスクを予測する。」することだ。

下記の頭文字をとってCAPAと呼んでいる。

CA(Corrective Action:是正措置) ・・・ミスをみつける、それに対応する。

PA(Preventive Action:予防措置) ・・・ミスを予防する、リスクを予測する。

もし試験でCAPAは何の略?と聞かれたら、「CAPAとはCorrective Action and Preventive Action の略です。」と答えればよい。




CAPAという概念はGMPではわりと古くからあった。
   ↓
●「CAPA システムと教育訓練」
   ↓
http://www.jpma.or.jp/information/quality/pdf/090929_6.pdf

●「CAPA(是正措置・予防措置) マネジメント及びその管理に関する取り組み事例」
   ↓
http://www.jpma.or.jp/information/quality/pdf/090929_4.pdf

●「是正措置・予防措置システムにおける取り組み事例」
   ↓
http://www.jpma.or.jp/information/quality/pdf/090929_5.pdf

●「品質マネジメントシステムへの取り組み」
   ↓
http://www.jpma.or.jp/information/quality/pdf/080929_6.pdf



上記に「品質マネジメントシステム」という言葉がありますね。

最近は、治験におけるCAPAや治験におけるQM(Quality Management)が検討され始めた。

対処療法から根治療法に変わってきたのだ。



治験におけるCAPAの事例としては、たとえば、「プロトコルの逸脱」が高頻度で、起こったとしよう。

原因をさぐってみると、プロトコルに記載されている検査のステップが誤解を招く表現になっていることが分かった。

そこで、プロトコルを改訂します。・・・・・と、ここまでがCAPAのうちのCA(Corrective Action:是正措置)だ。


さらに、他のプロジェクトでも同様なことが起こっていないか、上記の逸脱の情報共有を組織内ではかる。

また、「誤解」を招かないような文章の書き方を教育する。

ついでに、当該プロジェクトに所属していない第三者の人にプロトコルを読んでもらい、誤解が生じないかどうかを確認することをSOPで規定した・・・・・と、ここまでくるとCAPA のPA(Preventive Action:予防措置)だ。
 QM(Quality Management)について
●QM(Quality Management)について

人はミスを犯す動物だ。

組織はミスを発生させるシステムだ。

組織において問題の発生は不可避と言ってもいい。


そのミスをどう予防するか、もし、ミスが発生したらどうするか、を考えるのがQM(Quality Management)だ。

治験におけるQM(Quality Management)とは?

まず、次のことを考える。

●プロトコル逸脱が発生したらどうするか?

●あるいはより重大な逸脱をどう防ぐか?

●そのプロトコル逸脱は許容範囲内か?それとも看過できないプロトコル逸脱か?




昔はQAをすることで「品質を保証する」としていた。

しかし、書類や治験のプロセスが増えてきたので、プロセス途中でQCする必要がでてきた。

In-process QCだ。(工程内QCだ)

そして、そのIn-process QCで発見された問題点を緊急処置し、さらに根源的な原因を探る。

QM(Quality Management)では治験の工程をリアルタイムでチェックすることになる(ここが重要!)。




QCはドキュメントの質をあげることがメインのお仕事だ。

QCの場合、対象は書類だけだが、QM(Quality Management)の場合はプロセスの改善(変更)も考える。

上層部に改善提案もする。

たとえば問題を解決するために、新たなSOPを作り、SOPをトレーニングする、SOPどおりに動いてもらう、それをQCやQAで確認・評価する。

QM(Quality Management)の手法のひとつがCAPAだ。
 
 治験におけるCAPAマネジメント
●治験におけるCAPAマネジメント

ミスは仕方がない。

たとえば、プロトコルからの逸脱がゼロという治験はない(多分)。

その結果、どうしたか?が大事。(これはPMDAもFDAも重視している。)

問題の再発防止策を講じたかどうか、だ。


そこでCAPAのサイクルを回すことが大事になる。

CAPAサイクルとは下記の流れを回すこと。

CORRECTIVE/PREVENTIVE ACTION(是正/予防措置)⇒MONITORING(監視)⇒INVESTIGATION(調査)⇒CORRECTION(是正)⇒CORRECTIVE/PREVENTIVE ACTION(是正/予防措置)



前述したが、プロトコル逸脱が発生したら、とりあえずの「是正措置」を講じる(バンドエイドだ)。

その是正措置が正しく働いているか、さらに、他の個所でもプロトコル逸脱が発生していないか「監視」する。

もし、新たなプロトコル逸脱が発生したら、「調査」する。

ここで「何故?」を5回、繰り返し、根本的な原因を探る。

根本的な原因が分かったら、それを取り除くように「是正」する。

たとえばSOPを追加・改訂する。

他のプロジェクトにも同様なプロトコル逸脱が発生していないか、情報共有をしながら、調査し、「予防措置」を講じる(ワクチンだ)。

その「予防措置」が正しく働いているか「監視」する。

・・・・・というように、CAPAサイクルを回して、治験の質をあげる。



●治験におけるクオリティリスクマネジメント

クオリティリスクマネジメントとはリスクを最小化すること。

クオリティリスクマネジメントとはリスクを重みづけし、対処すること。

もし問題が発生したら、発生した問題は重篤か、重篤でないかを見極める。


また、治験開始前に問題を予め検討し、その問題の発生確率、発生した場合のインパクトでリスクを分類しておくことが重要。

予想される問題は「頻度は?」「もし発生した場合のインパクトは?」

このように重要性と緊急性を考慮し、3段階で評価する。(優先順位が高い〜中程度〜低い、の3段階)

つまり治験におけるクオリティリスクマネジメントとは「治験の質・過程におけるリスク」を「マネジメント(管理)」することだ。



チーム内でプロトコルを「意地悪な目」で読み、どこでプロトコル逸脱が発生しやすいかを、治験開始前に検討しておく。

その検討結果から、プロトコルの逸脱予防策を予め講じておくのだ。

これが、治験におけるクオリティリスクマネジメントだ。


大事なことは「リアルタイム」に「モニタリング」すること。

問題があったら、即、是正する。

そして、根治療法を施す。

さらに、その問題を組織内(会社内)で情報共有し、SOPを改訂する等で予防すること。

治験においてQCは書類のチェックで終わりがちだが、QMはシステムの是正までカバーする。

QMではリスクマネジメントし、CAPAサイクルを回す。
リスクマネジメント(英語: risk management)とは
●リスクマネジメント(英語: risk management)とは

リスクを組織的に管理(マネジメント)し、損失などの回避または低減をはかるプロセスをいう。

リスクマネジメントは、主にリスクアセスメント(評価)とリスク対応とから成る(JIS Q 31000 「リスクマネジメント―原則及び指針」による)。

さらに、リスクアセスメントは、リスク特定、リスク分析、リスク評価から成る。



リスクマネジメントは、各種の危険による不測事態の損害を最小の費用で効果的に処理するための経営管理手法であるが、治験にも応用可能だ。

リスクには「人的リスク」と「組織的リスク」、「プロセス」そのものに内在するリスクもある(SOPの間違いとか、社内文化とか、風土とか)。


治験におけるクオリティリスクマネジメントでは、当局から、会社から(つまり顧客から)求められている品質レベルを設定しておく。

治験におけるクオリティリスクマネジメントとは新薬を市場に出すまでに発生しそうな様々なリスクを「人的リスク」と「組織的リスク」、「プロセスリスク」に分けて、問題発生の予防を行う。


そして、リスクマネジメントの結果、質が担保できるようになれば、「サンプリングSDV」が可能となる、ということもある。

治験におけるクオリティリスクマネジメントとは対象とするリスクを治験の質にフォーカスし、焦点をあてることだ。

リスク(問題)を予測し、その予防対策を行い、万が一、リスク(問題)が発生したらそのリスクを評価して、対処を決める。


とりあえず、組織の中で課題・問題の共有化から始めませんか?

それだけでも、多分、問題の70%を予防できる、と僕は踏んでいる。
  治験審査委員会の非専門委員の範囲(その5)
獣医師の資格を持つ者を治験審査委員会の委員に指名する場合、当該委員は、医学、歯学、薬学その他の医療又は臨床試験に関する専門的知識を有する者(いわゆる専門委員)に該当するのでしょうか?何人かに意見を聞きましたが、意見がいろいろです。

     ↓

GCP第28条第1項ガイダンス1として、「治験審査委員会は、治験について倫理的、科学的及び医学的・薬学的観点から審議及び評価するのに必要な資格及び経験を、委員会全体として保持できる適切な数の委員により構成する」旨が規定されています。

 獣医師の資格を有することを以って、医学、薬学等の専門家であると一律に判断することは難しいと考えます。

しかしながら、獣医師の資格を有する方には、公衆衛生分野、バイオメディカル分野に従事する等、医療の一端を担っている方もいらっしゃいます。

また、治験実施の妥当性を審議する上で、非臨床試験(動物試験等)の専門的知識を期待されて委員に指名される方もいらっしゃると思われます。

したがいまして、専門委員に該当するか否かについては、当該委員の指名の際に、治験審査委員会の設置者が判断することで差し支えないものと考えます。

なお、獣医師の資格を有する委員以外に、実際の医療に携わっておられる医師の方も委員として指名しておく必要があると考えます。


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