【治験を実施する上での注意点。治験を行うときの注意点。治験実施のポイント。】

治験の流れ(1)
治験体制の確立から治験責任医師・施設選定まで





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■1.まずは治験関連業務の確定、適格者への割当を行う
■■■1−1.治験を実施するにあたって必須となる下記の資料を作成する。

(1)治験薬概要書の作成

(2)治験実施計画書

(3)同意説明文書(案)

(4)症例報告書の見本の作成

(5)モニタリングに関する標準業務手順書の作成

●(5)の「モニタリングに関する標準業務手順書の作成」は基本的にプロトコルに関わらずに1種類のSOPを治験依頼者が作成すればよい。
もし、その治験に特有のモニタリングが必要になったら、その都度、別途、作成すればよい。

たとえば、当該治験に特有のモニタリングとして、作成上特に注意すべき点は下記の内容が考えられる。

・モニタリングの内容・タイミング
 (登録時の確認、SDV、中止・脱落時の臨床検査について)

・治験薬の交付・回収

・逸脱の取扱いについて
 (症例および症例データの取り扱い基準書参照)

・CRFに関する留意事項
 ■1−2.治験薬の製造、品質試験の実施、包装、表示

治験薬は「治験薬GMP」に則って製造すること。(治験薬GMPに適合した施設で製造すること。)


■1−3.治験薬の取り扱い手順書の作成

治験薬の管理に関する手順書には、医療機関の長または治験薬管理者が治験薬の受領、受領、取扱いおよび保管、管理ならびにそれらの記録に際して従うべき指示等を記載する。(省令第16条第6項解説解説)

・治験薬の管理に関する手順書(案)はプロジェクトごとに作成し、モニターは必要に応じて施設ごとに細部の記載を調整する。

・治験薬特有の取扱いおよび保管・管理事項がある場合は、治験薬管理者が理解しやすいように記載する。

・施設確定後から治験薬搬入までの間に治験薬の管理に関する手順書〔21.1〕 について施設と予めすり合わせをしておく。
また、すり合わせた治験薬の管理に関する手順書〔21.1〕 の内容がGCPに基づいていることを確認する。


「治験依頼者は治験契約の締結後遅滞なく、実施医療機関における治験薬の管理に関する手順書を作成し、これを医療機関の長に交付しなければならない(省令第16条第6項)」とある。
モニターは遅くとも治験薬交付時までに治験薬の管理に関する手順書〔21.1〕 を医療機関の長に提供する。

治験薬の管理に関する手順書は治験依頼者から医療機関の長へ提出し、医療機関の長から治験薬管理者に渡される。

予め医療機関の長の承諾を得て治験薬管理者へ直接交付することは差し支えない


また必要に応じて「治験薬の溶解方法その他の取扱方法を説明した文書」を作成し、治験薬管理者、治験責任医師、治験分担医師、CRCに提出する。

治験薬の管理に関する手順書〔21.1〕 には、治験薬の@受領 A取扱い B保管 C管理 D処方
E未使用治験薬の被験者からの返却および依頼者への返却またはその他の処分が適切で確実に行われるための手順とそれらの記録に際して従うべき指示が記載されていることが必要である。


●〈治験薬の管理に関する手順書の記載例〉

(1)治験薬の内容

・治験薬名(コード名、一般名等)

・治験薬の剤型および含量

・治験薬の包装および表示

・その他必要な事項(使用期限、提供数量、ロット番号、目標被験者数、治験薬の割り付け等)

(2)交付方法

・依頼者(あるいはCRO)又は他の依頼者(あるいはCRO)又は他の治験薬交付担当者が治験薬納品書とともに治験薬を治験薬管理者に交付すること。

・治験薬管理者は交付を受けた治験薬を検品すること。

・治験薬管理者が治験薬受領書を依頼者(あるいはCRO)に交付すること。

(3)保管方法

・治験薬管理者が治験薬の保存条件を適切に守り、鍵のかかる保管施設場所場所に保管すること。

・他の医薬品と区別して保管し、プロトコルごとに管理すること。

・治験薬の保管の形態を明記すること (例えば、用量ごと、ロットごと)。

・治験薬の保存条件を明記すること。
(例えば、室温保存、冷所保存、凍結保存、遮光保存、等)

・未使用治験薬、被験者から返却された治験薬、治験薬の箱(外箱、内 箱、空箱等)、空バイアル等は依頼者(あるいはCRO)が回収するまで 保管すること。

(4)調剤の方法および注意事項

治験薬の調剤方法・服薬時の注意事項を記載すること。

(5)処方方法

・プロトコルに基づいた処方の方法を記載すること。

・処方・払い出し方法については、治験薬交付前に予め責任医師、

・治験薬管理者と決めておく。

(6)管理の方法

・治験薬管理表は依頼者(またはCRO)で作成したものを治験薬管理者に提供する。
ただし、医療機関に特有の様式がある場合は、モニターはその記載事項を確認し、不備がないことを確認の上、どちらの様式を用いるか協議する。

・治験薬管理表への記載および確認の方法



●〈治験薬管理表の記載例〉

・治験薬コード名、プロトコル番号、治験課題名

・治験薬の用法・用量、治験薬ロット番号、使用期限(必要な場合)

・治験薬管理者の職名、氏名および捺印欄

・責任医師名名および分担医師名と院内の電話番号

・被験者識別コード、薬剤番号(組番)および同意取得確認欄 (必要な場合は性、年齢および責任医師名または分担医師名の記載欄を設ける)

・処方記録欄(被験者ごとあるいは薬剤番号ごとの処方日及び処方数量:用量ごと、ロットごと)および調剤した担当者押印欄


(7)出納管理の方法

・治験薬出納表は依頼者(またはCRO)で作成したものを治験薬管理者に提供する。
ただし、医療機関に特有の様式がある場合は、モニターはその記載事項を確認し、不備がないことを確認の上、どちらの様式を用いるか協議する(両方使用することもある)。

・治験薬の出納管理の方法については、治験薬の取扱い手順書作成の際に治験薬管理者と協議して出納管理の方法およびその時期を決定する。


〈治験薬出納表の記載例〉

・治験薬コード名、プロトコル番号、治験課題名

・治験薬の用法・用量、治験薬ロット番号

・治験薬管理者の職名、氏名および捺印欄

・責任医師名名および分担医師名と院内の電話番号

・総受入数量、総処方数量

・被験者からの未服用治験薬返却数量

・依頼者(またはCRO)への総返却数量



(8)被験者の未服用治験薬の返却方法

(9)使用期限切れの治験薬および欠陥品の回収方法

(10)被験者から返却された未服用治験薬の管理方法

(11)医療機関における廃棄の方法

(12)依頼者への未使用治験薬および未服用治験薬の返却方法

(13)エマージェンシーキーの開封が必要な場合の処置

(14)記録の保存



******治験に関するQ&A「治験に関する疑問点と答え******

Q:治験薬の取扱い手順書に記載されている「その他の処分」とは、どのような処分ですか?

A:治験薬の紛失、破損や飲み忘れ等の際の処分です。

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■1−2.治験責任医師・施設の選定 
 (1)治験責任医師・実施医療機関の候補選定

(2)治験責任医師・実施医療機関候補の要件確認

(3)治験責任医師・実施医療機関の選定

(4)治験責任医師から履歴書の入手



@治験の打診・要件の調査

モニターは、依頼者またはPLが作成した治験依頼候補先リストに従い、医療機関の治験事務局、関連部署(医事課、管理課、検査科など)および責任医師候補を訪問し、チェックリスト等を用いてインタビュー、施設SOP等からGCPに適合した治験実施の可能性を調査する。


A「選定記録」の作成

モニターは、調査結果を選定記録(様式はプロジェクトごとに異なることもあ)に記入後、適格性判定欄に判定を記入する。


B責任医師への履歴書作成依頼(分担医師は必要に応じて)

モニターは責任医師へ最新の(依頼者によっては作成時期を決めている場合もある)治験責任医師および治験分担医師の履歴書等の文書〔8.1〕
の作成を依頼し、治験依頼申請までに入手する。


・過去に実施したことのある施設であれば社内に、SOP、様式集がある可能性もあるので、それを確認し、初めての施設では、依頼者や施設のHPインターネット等より可能な限り情報を入手し、あらかじめ予め予め施設調査をしておく。
入手済みのSOPは改訂されている可能性があるので、訪問した時には、治験事務局の情報やSOP等の変更がないかを確認する。

・その他の治験の実施状況を、治験事務局にて確認しておく。

・もし情報がなければ、直接医療機関に連絡し事務局と責任医師のアポイントを取り、情報を得る。

・責任医師に要件を確認する際は、チェックリストを出さず、手帳などに記入する。
(あからさまにチェックリストを出すことは失礼に当たることがある)

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■医療機関の要件

十分な臨床観察及び試験検査を行うことができ、かつ、緊急時に必要な措置(小規模医療機関等、緊急時に対応ができない施設の場合、緊急時の対応(提携病院・搬送病院の確保)が維持されているかが確認項目として必要となる。)をとることができるなど、当該治験を適切に実施しうるものでなければならない。

@当該治験を安全に、かつ、科学的に実施するための設備が備わっていること。

A責任医師、分担医師、CRC等、当該治験に必要な職員が十分そろっていること。

B治験薬管理者が治験薬の性質およびプロトコルを理解し、当該治験薬の適切な保管、管理および調剤等を実施し得ること。

C記録等の保存を適切に行い得ること。
(省令第35条解説)(省令第35条解説)




■治験責任医師の要件

@治験を適切に行うことが出来る十分な教育および訓練を受け、かつ十分な臨床経験を有すること。

A治験実施計画書、治験薬概要書及び治験薬の適切な使用方法に十分精通していること。

B当該治験を実施に際しする場合、GCP及び治験実施計画書プロトコールを遵守できるする意思があること。

C依頼者によるモニタリング及び監査並びにIRB及び国内外の規制当局による調査(原資料等の直接閲覧を含む)を受け入れる意思があること。

D治験を行うのに必要な時間的余裕を有すること。

E目標症例数(適格な被験者)を合意した治験期間に実施できること。

F分担医師及び協力者等の適格なスタッフを確保できること。


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 ・選定内容・方法は基本的に、手順書(SOP)に従うがその中でも施設選定の重要なポイントの一つは、IRB組織がGCPに則っているかを確認することである。

・責任医師選定の重要なポイントの一つは、予定期間内に目標症例数の確保が可能であるかを調査することである。

・当該治験に特有で特別な要件を必要とする場合には、選定記録にその内容を追加する(例えば、特殊な検査、特殊な機器を必要とする場合等には、その検査の実施の可否、機器の有無)。

・治験事務局では、IRB/ヒアリングの日程や、申請締め切り日、提出資料等の申請手続きについても確認する。

・プロトコルの要約、治験薬の特徴等を説明できるようにしておく。

・可能であればこの段階で同意説明文書案を提示し、治験責任医師に同意説明文書の作成を依頼する。

・プロトコルに規定する検査がを実施できるかどうか、また、その基準値があるかを確認する。
なお、実施する検査の基準値およびその範囲に関する文書(最新版であることに留意する。治験中に変更される場合もあり得る。)を治験薬交付時までに入手しておくこと。

・検査機器の精度管理をどのように実施しているかも確認しておく。




●プロトコルの概要については、プロトコルからの抜粋により下記のような項目を必要に応じて組み込む。

治験の目的、対象疾患、選択基準、除外基準、治験のデザイン(治験の種類・治験のスケジュール・主要評価項目・治験実施期間・目標症例数等)、その他、プロトコル特有の事項



●外部に設置された治験審査委員会に調査審議を依頼する場合、実施医療機関の長と当該治験審査委員会の設置者との契約が必要である

■1−3.治験調整医師、治験調整委員会の設置
 必要に応じて「治験調整医師」を指名したり「治験調整委員会」を設置する。

治験調整医師の業務は下記のとおり。

第18 条 治験依頼者は、一の治験実施計画書に基づき複数の実施医療機関に対して治験の依頼をした場合には、当該実施医療機関における当該治験実施計画書の解釈その他の治験の細目について調整する業務を医師若しくは歯科医師(以下「治験調整医師」という。)又は複数の医師若しくは歯科医師で構成される委員会(以下「治験調整委員会」という。)に委嘱することができる。

2 前項の規定により治験調整医師又は治験調整委員会に委嘱する場合には、その業務の範囲、手順その他必要な事項を記載した文書を作成しなければならない。


●治験調整医師に委嘱される業務とは、例えば、治験実施計画書の内容の細目についての多施設間の調整や治験中に生じた治験実施計画書の解釈上の疑義の調整等、多施設共同治験における実施医療機関の調整に係る業務である。

3 治験調整医師は、当該治験の分野において十分な経験を有し、多施設間の調整を適切に行いうる者であること。

治験責任医師の中から選定されることが考えられるが、必ずしも治験責任医師に限らない

******治験に関するQ&A「治験に関する疑問点と答え」******

Q1:医療機関は治験の申し込み前の依頼者による調査を受け入れる必要があるのでしょうか?

A1:依頼者には、適切な実施医療機関を選定する責務が課せられており、治験を実施しようとする医療機関はそのための事前の調査を受け入れる必要があります。

ただし、実際には口頭で確認のみのケースもあり得るのでPL、依頼者と相談することが必要です。

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******治験に関するQ&A「治験に関する疑問点と答え」******

Q2:履歴書に記載されるべき事項とは何ですか?

A2:責任医師の履歴書は、当該治験医師の適性判断の重要な資料となるので、通常の略歴の他、専門分野、所属学会、主要な著書・論文、過去の治験実績等の記載が望まれます。

過去の治験実績については、目標例数を達成したかどうかについても調査しておく必要があります。

なお、統一書式の書式1に履歴書が定められています

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******治験に関するQ&A「治験に関する疑問点と答え」******

Q3:履歴書以外に責任医師の要件を確認する文書にはどのようなも のがありますか?

A3:履歴書以外の適切な文書としては、学会が発行する資格証明書または認定書、原著論文または臨床の業績を記述した論文リスト等が考えられます。

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******治験に関するQ&A「治験に関する疑問点と答え」******

Q4:責任医師および分担医師となれる職務範囲はどのようなものでしょうか?(例えば、助手以上、講師以上等)

A4:施設によって異なりますが、一般的に専門分野に精通している必要があります。

施設によっては規定がある場合もあります。

例えば、責任医師:教授、助手以上

分担医師:文部教官

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******治験に関するQ&A「治験に関する疑問点と答え」******

Q5:施設SOPのみでGCP適合性が確認できない場合どのような対応をとるのでしょうか?

施設SOPを改訂して頂く必要はあるのでしょうか?

A5:改訂して頂くこともありますが、改訂に関する決定は施設側に権限があります。

改訂してもらわなくても、GCP適合性が別の方法(施設側への質疑応答や施設訪問)で確認できれば記録に残すことで対応できる場合もあります。


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