【治験を実施する上での注意点。治験を行うときの注意点。治験実施のポイント。】

治験の流れ(3)
3.治験審査委員会の審議および契約





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【主な作業の流れ】
■1.医療機関の長へ治験の依頼に必要な文書を提出(統一書式)および治験責任医師から医療機関の長への文書提出確認
(一般的には、依頼者が代理で事務局へ提出)

■2.医療機関の長から治験審査委員会へ審査対象文書の提出

■3.治験審査委員会の開催
・活動及び会議の記録およびその概要のおよびその概要の作成

■4.医療機関の長の指示・決定の通知書、治験審査委員会の通知文書(写)を入手・確認
・治験責任医師が医療機関の長の指示・決定を了承していることを確認

■5.治験審査委員会の名称・所在地・(構成・活動)に関する文書を入手
・ IRBメンバーの成立要件を確認

■6.治験契約の締結
・治験責任医師の契約書またはその写しへの署名(記名捺印)をの確認
■■■3−1.医療機関の長へ治験の依頼に必要な文書を提出および治験責任医師から医療機関の長への文書提出の確認

●【事前準備】

・施設選定段階で、治験事務局より施設SOP(写)、IRBに関する院内規定(写)および治験関係書類一式(統一書式が使用されるケースが増えているブランク)を、入手して内容を確認する。
(閲覧のみ許可している施設もある。)
さらに、施設SOPとは別に、手続きに関する具体的なマニュアルを作成している施設もあるので、存在すれば入手する。

・治験事務局にIRBの開催日(次回、次々回も)、申請手続き締め切り日ならびにその他手順(ヒアリング、事前審査等)を可能な限り確認して、申請の予定を立てる。


●医療機関の長へ依頼に必要な文書を提出すると共に、責任医師が医療機関の長へ必要な文書を提出したことを確認する。
責任医師が提出する書類も、依頼者(モニター)が一緒にまとめて治験治験事務局に提出することが多い。(ほとんどがそうだ。)



●●●〈申請に必要な書類〉 ●●●

・治験依頼書(依頼者→医療機関の医療機関の病院長)

・治験申請書(責任医師→病院長医療機関の医療機関の長)


〈IRBへの審議依頼に必要な書類〉

・治験審査依頼書(医療機関の医療機関の病院長→IRB委員長)(*治験事務局が作成する)


〈IRB審査対象となる書類(依頼者・責任医師→医療機関の長→IRB)〉

・プロトコル (通常、合意文書〔9.1〕(写)を添付)

・治験薬概要書

・CRF症例報告書の見本(プロトコルにデータ項目が明記されている場合は不要)

・同意・説明文書

・責任医師の履歴書、責任医師の履歴書およびその他の文書、分担医師の氏名リスト分担医師の氏名リスト(求められた場合は履歴書)(求められた場合は履歴書)治験薬概要書

・治験費用に関する資料治験費用に関する資料(被験者への支払(支払いがある場合)(被験者への支払い(支払いがある場合)に関する資料)に関する資料を含む被験者への支払いに関する資料(支払いのある場合)

・被験者の健康被害に対する補償に関する資料
(依頼者が保険に加入し加入し入っていることを証する付保証明書証明する付保険証明証書写し、依頼者の補償に関するSOP写し等。必要ならばCROとしてCRO賠償責任保険(団体加入)の付保証明書付保証明書保険証書写し)

・責任医師・分担医師の履歴書(治験分担医師は必要に応じて)

・予定される治験費用に関する資料(基本的には、これは「負担軽減費」等、創薬ボランティアに支払う費用を指している。)


●●● 注意点 ●●●

・申請に必要な書類および審査に必要な書類は、上記以外にも施設ごとに定められているので、施設SOPで確認する必要がある。
例えば、治験分担医師および治験協力者のリスト(責任医師によるリストアップ段階のものも含む)などがある。

・予定される治験費用に関する資料(研究費等)の作成時には、予め治験事務局(医事課等)で費用算定方法(研究費内訳並びにポイント算出手順等)について伺い、責任医師の確認を得る。



●多くの医療機関で「医療機関の長に提出すべき文書は治験事務局に提出する」ことがSOPに規定されているため、審査に必要な資料を治験事務局に提出することにより省令第10条、32条の両方の事項をまかなっていることになる。(提出部数や提出時期はSOPに従う)


●ポイント算出表(研究費算出の基礎資料)

プロトコルに基づき、個々の治験について要素ごとに該当するポイントを求める。
そのポイントを合計したものをその治験のポイント数とする。
ポイント係数はプロジェクト内で統一的な算出表(サンプル)があるので、モニターはそのサンプルを用いて施設と協議することになる。


●研究費算出表

研究費の内訳は(1)臨床試験研究経費、(2)管理的経費である。

(1) 臨床試験研究経費
治験に関連して必要となる研究経費のこと。

(国立大学病院の場合)
算出基準 : ポイント数×ポイントあたりの費用×症例数
製造販売後臨床試験の場合
算出基準 : ポイント数×ポイントあたりの費用×症例数×0.8

(2) 管理的経費

治験に必要な事務的、管理的経費のことをいい、備品費(機械器具)、賃金、管理費(光熱水料、消耗品費、印刷費、通信費等)がある。
また、国立病院機構では旅費規定により旅費も請求される事もあるので注意が必要である。



●被験者への支払いに関する資料

交通費の負担増等の治験に伴う被験者(外来)の負担を軽減するための経費についての資料。

(国立大学附属病院の場合)
算出基準:1来院あたりの支給額(国公立は一般的に7000円 。
*私立病院では10000円を前に超えるところもあり)×1症例当の来院回数×症例数

被験者への支払い方法に関しても、必要に応じ本資料に記載する。

なお、被験者負担軽減費の取扱手順(病院により異なる)、受領の意思の有無を本人に確認することが必要なことも把握しておくこと。


 
■■■3−2.治験審査委員会の開催

■■■3−3.医療機関の長の指示・決定の通知書、治験審査委員会の通知文書(写)を入手・確認
    治験責任医師が医療機関の長の指示・決定を了承していることを確認

■■■3−4.治験審査委員会の名称・所在地・(構成・活動)に関する文書を入手
・実施医療機関の長は治験の実施の適否についてIRBの意見を聴かなければならない。

・実施医療機関の長は専門治験審査委員会の意見を聴くことが出来る。



・IRB施設によっては、IRBにて依頼者が治験の概要を説明をするよう求められる場合もある。

・審議後、電話等によりIRBの審査結果を確認し、医療機関の長から以下の必須文書治験に係る文書治験に係る文書を入手する。

@医療機関の長の指示・決定通知書長の指示・決定通知書

A治験審査結果報告書治験審査結果報告書(写)

BIRBがGCPに従って組織され、活動している旨を確認した文書

CIRBの名称と所在地が記された文書

・一般的には、上記 B、CはAの文書に含まれている。

・現在は上記@、Aの文書は一体化していることもある(統一書式 書式5)

・入手した文書にてGCPで定められているIRBの構成要件を含めIRBが成立するための要件が満たされているかを確認する。
→施設SOPでIRBが成立するための要件を定めるよう求められている。
 例)委員の3分の2の出席をもって成立、外部委員・非専門家の出席等


・成立するための要件が満たされていない場合は、記載内容の正確性を確認した上で再審議を依頼する。

・医療機関の長、治験関係者が審議に加わっていない

・条件付きで承認の場合は、条件の内容を検討し、同意・・説明文書等の修正が必要であればその妥当性を検討する。
また、必要に応じて依頼者と相談する。
その後の対応は施設側の指示に従う(再審議の申請、迅速審査の申請、回答書の作成等が想定される)。

(注意:「迅速審査」は事務的な軽微な変更に対する審査方法なので、重篤な有害事象などの審議には不適切。)



・IRBの委員会議の記録の概要は、IRB開催後2ヵ月以内を目途に公表(ホームページ掲載又は文書を閲覧に供する)される必要がある。

・会議の記録の概要のマスキングの要否などにつき依頼者と打合せの上、その結果に基づき必要に応じIRB事務局と事前に協議しておくこと。


・IRBの構成要件

@少なくとも5人の委員からなること

A少なくとも委員の1人は、医学・歯学・薬学等の自然科学以外の領域に属していること

B少なくとも委員(Aの委員は除く)の1人は、実施医療機関及び治験の実施に係わるその他の施設と利害関係を有していないこと(例えば、弁護士、高校教師、自治会長等)

C少なくとも委員(Aの委員は除く)の1人は、治験審査委員会の設置者と利害関係を有していないこと


・IRB委員の数は、少なくとも5名と規定しているが、委員の数がこれよりも多い場合には、A非専門家、B院外委員、CIRB設置者と関係ない委員の数を増やす等により、委員構成を適正な割合に保つことが必要である。



・IRBには次の種類がある。次の種類がある。

@医療機関の長が設置したIRB(多施設共同IRBを含む)

A一般社団法人、一般財団法人が設置したIRB

BNPO法人が設置したIRB

C学術団体が設置したIRB

D付属病院等を有する私立大学が設置したIRB

E医療の提供等を主な業務とする独立行政法人が設置したIRB

F附属病院等を有する国立大学が設置したIRB

G附属病院等を有する地方独立行政法人が設置したIRB


*外部IRB(多施設共同IRB(多施設共同IRBおよびA〜G)およびA〜G)で審査を行うためには、医療機関の長は外部IRBの設置者と契約を締結しなければならない。
実際の審査においては外部IRBの設置者に申請書類を提出し、外部IRBの設置者はその受領した申請書類をIRBに提出する。




********治験に関するQ&A「治験に関する疑問点と答え」********

Q1: 「治験について倫理的および科学的観点から十分に審議を行うことができる」IRBであるか否かを依頼者が判断するためには、具体的に何を確認すればいいのですか?

A1: 委員の構成がGCPの求める基準(構成要件@〜C)を満たしていること、業務手順書に従って運営されていること等をIRBの構成と活動に関する文書(委員名簿、議事録等)をもとに確認します。

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********治験に関するQ&A「治験に関する疑問点と答え」********

Q2: 第28条第28条第1項の「専門的知識を有する者以外の者」とは、具体的にどのような人でしょうか。またどのような役割が期待されていますか?

A2: 一般市民、福祉従事者、法律専門家で、医学・歯学・薬学等の自然科学以外の領域に属している人が該当します。これらの委員には、非専門家として被験者の人権保護等の倫理面について意見を述べることが期待されています。

【GCP関連 Q&A網羅集 平成14年4月版より抜粋】


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********治験に関するQ&A「治験に関する疑問点と答え」********

Q3: IRB委員の外部委員としてどのような人が適当なのでしょうか?

A3: 利害関係のない者が適当です。利害関係がないとはどのように考えるかというと、一つはその病院と雇用関係がないかどうかが一つの基準となります。もう一つは実際金銭面での関係がないかどうか、、。経済的な取引がないかどうかを想定します。具体的な例として、大学病院の場合、その大学の法学部の先生に入ってもらったり、倫理関係の先生に入ってもらう場合は、直接その病院との利害関係はないと考えられています。

【GCP関連 Q&A網羅集 平成14年4月版より抜粋】

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********治験に関するQ&A「治験に関する疑問点と答え」********

Q4: IRB事務局と治験事務局はそれぞれ独立した場所でなければならないのですか?

A4: 別の場所である必要はありませんが、それぞれの機能が保証されなければなりません。

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********治験に関するQ&A「治験に関する疑問点と答え」********

Q5: 治験審査委員に、治験責任医師または分担分担担当医師がなることはできますか?

A5: 治験審査委員になることはできますが、当該治験の審議と採決には参加できません。
審議の際、治験の説明を行うことが望ましいと考えられていますが、質問に答えることはできても、実際に治験実施の可否賛否を問うところからは外れます。

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■■■3−5.治験契約の締結
@事前に施設側のSOPから契約書の雛型を入手する。
雛型が存在しない場合は、依頼者側の雛形を使用する旨を確認する。


A省令GCP等で定められた記載事項の有無を点検する。
記載事項に不足がある場合は、施設と協議の上、覚書を取り交わす等により対応する。
契約書および覚書の内容は、定められた手順に従って社内点検を受け取ると共に依頼者・医療機関の了承を得る必要がある。


B医療機関の長がIRBの意見に基づいて治験の実施を了承した後に、二者(医療機関、依頼者)の間で文書により契約を締結する。
→依頼者の社印・代表者印が捺印された契約書(または覚書)を2通治験事務局へ提出する。

CROが介在する場合であっても三者契約の必要が無くなった。(平成23年10月24日のGCP運用通知改訂より)


C責任医師に契約内容を確認してもらう。(治験責任医師の署名は不要になった。平成23年10月24日のGCP運用通知改訂より)



●注意点

・契約書には次に掲げる事項が含まれていなければならない

1) 契約を締結した年月日

2) 治験の依頼をしようとする者の氏名及び住所

3) 前条の規定により業務の一部を委託する場合にあっては、受託者の氏名、住所及び当該委託した業務の範囲

4) 実施医療機関の名称及び所在地

5) 契約担当者の氏名及び職名

6) 治験責任医師等の氏名及び職名

7) 治験の期間

8) 目標とする被験者数

9) 治験薬の管理に関する事項

10) 記録(データを含む。)の保存に関する事項

11) この省令の規定により治験依頼者及び実施医療機関に従事する者が行う通知に関する事項

12) 被験者の秘密の保全に関する事項

13) 治験の費用に関する事項

14) 実施医療機関が治験実施計画書を遵守して治験を行う旨

15) 実施医療機関が治験依頼者の求めに応じて第41 条第2項各号に掲げる記録(文書を含む。)を閲覧に供する旨

16) 実施医療機関がこの省令、治験実施計画書又は当該契約に違反することにより適正な治験に支障を及ぼしたと認める場合(第46
条に規定する場合を除く。)には、治験依頼者が治験の契約を解除できる旨

17) 被験者の健康被害の補償に関する事項

18) その他治験が適正かつ円滑に行われることを確保するために必要な事項




●締結日について、以下の事項を確認する。

(1)治験計画届が初回の場合、届出提出後31日以上経過していること

(2)第2回目以降の届出が提出されている場合、届出提出後少なくとも15日以上経過していること


●契約書に必要な社内手続きは、数日かかる会社もあるので注意すること!(事前に確認しておこう)
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