●治験の体制作り |
●治験の進め方のポイント(1)
●治験体制の確立、治験実施計画書作成、治験薬概要書の作成、症例報告書の見本の作成、同意説明文書の雛型の作成。
まず、治験関連業務の確定、適格者への割当をします。
医学専門家を指名(必須)し、治験調整医師・治験調整委員会の設置(必要に応じて)、効果安全性評価委員会の設置(必要時)、統計解析責任者の指名(必要に応じて)、CROの選定(必要に応じて)等。
治験実施計画書を作成します。
記載すべき項目は次のとおり。(答申GCPより)
なお、答申GCPは下記のページに保存してあります。
↓
https://sites.google.com/site/zhiyanniguansurutongzhiji/toshingcp
10 治験実施計画書
10−1 治験実施体制
10−2 背景情報
10−3 治験の目的
10−4 治験のデザイン
10−5 被験者の選択、除外、中止基準
10−6 被験者に対する治療
10−7 有効性の評価
10−8 安全性の評価
10−9 統計解析
10−10 原資料等の直接閲覧
10−11 治験の品質管理及び品質保証
10−12 倫理
10−13 データの取扱い及び記録の保存
10−14 金銭の支払い及び保険
10−15 公表に関する取り決め
10−16 治験期間
10−17 参考資料
上記のうち、特に重要なのは「被験者の選択基準」と「被験者の除外基準」です。
ここを大きく間違えると、治験がニッチモサッチモいかなくなります。
これらの基準を厳しくすると被験者の登録が進みませんが、基準の設定を間違えると有効性も安全性もやばくなります。
さらに、「有効性の評価」と「安全性の評価」。
特に「有効性の評価」、いわゆるプライマリーエンドポイントの設定を間違えるとせっかくの治験薬のポテンシャルを引き出すことができません。
また、臨床の現場を無視した「安全性の評価方法」(臨床検査の頻度や項目等)にすると、これまた、治験が進みません。
必要かつ十分な安全性の評価方法にしましょう。
さて、治験実施計画書を作成したら、今度は症例報告書の見本の作成です。
どのようなデータを集めるか?
どのようなデータを集めないのか?
医師からのコメントを求めるのか?求めないのか?
必要以上にデータを集める症例報告書にすると、モニターのSDVが大変ですし、データミスも多くなります。
また、症例報告書の見本を決定したら、今度は、カルテシール、ワークシート等を使うか、使うなら、どのようなワークシートにするかを決めます。
必要以上にワークシートに頼るようになると、ダブルでデータが発生し、混乱します。
できるだけ、ミニマムのカルテシール、ワークシートにします。
そもそもカルテシール、ワークシートとは何か?
日常診療では集めないデータだけど、今回の治験に限って集めるデータを記載するための用紙ですね。
カルテのどこかに記載されそうなデータはそこで確認しましょう。
それをまたカルテシール、、ワークシートに転記するようにすると転記ミスやSDVの二度手間です。(ALCOAの原則にも反します。)
治験薬概要書に記載すべき項目は次のとおりです(答申GCPより)
なお、答申GCPは下記のページに保存してあります。
↓
https://sites.google.com/site/zhiyanniguansurutongzhiji/toshingcp
11 治験薬概要書
11−3 治験薬概要書の内容
11−3−1 目次
11−3−2 要約
11−3−3 序文
11−3−4 物理的・化学的及び薬剤学的性質並びに製剤組成
11−3−5 薬理、毒性、薬物動態及び薬物代謝
11−3−6 臨床試験成績
11−3−7 データの要約及び治験責任医師に対するガイダンス
「臨床試験成績」に記載されていない副作用が「予測できない副作用」(未知の副作用)に該当します。
「データの要約及び治験責任医師に対するガイダンス」の項目には「治験薬を過剰投与した場合の処置方法」の記載も必要です。
次に必要に応じて「モニタリングに関する標準業務手順書」を作成します。
治験に特有のモニタリングとして、作成上特に注意すべき点は以下の点です。
・モニタリングの内容・タイミング(登録時の確認、SDV、中止・脱落時の臨床検査について)
・治験薬の交付・回収
・逸脱の取扱い(症例および症例データの取り扱い基準書参照)
・CRFに関する留意事項
・安全性情報の取扱い
既にあるモニタリングのSOPで問題無いなら、それで大丈夫です。
SDVマニュアルも作っておくといいですね。
さらに「治験薬の取扱い手順書」を作成します。
このあたりで、治験薬の製造、品質試験の実施、包装、表示します。
治験薬には次の項目は記載禁止です。
●「予定される販売名」
●「予定される効能・効果」
●「予定される用法・用量」
もちろん、「治験薬の使用方法」は記載可能です。(その昔、総合機構の新人担当官に、「これは予定される用法・用量に該当しますのでGCP違反です」と断定されて、焦ったことがあります。^^;)
さて、以上の作業が終わったら治験責任医師の調査・選定です。
●治験責任医師・実施医療機関の候補選定
●治験責任医師・実施医療機関候補の要件確認
●治験責任医師・実施医療機関の選定
●治験責任医師から履歴書の入手
ちなみに、治験責任医師候補者に治験の概要を説明しますが、以下の項目を記載した資料を作っておくといいでしょう。
●治験の目的
●対象疾患
●選択基準
●除外基準
●治験のデザイン(治験の種類・治験のスケジュール・主要評価項目・治験実施期間・目標症例数等)
●その他、プロトコル特有の事項 |
●治験薬に関する準備事項 |
●治験の進め方のポイント(2)
「治験薬の管理に関する手順書」を作成しましょう。
治験薬の管理に関する手順書には、治験薬管理者が治験薬の受領、取扱いおよび保管、管理ならびにそれらの記録に際して従うべき指示等を記載します。
治験薬管理者が理解しやすいように記載しましょう。
モニターは遅くとも治験薬交付時までに「治験薬の管理に関する手順書」を医療機関に提供する必要があります。
提供先は治験事務局に確認しましょう。(まぁ、たいていが薬剤部の薬剤師(治験薬管理者)になりますが。)
「治験薬の管理に関する手順書」には、以下の項目を記載します。
治験薬の@受領 A取扱い B保管 C管理 D処方 E未使用治験薬の被験者からの返却および依頼者への 返却またはその他の処分が適切で確実に行われるための手順とそれらの記録に際して従うべき指示が記載されていること
その他に必要に応じて「治験薬の溶解方法その他の取扱方法を説明した文書」も作成します。
この文書は治験薬管理者のほかに治験責任医師、治験分担医師、CRCにも提供しましょう。(患者に説明する必要があるかもしれませんからね。)
施設での治験薬管理方法も確認しておきましょう。
●治験薬管理者が治験薬の保存条件を適切に守り、鍵のかかる保管場所に保管すること。
●他の市販の医薬品と区別して保管し、プロトコルごとに管理すること。
●治験薬の保管の形態を明記すること (例えば、用量ごと、ロットごと)。
●治験薬の保存条件を明記すること。(例えば、室温保存、冷所保存、凍結保存、遮光保存、等)
●未使用治験薬、被験者から返却された治験薬、治験薬の箱(外箱、内箱、空箱等)、空バイアル等は依頼者(またはCRO)が回収するまで保管すること。
施設の「治験薬の管理票」(治験薬の出納帳ですね。)も確認しましょう。
〈治験薬管理表の記載例・・・あくまでも事例です。〉
●治験薬コード名、プロトコル番号、治験課題名
●治験薬の用法・用量、治験薬ロット番号、使用期限(必要な場合)
●治験薬管理者の職名、氏名および捺印欄
●責任医師名および分担医師名と院内の電話番号
●被験者識別コード、薬剤番号(組番)および同意取得確認欄 (必要な場合は、性別、年齢および責任医師名または分担医師名の記載欄を設ける)
●処方記録欄(被験者ごとあるいは薬剤番号ごとの処方日及び処方数量:用量ごと、ロットごと)および調剤した担当者押印欄
その他に、治験薬管理手順書には次のような項目も記載します。
●被験者の未服用治験薬の返却方法
●使用期限切れの治験薬および欠陥品の回収方法
●被験者から返却された未服用治験薬の管理方法
●医療機関における廃棄の方法
●依頼者への未使用治験薬および未服用治験薬の返却方法
●エマージェンシーキーの開封が必要な場合の処置
●記録の保存
処方・払い出し方法については、治験薬交付前に予め責任医師、治験薬管理者と決めておきましょう。
ちなみに、ダブルブラインドの治験等では、キーオープン後に治験薬を回収するよう規定している会社もあるかと思いますが、治験薬の数の確認だけは、キーオープン前に確認しておいたほうがいいですよね。
キーオープンして、統計解析が終わったあとに治験薬を回収したら、残薬がゼロのはずが半分以上残っていた、なんてことになると、その患者のデータの取り扱いが変わってきますから。
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●治験責任医師の要件、医療機関の長さ・選定の注意点 |
●治験の進め方のポイント(3)
治験責任医師・実施医療機関候補の要件確認
モニターは、治験依頼者が作成した治験依頼候補先リストに従い、医療機関の治験事務局、関連部署(医事課、管理課、検査科など)および責任医師候補を訪問し、チェックリスト等を用いてインタビュー、施設SOP等からGCPに適合した治験実施の可能性を調査します。
モニターは選定記録を残すよう求める治験依頼者もいますので、その指示に従います。
モニターは治験責任医師へ最新の(依頼者によっては作成時期を決めている場合もある)治験責任医師および治験分担医師の履歴書(必要に応じて)等の文書の作成を依頼し、治験依頼申請までに入手しましょう。
国際共同治験の場合、「英文」での履歴書が必要な場合もあります。
履歴書に記載されるべき事項とは次のことが考えられます。
当該治験責任医師等の学歴とともに、過去に治験責任医師等その他医学的な専門家として治験に参加した経歴等や学会の認定医等の情報も含んだもの、など等。
履歴書以外の適切な文書としては、学会が発行する資格証明書または認定書、原著論文または臨床の業績を記述した論文リスト等が考えられます。
ちなみに、最近は施設のSOPがインターネット上にオープンされている場合もありますので、必ず施設のホームページを確認しましょう。
●医療機関の要件
十分な臨床観察及び試験検査を行うことができ、かつ、緊急時に必要な措置(小規模医療機関等、緊急時に対応ができない施設の場合、緊急時の対応(提携病院・搬送病院の確保)が維持されているかが確認項目として必要となる。)をとることができるなど、当該治験を適切に実施しうるものでなければならない。
@当該治験を安全に、かつ、科学的に実施するための設備が備わっていること。
A責任医師、分担医師、CRC等、当該治験に必要な職員が十分そろっていること。
B治験薬管理者が治験薬の性質およびプロトコルを理解し、当該治験薬の適切な保管、管理および調剤等を実施し得ること。
C記録等の保存を適切に行い得ること。
クリニックレベルで治験を行う場合は、緊急時の搬送先も確認しておきましょう。
当該治験に特有で特別な要件を必要とする場合には、選定記録にその内容を追加してきます。(例えば、特殊な検査、特殊な機器を必要とする場合等)。
プロトコルに規定する検査を実施できるかどうか、また、その基準値があるかを確認します。
なお、実施する検査の基準値およびその範囲に関する文書(最新版であることに留意する。治験中に変更される場合もあり得る。)を治験薬交付時までに入手しておくこと。
●治験責任医師の要件
@治験を適切に行うことが出来る十分な教育および訓練を受け、かつ十分な臨床経験を有すること。
A治験実施計画書、治験薬概要書及び治験薬の適切な使用方法に十分精通していること。
B当該治験を実施に際し、GCP及び治験実施計画書を遵守できること。
C依頼者によるモニタリング及び監査並びにIRB及び規制当局による調査(原資料等の直接閲覧を含む)を受け入れる意思があること。
D治験を行うのに必要な時間的余裕を有すること。
E目標症例数(適格な被験者)を合意した治験期間に実施できること。
F分担医師及び協力者等の適格なスタッフを確保できること。
責任医師選定の重要なポイントの一つは、予定期間内に目標症例数の確保が可能であるかを調査すること。
治験実施計画書のクライテリアに合致する患者が月に何人ぐらい来院するのか、今、何人ぐらいが新患で来院するのか、あたりを確認しましょう。
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●IRBに確認すること |
今週からしばらくは「治験の進め方のポイント」です。
もうすぐ新人のモニターが誕生しますからね。
今週からは新米モニター向けGCPセミナーです。
●治験の進め方のポイント(4)
治験事務局では、IRBや事前ヒアリングの日程や、申請締め切り日、提出資料等の申請手続きについても確認しておきましょう。
さらに、検査機器の精度管理方法も確認しておきます。
●治験依頼者は、治験に係る検体等の検査機関(実施医療機関の検査室等を含む。)において、検査が適切に実施されて治験に係るデータが信頼できることを保証するため、当該検査機関における精度管理等を保証する記録等を確認すること。
●なお、確認すべき検査の範囲や具体的な確認方法は、各検査データの当該治験における位置づけ(主要評価項目であるかどうか等)を考慮し、治験依頼者と実施医療機関との間で取り決めること。
(GCP第4条ガイダンス)
ほかにも次の文書・記録を確認します。
●治験審査委員会の設置記録
●治験審査委員会の委員名簿
●治験審査委員会の運営に関する文書
●治験審査委員会の設置者が保存する記録
●医療機関の治験の手続きに関する手順書
●実施医療機関外治験審査委員会の委員名簿及び標準業務手順書
●治験事務局の業務内容に関する文書
●外部に設置された治験審査委員会に調査審議を依頼する場合、医療機関の長と当該治験審査委員会の設置者との契約が必要
●治験薬管理者の指名記録
●医療機関における記録保存責任者の指名記録
時々、「医療機関は治験の申し込み前の依頼者による調査を受け入れる必要があるのでしょうか?」という質問があります。
そんな場合は丁重な言葉で「依頼者には、適切な実施医療機関を選定する責務がGCPで課せられており、治験を実施しようとする医療機関はそのための事前の調査を受け入れる必要があります。」と伝えます。
次に治験責任医師との治験に関する合意となります。
治験実施計画書(案)、症例報告書(案)、治験薬概要書等を治験責任医師へ提供し、協議・検討します。
問題が無ければ、治験実施計画書および症例報告書の内容に合意し、治験実施計画書を遵守した治験の実施につき合意(治験責任医師から合意文書を入手)します。
ついで、治験責任医師へ同意・説明文書の作成依頼します。(同意・説明文書案を提示)
出来上がったら、同意及びその他の説明文書を入手します。
さらに、治験分担医師となるべき者の氏名リスト(必要に応じ治験分担医師の履歴書)および治験分担医師・治験協力者のリストを入手します。
モニターは治験実施計画書案等の提供記録を作成します。(モニタリング報告書に記載でもよい。)
モニターは当然ですが、治験実施計画書と疾患の勉強を事前によ〜〜〜〜〜K勉強しておきましょうね。
社内プロジェクト内での勉強会で内容を十分に理解するとともに、疑問点は自分で調査・勉強して完全に消化すること。
プロトコルで重要となる治験デザイン、選択基準、除外基準、治験スケジュール、目標症例数およびエントリー期間は、自主学習により頭に入れておきます。
治験実施の可否の検討に際して、予め責任医師が検討に要する時間、および協議に必要な時間を考慮しておきましょう。
では、治験実施計画書を治験責任医師に説明する際には、どんなことを説明すればいいでしょうか?
治験薬の特徴(市販薬より優れている点)や当該治験の意義を説明します。
また、医師は治験薬の作用機序や副作用の内容、頻度に特に興味を持っているようです。
なお、逸脱の防止のために選択基準、除外基準、併用禁止薬・療法を重点的に説明することも必要です。
その他の説明のポイントは、治験のフェーズや治験薬の種類によって異なります。
例えば、第II相試験であれば、第I相試験の成績等の説明も必要となり、また、新規治験薬の場合、治験薬の概要を詳しく説明する必要があります。
逆にすでに市販されている薬物の適応拡大を目的とした治験や製造販売後臨床試験は、責任医師がすでに知っている情報も多く、詳細な説明は必要ないこともあります。
海外で既に販売されている場合には、海外での用量・用法、市場状況等を確認しておきます。
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