【治験の進め方のコツ・ポイント】

モニタリングのコツ・治験の効率的な進め方。治験の進め方のポイント(2)
治験を進めることで注意すること。治験の進め方のコツ・モニタリングの注意点




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●治験責任医師から治験実施計画書の合意を得る
●治験の進め方のポイント(5)


プロトコルおよびCRFの内容を治験責任医師に十分に説明した後、これらの内容に合意頂けるか確認します。

プロトコルを遵守した治験の実施について責任医師と合意が得られるかを確認しましょう(特に遵守することが困難であると予測される項目については十分に行う)。

合意が得られた場合は、プロトコルまたはそれに代わる文書2部に責任医師と依頼者がそれぞれ記名・捺印または署名し、各自日付けを記入します(1部は責任医師保管用、1部は依頼者保管用とする)。

場合によっては合意が得られない場合もあります。

そんな時は、何故、合意が得られないのか、どこが合意できないのかを確認します。

治験実施計画書を改訂することにより合意が得られるか確認してみましょう。


治験実施計画書の改訂により対応可能である場合、治験依頼者と協議した上で改訂を行うことになります。

改訂しても合意が得られない場合、または改訂できない内容である場合、責任医師に十分説明の上、治験の依頼を中止せざるを得ません(残念ながら)。


治験責任医師の合意が得られない場合の対応で注意すべき点はどこでしょう?

治験責任医師に合意が得られない理由を聞き、その場では当該施設での実施の可否の即答を避けることが大切です。

例えば、「ある特定の検査が出来ない」といわれた場合は、出来ない理由や医師がどうしたいのかということを聞き、少しでも治験実施の可能性を探ります。

そして、このことを正しく依頼者に伝え相談します。

理由が治験薬の評価や臨床検査に関する項目であればプロトコルの変更は難しいです。

しかし、薬効評価に影響のない箇所等、プロトコルの根幹に関わらない範囲であれば施設ごとのプロトコルを作成することも可能です。





治験実施計画書の合意にあたり、「プロトコルに代わる文書とはどういったものでしょうか?」という質問を受けることがあります。

これは、合意して頂いたことを証明する文書です。

多くの場合はSOPに様式があります。

施設によっては、施設SOPの様式でのプロトコルに代わる文書(合意書)が必要になり、その場合、施設様式、依頼者様式の2部を用意することとなります。

なお、依頼者によっては、プロトコルそのものに記名・捺印または署名を頂く場合があります。



さて、治験実施計画書の合意が得られたら、治験責任医師に、被験者から治験への参加の同意を得るために用いる同意文書及びその他の説明文書の作成を依頼します。

ただ、この依頼は、責任医師が作成に要する時間を考慮して、責任医師選定時に行うことが多いでしょう(治験実施計画書の合意を前提として。)


同意・説明文書に記載すべき項目は以下のとおりです。
   ↓
https://sites.google.com/site/gcpgaidansu/79-di51ic



治験責任医師等は、前条第1項の説明を行うときは、次に掲げる事項を記載した説明文書を交付しなければならない。

1) 当該治験が試験を目的とするものである旨

2) 治験の目的

3) 治験責任医師の氏名、職名及び連絡先

4) 治験の方法

5) 予測される治験薬による被験者の心身の健康に対する利益(当該利益が見込まれない場合はその旨)及び予測される被験者に対する不利益

6) 他の治療方法に関する事項

7) 治験に参加する期間

8) 治験の参加を何時でも取りやめることができる旨

9) 治験に参加しないこと、又は参加を取りやめることにより被験者が不利益な取扱いを受けない旨

10) 被験者の秘密が保全されることを条件に、モニター、監査担当者及び治験審査委員会等が原資料を閲覧できる旨

11) 被験者に係る秘密が保全される旨

12) 健康被害が発生した場合における実施医療機関の連絡先

13) 健康被害が発生した場合に必要な治療が行われる旨

14) 健康被害の補償に関する事項

15) 当該治験の適否等について調査審議を行う治験審査委員会の種類、各治験審査委員会において調査審議を行う事項その他当該治験に係る治験審査委員会に関する事項

16) 当該治験に係る必要な事項


上記はGCP省令で規定されているものですが、より詳しい項目はGCPガイダンスをご参照ください。
   ↓
https://sites.google.com/site/gcpgaidansu/79-di51ic





上記の内容に「IRBの種類、審議事項、その他当該治験に係るIRBに関する事項」が加えられる必要がある。(省令第51条第1項第15号および省令第51条第1項解説3参照)

IRBの手順書等を確認することができ、併せてこれらを施設のホームページに公表している場合は当該ホームページのアドレスを、公表していない場合は事務所で一般閲覧に供している旨を記載する必要がある。

また、IRBの手順書を確認したい場合は申し出て欲しい旨を記載すること。(省令第51条第1項解説4参照)



これらの記載内容は、各医療機関共通部分が多いため、ほとんどの場合、依頼者が同意・説明文書(案)を用意しています。


この案(施設で同意・説明文書に関する規定が定められている場合は、その様式に合わせたもの)を責任医師に提供し、同意・説明文書の作成に協力することが多いですね。




また、被験者負担軽減費の金額および保険外併用療養費の期間等(制度としては治験薬投与期間中であるが、医療機関により観察期から求められることがある)については、責任医師、治験事務局および医事課等と協議して決定します。

事前に治験依頼者のの方針を確認しておきましょう。

なお、説明文書は治験事務局でIRB開催前にチェックが入り、修正指示が出されることもあります。

施設の規定で同意文書と説明文書が別に規定されている場合、一体化した文書または一式の文書にすることが望ましい(省令第51条第1項解説6)旨を治験事務局に伝えて、形式について協議します。


●治験協力者について
●治験の進め方のポイント(6)


さて、 責任医師が、分担医師または協力者に治験業務の一部を分担させる場合、責任医師から選ばれた分担医師・協力者に情報が的確に伝わっているか確認します。

さらに以下の事項について確認しましょう。


・責任医師が分担させる業務と分担させる者のリスト(協力者リスト)を作成し、予め医療機関の長に提出したこと。(一般的には依頼者を経由して事務局に提出)

・医療機関の長が責任医師から受け取ったリストをもとに、分担医師および協力者を了承し、医療機関の長が指名した治験分担医師及び治験協力者のリストを責任医師に提出すること。

・医療機関の長又は治験責任医師が協力者リストを治験依頼者に提出すること。




上記で確認すべき書類は以下の2つです。

・医療機関の長が了承した治験分担医師及び治験協力者のリスト

・治験責任医師及び治験分担医師の履歴書等の文書(治験分担医師の履歴書は必要に応じて。ちなみにICH−GCPでは治験分担医師の履歴書が求められていると解釈して、それを要求してくる治験依頼者もいます)




GCPで規定される“治験協力者”には、一般的に治験事務局の方や治験薬管理者は含まれないと解釈されています。

また、分担医師・協力者への情報伝達確認は、契約締結後〜被験者同意取得の間の治験開始前説明会(キックオフミーティング)に行うことも多いですね。

そして、情報伝達不足である場合には、モニターからも説明するようにします。

キックオフミーティングに欠席された治験分担医師やCRCにはきちんとフォローしておきましょう。


モニターは、責任医師による分担させる業務と分担させる者のリスト作成に協力することもあります。

また、分担医師となるべき者の氏名リスト(及び履歴書(必要な場合))の作成にも協力して、各分担医師に内容を確認してもらった上で署名または記名・捺印されたものを入手します。

但し統一書式では捺印は必須ではありません。



履歴書はIRB申請書類であるため、責任医師、分担医師(必要に応じて)および治験事務局に働きかけて、可能な限り早く入手しましょう。

責任医師は、分担医師および協力者に、プロトコルや各業務内容等について十分な情報を与えて、指導および監督することとGCPに規定されていますが、モニターも説明できるようでなければなりません。


治験業務についてより詳しく理解して頂き、スムーズに治験が進むよう、モニターも分担医師や協力者に働きかけていく必要があります。


ところで国立大学病院の分担医師に何か資格は必要でしょうか?

GCPを遵守して治験を実施できるか否かの観点で、各大学のIRB で審査すればよいです。

大学院生や看護学科の医師等も診療従事者の届が出ていれば分担医師になり得ます。

各施設で事前に確認しておきましょう。



CRCの職種に基準はあるのでしょうか?

基本的に基準はありませんね。

病院内の治験体制に従って決定します。


依頼者が派遣した者は、協力者となり得るでしょうか?

依頼者が派遣した者が協力者として当該治験の実施業務に関与する事は、依頼をした者と依頼を受けた者の関係が曖昧になるので止めておいたほうが無難です。

●治験申請
●治験の進め方のポイント(7)


次に医療機関の長へ治験の依頼に必要な文書を提出および治験責任医師から医療機関の長への文書提出の確認をしましょう。


【事前準備】

・施設選定段階で、施設SOP(写)、IRBに関する院内規定(写)および治験関係書類一式(統一書式が使用されるケースが増えている)を入手して内容を確認します。

さらに、施設SOPとは別に、手続きに関する具体的なマニュアルを作成している施設もあるので、存在すれば入手しましょう。

・治験事務局にIRBの開催日(次回、次々回も)、申請手続き締め切り日ならびにその他手順(ヒアリング、事前審査等)を確認して、申請の予定を立てます。



医療機関の長へ依頼に必要な文書を提出すると共に、治験責任医師が医療機関の長へ必要な文書を提出したことを確認します。

とは言え、治験責任医師が提出する書類も、依頼者(モニター)が一緒にまとめて治験事務局に提出することが多いですね。



〈申請に必要な書類〉

・治験依頼書(依頼者→医療機関の長)

・治験申請書(責任医師→医療機関の長)

上記はまとまって1枚となっていることもある。(統一書式では「治験依頼書」書式3として一体化)



〈IRBへの審議依頼に必要な書類〉

・治験審査依頼書(医療機関の長→IRB委員長)(*治験事務局が作成することもあります。)




〈IRB審査対象となる書類(依頼者・責任医師→医療機関の長→IRB)〉

・プロトコル (合意文書の写しを添付することが多い)

・治験薬概要書

・症例報告書の見本(プロトコルにデータ項目が明記されている場合は不要)

・同意・説明文書

・責任医師の履歴書、分担医師の氏名リスト(求められた場合は履歴書)

・治験費用に関する資料(被験者への支払(支払いがある場合)に関する資料)

・被験者の健康被害に対する補償に関する資料(依頼者が保険に加入していることを証する付保証明書写し、依頼者の補償に関するSOP写し等。必要ならばCRO賠償責任保険(団体加入)の付保証明書写し)

・その他の必要な資料(被験者の募集手順(広告等)に関する資料(募集広告等がある場合)、被験者の安全等に係る資料、施設SOPに必要とされる書類、資料等)


・申請に必要な書類および審査に必要な書類は、上記以外にも施設ごとに定められているので、施設SOPで確認する必要があります。

例えば、分担医師および協力者のリストなどがある。

・予定される治験費用に関する資料作成時には、予め治験事務局で費用算定方法(研究費内訳並びにポイント算出手順等)について伺い、責任医師の確認を得る必要があるでしょう。。



◇ポイント算出表(研究費算出の基礎資料)

プロトコルに基づき、個々の治験について要素ごとに該当するポイントを求める。

そのポイントを合計したものをその治験のポイント数とすることが多いですね。


◇研究費算出表の事例

研究費の内訳は(1)臨床試験研究経費、(2)管理的経費 等。

(1) 臨床試験研究経費

治験に関連して必要となる研究経費のこと。

算出基準 : ポイント数×ポイントあたりの費用×症例数

(2) 管理的経費

治験に必要な事務的、管理的経費のことをいい、備品費(機械器具)、賃金、管理費(光熱水料、消耗品費、印刷費、通信費等)。

また、国立病院機構では旅費規定により旅費も請求される事もあります。




◇被験者への支払いに関する資料

交通費の負担増等の治験に伴う被験者(外来)の負担を軽減するための経費についての資料。

算出基準:1来院あたりの支給額(国公立は一般的に7000円 。 *私立病院では10000円を超えるところもあり)×1症例当の来院回数×症例数

被験者への支払い方法に関しても、必要に応じ本資料に記載する。

なお、被験者負担軽減費の取扱手順(病院により異なる)、受領の意思の有無を本人に確認することが必要なことも把握しておくこと。


 
●治験審査委員会の開催

●医療機関の長の指示・決定の通知書、治験審査委員会の通知文書(写)を入手・確認

治験責任医師が医療機関の長の指示・決定を了承していることを確認

●治験審査委員会の名称・所在地・(構成・活動)に関する文書を入手
●治験の進め方のポイント(8)

IRBによっては、依頼者が治験の概要説明を求められる場合もありますので注意しましょう。

・IRB審議後、電話等によりIRBの審査結果を確認し、医療機関の長から以下の治験に係る文書を入手します。

@医療機関の長の指示・決定通知書

A治験審査結果報告書

BIRBがGCPに従って組織され、活動している旨を確認した文書

CIRBの名称と所在地が記された文書


・一般的には、上記 B、CはAの文書に含まれています。

・現在は上記@、Aの文書は一体化していることもある(統一書式 書式5)

・入手した文書にてGCPで定められているIRBの構成要件を含めIRBが成立するための要件が満たされているかを確認しましょう。

→施設SOPでIRBが成立するための要件を定めるよう求められていると思います。

 例)委員の3分の2の出席をもって成立、外部委員・非専門家の出席等


・成立するための要件が満たされていない場合は、記載内容の正確性を確認した上で再審議を依頼しましょう。

・医療機関の長、治験関係者(治験責任医師、治験分担医師、CRC)が審議に加わっていないことを確認します。

・条件付きで承認の場合は、条件の内容を検討し、同意・説明文書等の修正が必要であればその妥当性を検討します。

また、必要に応じて依頼者と相談します。

その後の対応は施設側の指示に従うことになります(再審議の申請、迅速審査の申請、回答書の作成等が想定される)。


・IRBの会議の記録の概要は、IRB開催後2ヵ月以内を目途に公表(ホームページ掲載又は文書を閲覧に供する)される必要があります。

・会議の記録の概要のマスキングの要否などにつき依頼者と打合せの上、その結果に基づき必要に応じIRB事務局と事前に協議しておくこと。



・IRBの構成要件

@少なくとも5人の委員からなること

A少なくとも委員の1人は、医学・歯学・薬学等の自然科学以外の領域に属していること

B少なくとも委員(Aの委員は除く)の1人は、実施医療機関及び治験の実施に係わるその他の施設と利害関係を有していないこと

C少なくとも委員(Aの委員は除く)の1人は、治験審査委員会の設置者と利害関係を有していないこと



・医療機関の長は治験の実施の適否についてIRBの意見を聴かなければならない。

・医療機関の長は専門IRBの意見を聴くことが出来る。



・委員の数は、少なくとも5名と規定しているが、委員の数がこれよりも多い場合には、A、B、Cの委員の数を増やす等により、委員構成を適正な割合に保つことが必要である。

・B、Cの委員は同一人物でもあり得るが、別人か複数であることが望ましい。

・IRBの設置者は、手順書、委員名簿並びに会議の記録およびその概要を作成し、手順書に従って業務をおこなわせなければならない(省令GCP第28条第2項)。

・IRBの設置者は、手順書、委員名簿および会議の記録の概要を公表しなければならない(省令GCP第28条第3項)



・IRBには次の種類がある。

@医療機関の長が設置したIRB(多施設共同IRBを含む)

A一般社団法人・一般財団法人が設置したIRB

BNPO法人が設置したIRB

C学術団体が設置したIRB

D付属病院等を有する私立大学が設置したIRB

E医療の提供等を主な業務とする独立行政法人が設置したIRB

F付属病院等を有する国立大学法人が設置したIRB

G付属病院等を有する地方独立行政法人が設置したIRB



*外部IRB(多施設共同IRBおよびA〜G)で審査を行うためには、医療機関の長は外部IRBの設置者と契約を締結しなければならない。

実際の審査においては外部IRBの設置者に申請書類を提出し、外部IRBの設置者はその受領した申請書類をIRBに提出する。

*上記D〜Gの治験審査委員会との契約は、その法人が設置した医療機関は必要ない。
 
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