●IRBについて |
●治験の進め方のポイント(9)
●IRBについて
「治験について倫理的および科学的観点から十分に審議を行うことができる」IRBであるか否かを依頼者が判断するためには、具体的に何を確認すればいいのでしょうか?
委員の構成がGCPの求める基準(構成要件@〜C)を満たしていること、業務手順書に従って運営されていること等をIRBの構成と活動に関する文書(委員名簿、議事録等)をもとに確認します。
・IRBの構成要件
@少なくとも5人の委員からなること
A少なくとも委員の1人は、医学・歯学・薬学等の自然科学以外の領域に属していること
B少なくとも委員(Aの委員は除く)の1人は、実施医療機関及び治験の実施に係わるその他の施設と利害関係を有していないこと
C少なくとも委員(Aの委員は除く)の1人は、治験審査委員会の設置者と利害関係を有していないこと
GCP第28条第1項の「専門的知識を有する者以外の者」とは、具体的にどのような人でしょうか?
またどのような役割が期待されているのでしょうか?
「非専門家」としては、一般市民、福祉従事者、法律専門家等(これらの限定するわけではありません)で、医学・歯学・薬学等の自然科学以外の領域に属している人が該当します。
これらの委員には、非専門家として被験者の人権保護等の倫理面について意見を述べること等が期待されています。
IRB委員の外部委員としてどのような人が適当なのでしょうか?
それは、利害関係のない者が適当です。
利害関係がないとはどのように考えるかというと、その病院と雇用関係がないかどうかが一つの基準となります。
もう一つは実際金銭面での関係がないかどうか、経済的な取引がないかどうかを想定します。
具体的な例として、大学病院の場合、その大学の法学部の先生に入ってもらったり、倫理関係の先生に入ってもらう場合は、直接その病院との利害関係はないと考えられています。
●IRB事務局と治験事務局はそれぞれ独立した場所でなければならないのでしょうか?
別の場所である必要はありませんが、それぞれの機能が保証されなければなりません。
●治験審査委員に、責任医師または分担医師がなることはできるのでしょうか?
治験審査委員になることはできますが、当該治験の審議と採決には参加できません。
審議の際、治験の説明を行うことが望ましいと考えられていますが、実際に治験実施の可否を問うところからは外れます。
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●治験契約の締結 |
●治験の進め方のポイント(10)
●治験契約の締結
施設側のSOPから契約書の雛型を入手しましょう。
雛型が存在しない場合は、依頼者側の雛形(SOPで規定された様式等)を使用する旨を確認します。
省令GCP等で定められた契約書の記載事項の有無を点検します。
記載事項に不足がある場合は、三者(依頼者、医療機関、SNBL)協議の上、覚書を取り交わす等により対応。
契約書および覚書の内容は、定められた手順に従って社内点検を受ける(必要に応じて)と共に依頼者・医療機関の了承を得る必要があります。
医療機関の長がIRBの意見に基づいて治験の実施を了承した後に、契約を締結しますが、CROが介在する場合、三者(医療機関、依頼者、CRO)の間で文書により契約を締結します。
ただし、三者の事前合意があれば、医療機関⇔CRO、CRO⇔治験依頼者の二者契約でもOKです。
責任医師は契約内容を確認する必要がありますがが、必ずしも、契約書(および覚書)またはその写しに記名・捺印または署名しなくても大丈夫です。
●契約書には次に掲げる事項が含まれていなければならない
1) 契約を締結した年月日
2) 治験の依頼をしようとする者の氏名及び住所
3) 前条の規定により業務の全部又は一部を委託する場合にあっては、受託者の氏名、住所及び当該委託した業務の範囲
4) 実施医療機関の名称及び所在地
5) 契約担当者の氏名及び職名
6) 治験責任医師の氏名
7) 治験の期間
8) 治験薬の管理に関する事項
9) 記録(データを含む。)の保存に関する事項
10) この省令の規定により治験依頼者及び実施医療機関に従事する者が行う通知に関する事項
11) 被験者の秘密の保全に関する事項
12) 治験の費用に関する事項
13) 実施医療機関が治験実施計画書を遵守して治験を行う旨
14) 実施医療機関が治験依頼者の求めに応じて第41 条第2項各号に掲げる記録(文書を含む。)を閲覧に供する旨
15) 実施医療機関がこの省令、治験実施計画書又は当該契約に違反することにより適正な治験に支障を及ぼしたと認める場合(第46 条に規定する場合を除く。)には、治験依頼者が治験の契約を解除できる旨
16) 被験者の健康被害の補償に関する事項
17) その他治験が適正かつ円滑に行われることを確保するために必要な事項
締結日について、以下の事項を確認します(契約締結の前に!!)。
(1) 治験計画届が初回の場合、届出提出後31日以上経過していること
(2) 第2回目以降の届出が提出されている場合、届出提出後少なくとも15日以上経過していること
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●治験薬交付まで |
●治験の進め方のポイント(11)
「治験契約の締結から治験薬の交付まで」のおおまかれな流れは次のとおりです。
●治験契約の締結
↓
●治験実施前説明会(キックオフミーティング)
↓
●症例報告書の変更又は修正の手引き書提供
↓
●治験薬の取扱い手順書の交付
↓
●治験薬の交付
●治験実施前説明会(キックオフミーティング)の開催
「治験実施前説明会(キックオフミーティング)」とは何?
キックオフミーティングとは、治験の実施をお願いする、それぞれの病院で(場合によっては複数の施設を集めて)開催する治験の説明会を指します。
【キックオフミーティングの事前準備】
・施設SOPなどで説明会の手順が規定されていることはほとんどないので、事務局を含む関連各部署を訪問し、全ての関係者を集めての説明会が必要なのか、各部署ごとの説明会を行うのかを確認します。
また、円滑に話を進めるため、事前に院内業務に関する打ち合わせを行っておくとよいでしょう。
業務分担一覧表を作成し、それをもとに進めるといいですね。
・責任医師および分担医師の都合を最優先させた上で日程を調整する。
・説明資料はプロジェクト内で十分検討し、簡潔で分かりやすいものを作成する。
パワーポイント資料や症例ファイル等必要に応じて準備する。
また、説明会を行う場所や使用する機材が施設にあるか持ち込むかどうかを確認しておく。
・提供する資料(プロトコル、治験薬概要書、CRFの見本、同意・説明文書、治験薬管理手順書、治験スケジュール表等)を説明会の参加人数より余分に準備しておく。
・質問に迅速に対応できるようにQ&A集を作成しておく。
・説明会終了後、薬剤搬入してすぐに治験を開始することができるよう、施設側の体制を整えて頂く必要がある。
そのため、業務分担の確認がここでの最重要課題となる。
・キックオフミーティングの説明会当日は以下の項目を中心に行います。
@治験の概要について説明し、業務の確認を行う。質疑を受けた場合は速やかに回答する。
A署名・印影一覧表を入手(作成)する。
署名・印影一覧表は、第1症例目の被験者が登録される前までに入手しておくべきものだが、一度に入手する良い機会であるため、この時に作成してもらい入手するのが便利。
B症例報告書の変更又は修正の手引き書を提供する。
C保険外併用療養費や被験者負担軽減費については時間があれば説明する。
DCRCがいない施設においては院内の書類の流れ(治験概要、被験者負担軽減費の支払い確認書類等)も説明しておく。
E処方(処方印の使用等)の確認
F他院を受診している場合は、被験者の同意を得た上で、責任医師又は分担医師から他院の主治医に当該被験者が治験に参加していることを御連絡いただくこと、他院での診療情報(処方薬等)の情報入手に努めていただくことの説明
G被験者が薬局で購入し服用したOTC薬剤(感冒治療薬、胃腸薬、漢方薬等)の情報収集に努めていただくことの説明
*依頼者によって、「キックオフミーティング」の意味合いには違いがあり、顔合わせを主な目的とした簡単な説明会のことをそのように呼ぶ場合もあありますので、先輩に確認しておきましょう!
「キックオフミーティング」の事前の院内業務の打ち合わせは、CRCとの連携が重要となってきます。
・プロトコルおよび業務の流れ等について熟知し、質疑には全て答えられるようにしなければならない。
・臨床検査が外注になっている場合は、検査会社の方に説明会へ来ていただき、検査キットの説明をしてもらうことが多い。
その場合、検体処理(遠心分離条件等)・保存・回収手順等について役割分担を含めて確認の必要がある。
・「症例報告書の変更又は修正の手引き書」は、治験の実施に先立って提供すべき書類なので、この時点で提出されていることが望ましいですね。
提供できない場合でも、遅くとも第1症例目の被験者が登録される時までに提供されるべきしょう。(そうしないと被験者のデータが発生しても、治験責任医師等がCRFにデータを正しく書けないからですね。)
「キックオフミーティング」の説明会の出席者はどのような人たちがよいでしょうか?
たとえば治験責任医師、治験分担医師、治験協力者(CRC)、薬剤部、看護師、検査部、まれに医事課等の事務関連部署等が出席します。
施設や治験により、出席するメンバーは異なります。
説明会で説明できなかった方に関しては、後日別の機会に説明します。
また、説明会と治験薬の交付を同日に実施することがあります。
でも、ほとんどの場合、薬剤部に説明をする時に、治験薬の交付を行いますけれどね。
「キックオフミーティング」での治験業務の打ち合わせとは具体的にどのような内容でしょうか?
一般的には症例ファイル(*)や共通ファイル(**)をもとに打ち合わせを行うことが多いです。
同意取得から症例を登録し、 投薬を開始するまでのスケジュールや、臨床検査の実施方法、治験薬の払い出し方法などを重点的に、治験開始から治験終了までの流れを説明します。
同意・説明文書や検査キットなどの実物を使用して、よりわかりやすく説明したり、患者さんの選択基準・除外基準や併用禁止薬(該当医薬品の医療機関採用品目の一覧を求められることもあります)など、逸脱が発生しやすい点について注意を促す工夫が重要です。
更に、SAE(Serious Adverse Event :重篤な有害事象)の定義やSAE発生時の手続き方法についても説明しておく必要があります。
*症例ファイルとは施設ごとに対応させて1症例に1冊作成されるファイルです。
被験者ごとに同意文書及びその他の説明文書 、登録票、治験概要、フローチャートやチェックリスト、カルテシール、CRF等を1冊のファイルにしておきます。
**共通ファイルとは各症例に共通する資料を施設ごとに1冊にまとめたファイルです。
被験者登録に関する文書(スクリーニング名簿、登録名簿、被験者識別コードリスト、等)、署名・印影一覧表の写し、同意文書及びその他の説明文書、カルテシールの予備等をまとめたファイルです。
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●治験薬交付時の注意点 |
●治験の進め方のポイント(12)
●治験薬の取扱い手順書の交付
【事前準備】
・治験薬の管理に関する手順書を交付する前に、その内容について治験薬管理者とすり合わせを行っておく。
・治験薬を交付するまでに、治験薬管理表、処方印、薬袋について協議しておくこと。
・治験薬管理者と実務者が異なる場合は、治験薬管理者より実務者を指名した記録を入手し、治験薬の管理に関する手順書の説明をする。
・治験依頼者は治験の契約の締結後遅滞なく、治験薬の管理に関する手順書を 実施医療機関に交付しなければならない。
●治験薬の交付
【事前準備】
・交付の前に、治験の契約が締結されているかどうか確認する。
・納品書への捺印は誰のもの(依頼者側の治験薬管理者もしくはモニター)が必要であるかを事前に事務局で確認しておく。
また、受領書の捺印も、治験薬管理者のものでなければならないのか、代行者(治験薬管理者が指名したもの)のもので良いのかを確認しておく。
治験薬を直接医療機関に交付する。
このとき、依頼者側が捺印した治験薬納品書の写し(治験依頼者の治験薬交付及び取扱い記録 )と施設側の治験薬管理者が署名または記名・捺印した治験薬受領書(治験依頼者の治験薬交付及び取扱い記録)を入手する。
・治験依頼者は、治験薬を治験依頼者の責任のもと実施医療機関に交付しなければならない。(省令第17条)
・治験依頼者は、治験薬の品質管理、運搬及び交付を確実に行うための必要な手順を定めておくこと。
・治験依頼者は、運搬業者等を用いて実施医療機関に治験薬を交付する場合には、治験薬の品質管理、運搬及び交付を確実に行うために、当該運搬業者等と契約を締結するなど必要な措置を講じておくこと。(省令第17条解説参照)
・治験薬管理表(医療機関での治験薬の保管・管理記録)は、施設で様式が決まっている場合は、施設様式を使い、施設で様式が決まっていない場合は、依頼者側で様式を作成する。
しかし、施設で様式が決まっている場合でも、様式の内容が不足している場合、様式の変更や依頼者側様式の使用を求める。
・二重盲検試験の場合、責任医師に盲検下の治験薬の割付けコードの開封手順書(エマージェンシーキーコードの開封手順)を治験薬交付までに提出しておく(同日を含む)。
コードがスクラッチになっている時は、治験薬交付の際にスクラッチが削れやすいことの注意を促す。
また開封に際する十分な説明も必要。
注意!!
<GCP省令第11条>
治験の依頼をしようとする者は、治験の契約が締結される前に、実施医療機関に対して治験薬を交付してはならない。
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