●治験実施医療機関の要件維持の確認 |
●治験の進め方のポイント(13)
治験実施医療機関の要件維持の確認
下記2点が治験期間を通して継続していることを確認する。
・医療機関および責任医師が治験を適切に実施するのに求められる要件を満たしていること。
・検査室や必要な装置およびスタッフを含む設備が、治験を安全かつ適正に実施するのに十分であること。
次のことにも注意しましょう!
医療機関の要件が維持されているか
@開催されたIRBが要件(省令第27〜34条)を満たしていること。
A当該治験が安全にかつ科学的に実施されていること。
B治験責任医師、分担医師、薬剤師、CRC等当該治験スタッフが変更がないこと(変更があったら、適切な処置を講じる)。
C治験薬管理者が治験薬の性質およびプロトコルを理解し、当該治験薬の適切な保管、管理および調剤等を実施していること。
D記録等の保存を適切に行なっていること。
上記の項目は、施設SOPや治験事務局、CRC、薬剤部等より確認することができる。
・施設SOPは度々改訂が行われることがあるため、施設SOPが改訂された際に、通知していただくよう予め依頼し、改訂されたら改訂版を入手して、医療機関選定時に確認した要件等に変わりがないこと、改訂版に沿って治験が実施されていることを確認する。
なお、施設SOP(写)の提供を拒否された場合は、閲覧確認でもやむを得ないが、モニタリング報告書にはその旨記載する。
・治験責任医師、分担医師、治験事務局やCRCに対し、治験を行なうための基準要件に関わる変更(職名変更等)が行われた際には、モニターに連絡して頂くように事前にお願いしておく。
医療機関の長は、人事異動等による責任医師等の変更がある場合には依頼者に事前に連絡する旨規定はされていますが(省令第36条第1・2項解説)、モニターは受け身の姿勢ではなく積極的に、該当事項発生の有無を調査する必要がありますね。
IRB委員に変更があった場合、変更後のIRBがIRB構成要件に合致するかを確認すること。(継続審査時)
IRB委員の変更については、治験審査委員会の設置者が保存する記録 1)委員名簿及び、治験の継続に関する医療機関の長の指示、決定に関する文書に添付されている治験審査委員会の治験の継続に関する通知文書の写しに委員の名前が記載されているので、それを見ることによって委員の変更の有無を確認することができます。
治験責任医師の要件
@治験を適切に行うことが出来る十分な教育および訓練を受け、かつ十分な臨床経験を有すること。
A治験実施計画書、治験薬概要書及び治験薬の適切な使用方法に十分精通していること。
B当該治験を実施に際し、GCP及び治験実施計画書を遵守できること。
C依頼者によるモニタリング及び監査並びにIRB及び規制当局による調査(原資料等の直接閲覧を含む)を受け入れる意思があること。
D治験を行うのに必要な時間的余裕を有すること。
E目標症例数(適格な被験者)を合意した治験期間に実施できること。
F分担医師及び協力者等の適格なスタッフを確保できること。
要件が維持されていることについて、いつ、どのように確認するのでしょうか?
適宜、CRCや治験事務局、その他MR、医療機関の人事担当者に訪問や電話等にて確認します。
直接責任医師に聞くことはあまりありません(無いこともないですが)。
また、3月末や年末には、組織の編成、転勤・出向・退職等の人事異動等、医療機関内で様々な変化が生じることが多く、病院の人事担当者等に医師の職名変更の有無を確認する必要があります。
またIRB委員についても同様に確認する必要があります。
IRB委員の異動については、指名記録やIRB出欠リストにより知り得ることがあるので、しっかり内容確認を行なうことが必要です。
その他、院内検査を実施している場合、検査機器や試薬の変更によって、院内基準値が変更される場合があるので検査科への確認が必要です。
いずれにしても、日頃から医療機関や医師の変化を敏感に感じ取れるように心がけ、気付いた時にはすぐに確認し、必要に応じて手続きを実施します。
そして、その経緯を含め全てをモニタリング報告書に残すことが必要です。
治験責任医師の「時間的余裕」はどのように確認するのでしょうか?
責任医師には、教授や准教授、診療科部長等、職位の高い先生が就くことが多く、診療や手術、講義等の通常業務で大変忙しいのが現状です。
そのため、面会のためにいかに時間を割いていただくか、あるいはいかに空いている時間をモニターがかぎつけるかがポイントとなります。
例えば、外来の診療時間および外勤を確認する等、医師のスケジュールをチェックしておくことが必要となります。
稀なケースですが、施設によっては、履歴書に責任医師の診療時間や診療日数を記載する欄があることもあります。
その他、他の治験を何件されているか、その件数も判断基準として考えられます。
どうしてもアポイントが取れない場合は、上司、リーダー等に相談し、対策を考える必要があります。
治験責任医師、分担医師、薬剤師、CRC等当該治験スタッフが人事異動等により変更になった場合どのようにすればよいでしょうか?
責任医師が変更になった場合には、責任医師との治験に関する合意、治験審査委員会の審議、および契約を行う。
分担医師または他のスタッフが変更になった場合には、協力者リストの更新及び医療機関の長の了承が必要。
また、治験分担医師についてはIRBでの審議が必要。
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●治験実施計画書遵守の確認 |
●治験の進め方のポイント(14)
●治験実施計画書遵守の確認
治験責任医師および分担医師が、医療機関の長の指示、決定およびIRBで承認されたプロトコルに従って治験を実施している事を確認する必要があります。
プロトコルからの逸脱の有無を、担当医師から口頭で確認、または直接閲覧時に原資料により確認しましょう。
確認する項目としては以下のものが挙げられるます。
・被験者からの文書同意の取得(同意文書の保存を確認する。電子カルテの場合に注意)
・同意取得以前に、治験のための検査や投薬、観察、ウォッシュアウト等が行われていないことも確認する。
加えて、同意・説明文書が改訂されている場合は、改訂版で再同意が取得されていることを確認する。
・選択基準への合致
・除外基準への抵触
・検査の未実施(ズレや欠測)
・併用禁止薬の使用
・併用制限薬の使用
・治験薬の投与経路・投与方法・服薬方法等の間違い
・評価のズレ(適切な評価日に評価されているかどうか)
上記において逸脱がみられた場合には、「症例および症例データの取り扱い基準書」等に従って対応する。
プロトコル遵守の確認を行うことも重要ですが、逸脱を未然に防ぐ対策を講じることが最も重要です。
特に、治験担当医師毎の組入れ1症例目については、エントリー後すみやかに直接閲覧を実施し、被験者組入れの妥当性を確認しましょう。
プロトコルの逸脱を防止するためにはどうすればいいでしょうか?
治験責任医師・分担医師に合意を得る段階やガイダンス時に、詳しく説明しておくことが重要となります。
同様に、薬剤部、CRC、検査部等の関連部署に対して詳しく説明することも重要です。
また、施設訪問時にその時点までの逸脱の有無を確認した上で、問題点・疑問点があれば再度説明することも必要です。
その他、逸脱を防ぐために、プロトコル概要の携帯版、診療場所(外来等)で使用できる治験スケジュールカードなどのアイテムを用意することもあります。
特に担当医師1〜2症例目の被験者が登録される前後は、最も重要な時期なので、こまめに施設を訪問することが大切です。
また、プロトコルに沿った症例ファイルを提供し、検査項目欠落等の逸脱を未然に防ぐことも重要です。
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●直接閲覧 |
●治験の進め方のポイント(15)
●直接閲覧
【事前準備】
直接閲覧の実施を依頼する際に、医療機関によって以下の手続きが必要となる場合があります。
・依頼者から医療機関へ「直接閲覧申請書」等の提出
・医療機関(事務局)から「直接閲覧許可書」等の入手
・依頼者から医療機関(事務局)へ「直接閲覧結果報告書」の提出
依頼の際には事前に手続きの手順を確認し、その手順に従って、直接閲覧の日時および場所を責任医師、分担医師、事務局、CRC等と打ち合わせを行い、原資料等の治験関連記録の準備を医療機関側の担当者に依頼します。
統一書式採用施設では、直接閲覧の実施の都度改めて書面(上記申請書や許可証など)のやり取りは不要ですが、実務者間のやりとりのために「直接閲覧実施連絡票」を使用している可能性もあるので、施設SOPを確認すること。
治験関連記録の準備を依頼する相手の一例を以下に示します。
「どの時期からどの時期まで、どこの科の何を見たいのか」を5W1Hに従い正確に依頼先へ伝える事が大切ですね。
●直接閲覧対象資料:医療機関が保管する治験に係る文書又は記録(契約・手続き関連資料を含む)⇒(準備依頼先):記録保管担当者(治験事務局等)
●直接閲覧対象資料:責任医師保管の治験に係る文書又は記録 ⇒(準備依頼先):治験責任医師
●直接閲覧対象資料:治験薬の管理に関する資料 ⇒(準備依頼先):治験薬管理者
●直接閲覧対象資料:原医療記録 ⇒(準備依頼先):治験責任医師、分担医師、CRC
(*上記は一例であり施設により異なるので注意しましょう!)
直接閲覧を行う際に、医療機関に持参する備品は以下のようなものが挙げられる。
<DA(治験に係る文書又は記録の直接閲覧を除く)・SDV>
・医薬品集(今日の治療薬、治療薬マニュアル等)
・カルテ用語辞典
・医学用語辞典
・電卓
・付箋
・チェックリスト
・治験実施計画書及び症例報告書の作成、改訂の手続きに関する記録
・CRFまたはCRFのコピー(未回収の場合は医師・CRCに準備して頂く)
・カレンダー(手帳等の小さいものがよい)
・筆記用具(シャーペン、ボールペン、赤・青等の色ボールペン、蛍光マーカー)
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<DA(治験に係る文書又は記録の直接閲覧)>
・チェックリスト
・付箋
・カレンダー(手帳等の小さいものがよい) 等
規模の大きい施設では、カルテやX線フィルム等は、通常の保管場所以外の場所に持ち出されている場合があります。
この場合、借り受けるまでに時間がかかるため、スケジュールを確認した上で余裕をもって直接閲覧申請書(又は直接閲覧実施連絡票)を提出する必要があります。
被験者の来院予定日には、カルテが出庫されていることが多く、閲覧が難しくなる可能性が高いので注意が必要。
また、入院患者のカルテ等も直接閲覧当日に使用中であったり、あるいはすぐに返却しなければならないことがあります。
直接閲覧は、2種類に分けられる(あくまでも便宜的に)。
1)SDV(Source Document Verification)
「直接閲覧による原資料との整合性の確認」のことであり、治験を評価する上でCRFと施設が保管する原資料(カルテ等)を照合・確認する。
2) DA(Direct Access)
照合すべき対象となる文書はないが、被験者情報や施設の治験実施体制等の確認をするために、医療機関の保有する記録、文書等を閲覧することを言う。
例えば、『@カルテの閲覧による選択基準や有害事象、逸脱の確認、A施設で保管されている治験に係る文書又は記録の確認、B原資料の閲覧、CCRFの閲覧』等がある。
施設では、DAおよびSDVを一括して「直接閲覧」という言葉で表現している。
すなわち、言葉の区別が無いため、直接閲覧を依頼する場合は、5W1Hに従い正確に依頼内容を施設に伝える事が必要である。
*直接閲覧を行うことによって、モニターは被験者の個人的情報を見ることになります。
施設SOPをしっかり遵守し、手続きや閲覧資料の取り扱いに注意する必要があります。
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●直接閲覧に際して注意する点 |
●治験の進め方のポイント(16)
●直接閲覧に際して注意する点
<症例報告書(CRF)のチェックポイント(症例報告書をチェックする際に注意する点>
・CRFに記入漏れがないか。
・CRFへの記載が症例報告書の変更又は修正の手引き書に従って行われているか。
・すべてのAEが記載されているか、SAEに該当するものが存在しないか。
・プロトコルからの逸脱の有無を確認する。逸脱事項があれば責任医師に指摘し、その経緯および理由を調査の上、その改善策を協議・指示するとともに、その結果をモニタリング報告書に記録する。
なお、緊急の危険を回避するための逸脱の場合は、治験実施計画書からの緊急の逸脱又は変更の記録の作成を依頼し入手する。
・緊急の危険を回避するため以外の逸脱については、GCP上、カルテなどから確認できれば問題なく、当該事項の記録を目的とした文書を別途作成する必要はないとされているが、施設SOPに準拠して対処する。
・登録された被験者の全ての中止例・脱落例が記載され、その理由が説明されているか。
・訂正・修正があった場合、訂正・修正日と署名または捺印(重要な変更の場合には理由)がされているか。
・分担医師が作成したCRFを責任医師が確認した上で記名・捺印、または署名されているか。
<SDVの時に注意する点:直接閲覧のポイント>
上記の確認する項目に加えて、以下の項目を確認する。
・治験薬の用量や治療法の変更があった場合、その全てが各々の被験者について記録されているか。
・プロトコルが要求するデータがCRFに正確に記載され、それらが原資料と一致しているか
・原資料との矛盾があった場合には、責任医師または分担医師に確認した後、症例報告書の変更又は修正の手引き書に従い、CRFの変更または修正を依頼する。
あるいは、原資料との矛盾を説明した記録の作成を依頼・入手する。
・AE、併用療法および合併症、既往歴がプロトコルに従って記載されているか。
・被験者が規定通りに来院しなかった日や検査が実施されなかった場合その旨が記載されているか。
<DA:ダイレクトアクセス(治験に係る文書又は記録の直接閲覧)>
・医療機関(責任医師、医療機関の長、治験薬管理者、IRB事務局)が保管すべき文書が保管されているか。
・保管されている文書の種類が間違っていないか
・同じ書類を複数人が保管する場合、その内容が同一になっているか。
・日付の整合性がとれているか
・IRB議事録に審議された内容が記載されているか。
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