【治験の進め方のコツ・ポイント】

モニタリングのコツ・治験の効率的な進め方。治験の進め方のポイント(5)
治験を進めることで注意すること。治験の進め方のコツ・モニタリングの注意点




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●監査の準備をする
●治験の進め方のポイント(17)

●監査の準備をする

原資料、特にカルテを直接閲覧したい場合の申請はどうしたらいいでしょうか?

施設によっては(開業医等の場合)、直接閲覧の申請は必要ない場合があります。

また、統一書式を採用している施設でも申請は必要ありませんが、「直接閲覧実施連絡票」を使用している場合もありますので、施設SOPに準拠して対処してください。

規模の大きい施設では、カルテが保管庫に保管されている場合があり、出庫のために申請が必要な場合もあります。

また、カルテを閲覧したい場合、「どの時期からどの時期まで、どこの科の何を見たいのか」を正確に施設に伝える必要があります。

また、直接閲覧の申請をどこの誰に対して確認するのかを予め、治験事務局の方に聞いておくなどの調査をしておくことが必要です。

なお、直接閲覧申請書や直接閲覧報告書は「治験に係る文書又は記録」には該当しませんので、施設SOPや合意SOP、モニタリング手順書等にそれら文書の作成が規定されていない場合は、モニタリング報告書等に閲覧結果を記載しておくことが必要とされます。




●外部監査:施設監査(On-site Audit)が入る場合の注意点

QA(監査)は開発部門のリーダーに対し監査の実施を通知してきます。

それを受けてリーダーはモニターに対し準備等(必要に応じて施設にQA訪問のアポイント取得、QAと施設に同行など)の指示をします。

モニターはPLの指示を仰ぎます。

監査は監査計画書に基づいた項目について行われます。

具体的項目は依頼者や監査目的により異なります。

ただし、必ず行われる監査項目は施設保管の治験に係る文書又は記録の確認でしょう。

その時までに、モニターは適宜モニタリング時に直接閲覧を実施し、施設に治験に係る文書又は記録が適切に保管されているかを確認しておかなければなりません。


施設SOPによって、治験に係る文書又は記録等の直接閲覧、または監査不可である旨が規定されている場合があります。

この事項に関しては、施設選定時に確認しなければならない重要事項の一つです。

また、直接閲覧、または監査が出来なければ、その施設で入手したデータは信頼性のないデータと見なされるため、通常は治験実施施設として不適格と判断されます。



監査はどの時期に行われるでしょうか?

目的により時期は様々ですが、治験開始前時、治験薬投与時、治験終了時に行うことが望ましいと考えられています。

なお、必ず監査を行わなければならない時期は、治験終了時でしょうね(でも、これすら、治験依頼者の監査部門の考え方しだいです)。



監査は全施設で行われるでしょうか?

通常、監査は全施設で行われることはありません。

たとえば√N(全施設数)若しくは√N+1数等の施設を監査します。

つまり、サンプリングということです。


●治験薬の使用状況の確認
●治験の進め方のポイント(18)

●治験薬の使用状況の確認

医療機関での治験薬の取扱いおよび保管・管理が、治験薬の管理に関する手順書に従って医療機関での治験薬の保管・管理記録に適切に記録されていることを、治験途中の段階で訪問により確認する。

また、併せてその時点の医療機関での治験薬の保管・管理記録の写しを入手しておくとよい。

そして、不備があればその内容を伝えること。



・治験薬の取扱い手順書に記載されていることは全て大切ですが、被験者への処方方法、並びに保管場所や保管方法の遵守は特に確認が必要です。

・施設での治験薬払い出しやその後の流れに不備や問題がないかを確認することも必要。



医療機関での治験薬の保管・管理記録

・医療機関が、治験薬受領、医療機関での在庫、被験者ごとの使用状況および未使用治験薬の依頼者への返却、または、それに代わる処分に関して、医療機関での治験薬の保管・管理記録を作成し、保存していることを確認する(治験薬取扱い手順書に従って記録・作成および保存していることを確認する)。

・この記録には、@日付   A数量   B製造番号または製造記号   C使用期限(必要な場合) D治験薬および被験者識別コードが記載されている。

・さらに、プロトコルに規定された量の治験薬が被験者に投与され、また依頼者から受領した全ての治験薬の数量が正しく管理された医療機関での治験薬の保管・管理記録および治験薬の投与記録が作成され、保存されていることを確認する。

これらの記録の写しを入手する際は被験者のプライバシーを留意し、被験者名をマジックで消す等の措置をして、個人を特定できない工夫が必要である。


治験薬がきちんと管理されているかの確認は、随時行うのでしょうか?

モニタリング手順書に記載されていることがあるので、その場合は手順書に従いましょう。


治験実施中にある程度の間隔で医療機関での治験薬の保管・管理記録を入手して確認します。

治験薬の使用数及び残薬数と、プロトコル上その時点までに予定されている治験薬の使用数及び残薬数とが一致していることを確認し、もし不整合が生じていれば早期にそれを把握することが目的です。



モニターは、責任医師または分担医師が、プロトコルに定められている治験薬の使用方法を被験者に対して説明・指示をしていることを確認します。



被験者に適切な説明がなされているかを直接医師に確認することが必要である。間接的にモニターには、以下の点を確認する。

・医療機関での治験薬の保管・管理記録で治験薬の使用数および残薬数と、プロトコル上その時点までに予定されている治験薬の使用数および残薬数とが一致しているかを確認。

また、医療機関での治験薬の保管・管理記録の写しを入手する。

・カルテや処方箋を直接閲覧し、処方に誤りが無いかを確認。

・責任医師または分担医師、CRC、薬剤師に被験者のコンプライアンス(服薬率)を口頭で確認

・服薬記録がある場合は、それを確認する。


以上の確認事項から説明指示が徹底されていないようであれば、再度使用方法について責任医師、分担医師、CRC、薬剤師に対し説明を行いましょう。

また、必要な場合は、カルテシール、ワークシート等を作成し、処方内容・被験者への説明事項について正確な記録が残るような対策をとります。

カルテシール(ワークシート)とは、プロトコルにある検査の欠測・記入もれ等の防止を目的として、CRFに記載すべき内容でカルテに記載漏れの可能性のある内容の記載欄等を、そのままカルテに貼れるようにしたシールのこと。




複数の治験を実施している施設では、モニターが治験薬保管場所を逐一確認することは、他の治験との関係上難しいことがあります。

そのような場合、保管管理状況や用法・用量が徹底されているか確認できるように、予め治験薬管理者等と打ち合わせをしておく必要があります。

●症例登録の依頼
●治験の進め方のポイント(19)

●症例登録の依頼

治験責任医師等に治験への患者さん参加(症例登録)の依頼をします。


【事前準備】

@フローチャートを提供する等、症例登録の施策を講じる。

A施設の対象患者の来院・搬送状況を把握しておくこと。



モニターは、責任医師または分担医師に対し症例登録を依頼します。

また、CRCに対しても症例登録推進の協力を依頼しましょう。



症例登録の依頼 

(1)直接訪問や電話等によりアプローチをかける。

頻度は、1〜2回/月が目安。

また、症例登録の意識が高く、しっかりとスケジュールを組んで症例登録を実施しているような施設では、頻繁なアプローチは逆効果な場合がある。

しかし、アプローチを怠ることは厳禁。

何らかの用件のついでにふれてみる程度がよい。


(2)全体の進捗状況をグラフにしたものを提示することも効果的な場合がある。(他施設の症例登録状況をさりげなく伝えるなどもよい。)

(3)治験薬の長所をアピールし、関連する新しい情報(文献紹介等)を積極的に提供し、治験薬に興味を持って頂きモチベーションを上げる。



「症例が無い」といわれる場合、その理由として以下の項目が挙げられる。

・本当に患者がいない・・・^^;

・競合する治験が同施設で実施されている

・類似薬の発売・処方

・責任医師、分担医師が治験に対して怠慢である

・手順がスムーズに流れない   等


すなわち、@治験を実施するにあたり適格な責任医師・医療機関を選定し、A責任医師や分担医師、CRCとの信頼関係を確立することが、症例登録依頼、さらには症例数獲得に大きく影響することをまず認識すること。

また、モニターの働きかけにより改善できる点もあるため、モニタリング時に問題点を探り解決することも重要である。

その他、エントリーに必要な選択・除外基準のクリアが目前の症例の場合(あと一つ基準をクリアできればエントリーできるという場合)は、特に注意して責任医師等に対し、その症例の経過等を確認することが大切。

 
●同意取得の確認  ●被験者選定の確認
●治験の進め方のポイント(20)

●同意取得の確認

●被験者選定の確認


【事前準備】

同意文書は原資料である。

そのため、原資料の直接閲覧申請を行わなければならないことに注意!!



各被験者から、治験に参加する前に、治験への参加について自由意思による同意が文書により得られていることを記名捺印又は署名ずみ同意文書で確認する。

電子カルテの場合、カルテに書類は入れられないので、施設ファイルに保管されていることが多い。

同時に、記名捺印または署名ずみ同意文書写し等を被験者に渡したことを記名捺印又は署名ずみ同意文書写し等を被験者に渡した記録(通常はカルテ)で確認する。  




同意が得られていることを確認した上で、責任医師または分担医師が治験に適格な被験者を治験に組み入れていることを確認する。

なお、同意・説明文書が改訂された場合、改めて記名捺印又は署名ずみ同意文書(改訂版)を得たことを確認する。



確認項目としては以下に示すものがあげられる。


(1)被験者に対し治験に関する十分な説明がなされた後に同意が得られている。

(2)同意文書及びその他の説明文書、記名捺印又は署名ずみ同意文書の写しが被験者に手渡されているかを、記名捺印又は署名ずみ同意文書写し等を被験者に渡した記録(通常はカルテ)により確認。

(3)説明者または説明補助者として同意文書に記載されている分担医師・協力者名が、医療機関の長が了承した治験分担医師及び治験協力者のリストに記載されている者であり、説明または説明補助が分担業務とされている者であることを確認する。

(4) 被験者識別コードのリスト、被験者のスクリーニング名簿、 被験者登録名簿等と同意文書の整合性がとれている。

(5) 記載漏れがないか確認する。

(6) 代諾者から同意を得ている場合は、代諾者と被験者の関係を示す記録(通常はカルテ。あるいは、同意書)により被験者との関係を確認する。

(7) 同意取得日が適正か否かを確認する。



同意が取得できていることを確認した後、適格な被験者のみが治験に組み入れられていることを原資料(カルテ・検査伝票等)の直接閲覧により確認する。

確認項目は以下に示す。

・責任医師、分担医師が作成したスクリーニング名簿に記載された症例であることを確認

・プロトコルの選択基準に合致し、除外基準に抵触していないかを確認

・プロトコルに従い、被験者の既往歴、合併症、処方薬等を確認



それぞれの担当医師の最初の1〜2症例目登録前および登録時は、特に注意深く同意文書・被験者選定について確認する必要がある。

初期段階における直接閲覧の主な実施目的は、責任医師等がプロトコルおよびGCPを遵守して治験を実施していることを確認することにあり、極めて重要である。

この段階では、ミスや逸脱が発生しやすいため、頻繁に施設を訪問して確認する。

早期に方向修正を確実に行っていくことで、以降の同意取得および被験者選定における逸脱を防ぐことができる。

また、他院での処方薬、薬局で購入した薬剤の服用の有無を確認することで、併用薬の確認からひいては有害事象の発現を見逃すことを減らせる。

 
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