【モニター教育担当者用】

1)一番大切なこと 2)研修のあり方 3)カリキュラムの作り方 4)講師の育て方


3)カリキュラムの作り方


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■まずは自社のモニターのレベルを把握しましょう。


全ては「現状把握」から始ります。


「2)研修のあり方」の最初にも述べましたが、「逆上がり」が出来ない人に、いきなり「大車輪」を教えることはできません。

今のあなたの会社のモニターの平均的レベルがどれ位なのかを、まず最初に把握しましょう。
その把握方法にはいろいろ有ります。

僕が主に使っている方法は次のようなものです。

(1)筆記試験

(2)QCや監査からの指摘事項

(3)医薬品機構からの指摘

(4)モニター会議に出席する



その他に、まれに使っている方法は次のようなものです。

(5)実技試験(ロールプレー)

(6)研修中での質疑応答

(7)雑談


これらの方法には、それぞれに特徴があります。詳細は⇒「2)研修のあり方

以上の方法を使って、自社のモニターの全体的なレベルや、個々のモニターのレベルの差を把握します。
その結果に基づいて、以下の観点で、カリキュラムを組みます。

■カリキュラムを組む時の観点

▼まずはボトムアップすべき事項・モニターを探す


どんなに優秀なモニター集団であっても、ひとりの致命的なミスで、治験全体がダメになってしまう可能性があります。
そんなモニターがいないかどうかを探します。GCP条文の半分以上を知らないモニターがいませんか?

また、ある分野だけ、特別にレベルが低い事項もあります。
例えば、治験の変更届を出す必要がある項目を知らない。特に、事前に提出すべき変更項目を知らないとか。
安全性情報の知識が弱く、「重篤」の定義を知らない人が多いとか、当局に届ける必要がある副作用の種類を知らないとか、期限があることを知らないなど。

もし、該当するモニター、事項、項目があましたら、そのボトムアップに努めます。
できるモニターには申し訳ないですが、なによりも、治験を失敗させない努力をまずすべきでしょう。


▼おおまかにレベル別集団の比率を把握する

全体のモニターの母集団を、初心者レベル、中級者レベル、上級者レベルに分けて、それぞれ、どれくらいの比率なのかを、ざっと見当をつけます。

その上で、年間カリキュラムを考えます。
最も多く研修時間を割くのは、初心者レベルになります。もし、母集団の中で、最も多いのが「初心者レベル以外」で有った場合は、初心者用の研修を、モニターの全体研修とは別に、設定して、特別に実施する必要があります。

一番、心配しなくてもいいのが、上級者レベルです。(当然ですが)
上級者レベルというのは、既に、上級ですし、さらに、放っておいても、さらに“ある程度”は向上するでしょう。

なので、上でも述べましたが、ボトムアップすべき層を特定し、そこに最も力を注ぎます。

僕も、上級者、中級者の方には堪えてもらって、毎月やっている「モニター継続研修」は、ボトムアップに力を注ぎました。(初心者レベルがほとんどだったので、そんなに堪えてもらった人の人数は少なくてすみましたが)

その代わりに、中級者以上の人用の研修を別途設定しました。前述したパターン(母集団の中で、最も多いのが「初心者レベル以外」で有った場合)の全く、逆のパターンです。


▼研修の目標、計画をしっかりと作る

モニターの平均レベルを何年かけて、どの程度に持ち上げるかを考えます。

例えば、なんの計画も目標も無く、ただ漠然と5年間、モニター研修をやったとします。
モニターは、5年間という年数だけ見れば、中級者から上級者のレベルです。
しかし、それは時間的なものさしです。

初心者レベルを無計画に5年間研修したとしても、初心者レベルのままでいることはありえます。

これは、ひとえに「モニターの研修担当者の全責任」だと僕は思います。

え!? そんなのありかい!? 勉強しないモニターが悪いのだ、こっちは研修をしているが、出席しないモニターが悪いんだ。

ハイ、ハイ、それでもいいでしょう。 それで話が済むなら、それで結構だと思います。

ただ、僕自身の考えを述べただけです。
繰り返しますが、モニターが5年たってもレベルが上がっていなかったら、それはひとえに「モニターの研修担当者の全責任」だと僕は思います


僕が今の会社に移ってから考えた5ヵ年計画は次のとおりです。


【全体像の把握】

僕がまず最初にやったのは、全体像の把握です。

モニターの全体レベルを把握した結果、ほとんど(7割位)の人が初心者レベルだった。
有害事象の定義を知らない、重篤の定義を知らない、治験の変更届が必要な項目を知らない、IRBの構成要因の条件を知らない、というレベルでした。機構からの指摘も、そのあたりに集中していました。

そこで、次のように5ヵ年計画を立てました。

【1年目】(目標:基礎の確立。GCP、SOPを覚える)

・GCP試験や監査の指摘等から見て、まだまだGCPを全て把握しているモニターが少ないので、徹底的にGCPを覚えてもらう。
・GCPの条文を覚えないうちは、事例検討は一切、しない
・GCPを覚えてもらう方法は、eラーニング、筆記試験、模擬研修等
・とりあえず、知識としてでもいいから、GCPを全文、把握してもらう。
・特に重要項目や、弱点を集中して研修する。


【2年目】(目標:基礎の確立。GCP、SOPを覚える。SDVをしっかりできる)

・1年目からの続きで、GCPやSOPの研修をやりましたが、知識から行動へとシフトしていく。
・模擬研修を重点的にやる。(実際のSOPの書式等を利用して、行動し、記載し、体で覚えてもらう。)
・模擬SDVを特に徹底的にやる。SDVに必要な基礎的医学知識、カルテ用語も覚えてもらう。
・モニタリング報告書、SDV記録の方法を実際に書いてもらったり、チェックしてもらう。
・リーダーシップの確立。(中級者以上を対象とした。)


【3年目】(目標:初心者レベルからの脱却。GCPの基礎知識から応用へ)

・実は今年(2004年)が、このレベル。
・監査や機構からの指摘を事例に用いて、事例検討をする。特に、何故問題が発生したのか、発生した時の対応方法、再発防止策について、検討してもらう。
・より、分かりやすいモニタリング報告書の記載方法を学ばせる。
・医師とのコミュニケーション方法の基礎を学ばせる。
・「問題解決手法」を学ばせる。(中級者以上を対象とする。)


【4年目】(目標:治験の質を下げずにスピードを上げる。全体が中級者のレベルに達している)

・被験者登録促進方法、CRFを早く作成してもらう、など等のために、医師やCRCとのコミュニケーション力の強化。
・課題解決を速やかにこなす。
・総括報告書やプロトコールも読んで書けるモニターの育成。(上級者を対象とする。)
・部下を育成できるモニターにする。OJTができる。


【5年目】(目標:どこへでも高く売れるモニターにする。たとえM&A(合併、吸収)が有ったとしても、生き残れるモニターにする。全体が中級者以上のレベルに達している。)

・戦略と戦術を立てられるようにする。
・課題発掘そして解決までいく。
・プロジェクトをリードできるようにする。
・利害が一致しない複数の組織との連携ができるようにする。


2004年6月現在、3年目ですので、今年の細かい研修項目は既にできていますが、来年以降は、目標だけです。

ただし、今年のうちから少なくとも来年の研修項目、方法は検討を開始しておきます。
もし、方法まで確立したら、中級者以上を対象とした、特別に設定した研修として、実際に試してみます。

大きな計画としては、このように立てます。(5年目までいったらどうするか? きっと新たな問題が発見されているでしょう。教育に、これで終りはありません。)


この間にも、新人は入ってきますが、新人たちには、補講などで、できるだけ全体研修に「参加」位はできるようにします。


1.年間計画 2.レベル別カリキュラムの作り方
3.超短期(8週間)モニター育成方法 4.カリキュラム見直しのポイント

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