【モニター教育担当者用】
1)一番大切なこと | 2)研修のあり方 | 3)カリキュラムの作り方 | 4)講師の育て方 |
2)研修のあり方 |
1)の「一番大切なこと」と重なりますが、研修は実践に役立つべきだと思います。 もちろん「モニターの一般知識」として「医療全般」の知識は必要ですが、問題は研修の深さです。 僕たちは何も、医学部の学生を育てようとか、医学部の教授を育てようとしているわけではありません。 また、「統計解析とデータマネージメント」の知識も、もちろん「ある程度」はモニターに有ったほうがいいと思います。 しかし、これまた、僕たちが研修の相手にしているのは、「統計解析担当者」でもありませんし、データマネージメント専任者でもありません。 ■大切なのは、今、目の前にいるモニターにとって必要な知識(又はスキル)と、その深さはどれ位なのかを把握することです。 例えば「鉄棒」で「逆上がり」しかできない子どもに「大車輪」を教える必要もないですし、教えようとしてもギャップが大きすぎて、本人は自信を喪失するだけでしょう。 逆に「大車輪」ができる人に「逆上がり」を教えようとしても、相手は退屈でしょう。 研修は「必要なモノ」を「必要な範囲と深さ」で提供することを一番の念頭に置いて考えましょう。 ただし、その「提供する方法」も「講義形式」だけでいいはずがありません。 研修で学んで欲しいモノに応じた「研修方式」があるはずです。 ■研修の目的 研修の目的は、知識の修得にとどまらず、行動の変革まで持っていくことにあります。 例えばGCPに関して言えば、次のようになります。 GCPを知らない ↓ 知っている ↓ 行動に移せる(自分がGCPを遵守する。また、治験責任医師等に遵守させる) ・・・・と持っていくことにあります。 このように、行動の変革まで持っていくために、どのような研修をするか?を考えるのが、この「2)研修のあり方」の目的です。 |
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1.現状把握 | ||
■全ては「現状把握」から始ります。 まずは、下記の方法を使い、自社のモニターのレベルを測定しましょう。
これらの方法を使いながら、自社のモニターの現状(強い点、弱い点)を把握し、受講生のレベルに合った研修を行います。 もちろん、全員が同一レベルではありません。それはカリキュラムの作り方で工夫する必要があります。 以下、簡単に解説します。 |
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(1)筆記試験を実施する | ||
これが最も、簡単でかつ客観的な評価がしやすい方法です。 最初に筆記試験で確認すべきは、次の2項目です。 1)GCP知識 2)SOP知識 これらが、期待通りの結果が出なかった場合(例えば平均点が50点以下だったとか)、他のこと(医学的知識等の研修)を犠牲にしてでも、最優先で研修プルグラムを考えるべきでしょう。 人間、知らないものは守れません。GCPを遵守せよ! SOP通りにやりなさい!と、何度、大声をあげても無駄です。 知らないものを、どう守れと言うのでしょうか? まずは、自社のモニターがどの程度、GCPやSOPを知っているかを把握します。 その上で、弱かった部分を研修で補強しましょう。 その他にも、教育担当者が知りたい範囲がありましたら、それらを同様に筆記試験で確認してみるといいでしょう。 例えば、一般的医学知識、カルテ用語、臨床検査項目の名前と意義・・・・・・など等。 筆記試験で確認できるのは、おもに「知識」です。 その結果、弱い知識をどのように習得させるかは、あとで述べます。 |
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(2)QCや監査からの指摘事項を調べる、(3)医薬品機構からの指摘を確認する | ||
ここであげた2つの項目は、僕たちに非常に多くのことを教えてくれます。 すなわち、モニターだけでなく、監査、QC、DMなどの知識と行動の不備、SOPの欠陥、治験実施体制の不備・・・・・・など等です。 モニターに限って言っても、GCPの知識、GCPを遵守しているか、させているかという行動、プロトコールの理解力、それを説明する力、モニタリング報告書の記載力、SDV能力・・・・・・など等。 まさに、研修すべきネタの宝庫です。 監査や機構からGCPやモニターに関連する指摘が1個もない、という会社の方は、このサイトを読む必要がありませんので、今後はビジネススキルの研修でも考えてください。 ■指摘事項を分類する 監査報告書や機構の実地調査の記録、指摘をまず読み漁ります。 その上で、問題を把握します。 把握できましたら、その問題を以下のように分類します。
例えば代表的なものは次のようなものです。 1)モニターの知識不足による指摘 ・治験責任医師が変更されているのに、治験変更届が出されていない(届出すべき事項を知らない) ・1年以上に渡る治験なのに、病院のIRBによる継続審議がされていない(GCPの知識不足) 2)モニターの行動や発想・考え方に起因するによる指摘 ・モニタリング報告書に記載すべき事項なのに、記載が無い(モニターの行動) ・医師にプロトコール逸脱が多い(医師へのプロトコール説明不足、モニタリング方法の問題) ・CRFにもらうべきコメントがポイントを外している(モニターの発想・考え方が問題) 3)SOPや体制の不備による指摘 ・重篤な未知の副作用が速やかに全医療機関、治験責任医師に連絡されていない ・必須文書が保管されていない これらのうち、研修では主に 1)と 2)に該当する指摘を対象とします。研修方法はまた、あとで。 |
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(4)実技試験(ロールプレー等)を行う、(5)研修中に質疑応答を行う | ||
この2つの方法で確認できることも、結構あります。 まず、医師等とのコミュニケーション能力、他の人への説得力、GCP・SOP知識とそれを実践できる能力。 さらに、大勢の人がいるところでも、いかんなく、自分の意見を言えるかどうか。(←結構、重要!) 自分に対する「自信」をどれだけ持っているか。(←これまた、結構、重要!) ・・・・・・など等です。 |
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(6)モニター会議に出席する、(7)モニターと雑談する | ||
ここでは、主にモニター全体のレベルや、今、抱えている問題点を探ることができます。 会議の場で教育担当者が発言することにより、OJTにも成り得ます。 また、監査と臨床部門との会議が有るようでしたら、そちらにも出席しましょう。 これまた、問題把握とOJTが可能です。 会議に出て、問題を抱えて困っているようでしたら、問題点を解決できる研修も考えてみましょう。 例えば、会議を見ていて・・・・・・ ・どーもリーダーシップが不足しているな〜〜とか ・問題解決力が無いぞ、とか、 ・そもそも、会議のやり方がまずいんじゃないの? ・・・・・・なんていうのもあると思います。 |
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■大切なのは方法論か? 精神論か? | ||
よく、「モニターのありかた」とか「目指すべきモニター像」という講義があります。(無い?) その手の講義で多いのが「かくあるべし」という精神論です。(中には武士道や伝記を読まされたりします。げ〜〜) また、モニターに限らず、会社全体としても「意識改革だ!」というような掛け声をよく聞きます。(聞かない?) 僕はいつも、意識改革? 行動改革? どっちが大切? と考えてしまいます。 極端な話し、意識なんて変わらなくてもいいから、行動さえ変わってくれればいいや、なんて思ったりもします。 まぁ、卵が先か、鶏が先か、という感じでもありますが、できたらバランスよくやっていきたいとは思います。 僕が、今の会社に入ったときは、臨床担当部門の掛け声は「自己完結型モニターを目指す!」というキャッチフレーズでしたが、で? どうすんの? 「自己完結型」って、具体的に言うと、どんなの? という提示が全然ありませんでした。 研修というと、どこかの外部研修の報告会とか、自分がやっている治験の説明でした。 僕が入り、GCPの試験を行ったところ、平均点は60点くらいだったかな。 一番、まずいと思ったのは、GCPや薬事法をほとんど何も知らないモニターがいたことです。 こういう状態で、どうやって「自己完結型モニター」(なんだか正体不明ですが)になるんだ? と思いました。 臨床担当部門というより、「広告代理店」と「禅寺」を合わせたような部署で、「かっこいい言葉」と「精神論」だけが溢れていました。 精神論だけで治験は進みませんし、方法論だけでも治験の倫理観を教えることはできません。 ときどきは、自社の研修はどちらが多いか、考えてみるのもいいと思います。 ■モニター研修では、まず、ボトムアップを目指す どんなに優秀なモニターが沢山いようと、一人のGCPを知らないモニターがいて、重大なGCP違反をしたら、場合によっては、その治験全体がパー、水の泡、水泡に帰す、です。 GCPや薬事法を知らないモニターを絶滅(知識を植えるという意味ね)させることから、研修を始めましょう! |
研修方法の実際 |
1.講義形式&筆記試験 | 2.模擬研修 |
3.ロールプレー | 4.事例検討(ケーススタディ) |
5.e-ラーニングと集合研修の違い |
【モニター教育担当者用】
1)一番大切なこと | 2)研修のあり方 | 3)カリキュラムの作り方 | 4)講師の育て方 |