【モニター教育担当者用】

1)一番大切なこと 2)研修のあり方 3)カリキュラムの作り方 4)講師の育て方


2)研修のあり方


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4.事例検討(ケーススタディ)

「事例検討」は最も注意を要する研修だと思います。
何故なら、受講生からも人気が高いし、講師側もやりやすい。しかも、事例を検討するのですから、何かしら「研修を受けた」、「研修を行った」と、実感しやすいからです。
しかし、ここに罠が潜んでいます。
果たして、数時間を使ってやっただけの「効果」があるか、という点で疑問が残るのが、この「事例検討」です。

もちろん、周到に準備され、それなりのレベルのモニターの人たちが何割かいる、という条件が揃えば、こんどは素晴らしい研修にもなりえます。

ここが難しいところです。

僕が、今の会社に入って、一番最初に見学させてもらった研修が「事例検討」会的な研修でした。
しばらく、僕は黙っておとなしく見学していましたが、そのうち、つい口をはさんでしまいました。
それは、あまりにもGCPからかけ離れそうな検討結果が出そうだったからです。
そして、それは、如実にモニターのGCP知識レベルを表していました。

彼らが検討していたことは、GCPの条文に「○○○すること」とひと言書いてあることで、その条文を知っていれば、数秒で済む話を、延々と「するべきか、いや、しなくていいだろう」とやっていたのでした。

そんな時間が有ったら、まずはGCPを覚えるところから始めるべきだと思い、次の研修から担当を任された僕は、その後、2年間、事例検討を封印しました。
その代わりにやったのが、GCPの条文とSOPを彼らに徹底的に覚えさせることでした。

今、2年がたち、ようやく、モニターのレベルも上がり、GCPの「常識」は身に着けてきました。
ここに来て、初めて「事例検討」ができる準備ができあがりました。


■勘違いされると困るのですが、事例検討は、研修としては非常に有効ですが、それをやっていい時期なのか、どうかが問題だということです。

多忙なモニターの数時間を縛り付けて行う研修です。重要なことから、最も必要な事柄から研修に組み込んでいくことを忘れないでください。

あなたの会社のモニターのみなさんが、GCPやSOPの知識が十分にあるのなら、事例検討は有意義です。
しかし、GCPやSOPの知識が十分でなく、それらを身につけさせるために事例検討を研修方法として選択するのは時間効果を考えると、あまり得策ではない、ということです。

以上を踏まえて、事例検討の方法を記載します。

■事例検討の研修方法

事例検討という研修方法を用いる意義は、次の5点です。
(ここでは、提示された事例を5,6人程度のグループに分かれ、問題を考えるという前提です)

1)基本的知識を駆使して、応用問題を解く力がつく

2)何人かのメンバーがいるので、いろんな視点から問題を考えることができる。また、そのような見方もできるのか、ということを他の参加者に気づいてもらう。

3)チームで問題を解決するための方法が学べる。

4)知識、ノウハウの共有化が図れる。


5)メンバーが相互に刺激し合うことにより、相乗効果を生み、予想以上に新しく、良いものが生まれる。(三人よれば文殊の知恵効果)


これらの意義を満たすために、最も重要な役割をするのが、事例検討するグループのリーダー的存在です。
いわゆるファシリテーターですね。
このファシリテーターの良し悪しで、事例検討の研修効果が数十倍違ってきます。


■ファシリテーターの重要性

もし、50人の受講生を5人ずつ10グループに分けて事例検討する場合、各グループに1人はファシリテーター的な役割を行える人を配置する必要があります。

実は、僕が事例検討を2年間封印してきたもう一つの理由がここにあります。
当時、50人ほどのモニターの中に、ファシリテートできる人が、2,3人位しかいなかったのが、その理由の一つです。
今では、少なくとも10人位はいますので、十分にやっていけます。

ファシリテーターは、グループの意見交換や、メンバーの発言を促し、また、メンバーの意識を常に問題の焦点にあてさせ、メンバーの意気を高揚させる役割をつとめます。

自分だけが発言するタイプではなく、他の人の意見をうまく吸い取り、言外に言わんとしていることまでを含めて、意見の本質をメンバーに提示し、緊張感を維持させていきます。

提示された事例をメンバーに360度から検討させるような質問をします。
また、意見の食い違いが出てきても、それをうまく、生産的な方向に持っていく必要があります。

これらの能力を持ち、自分よりも年齢や役職が上の人がいても、いかんなくスキルを発揮できる人が必要です。

このような人を、各グループに配置するよう、メンバー構成は事前に決めておきましょう。


■検討する事例

検討する事例には、あまり特殊な事例を持ってこないようにします。
10年に1回有るか無いかというような事例はやめましょうね^^。

講師側としても、ある程度の正解が提示できる事例がいいと思います。
理想は、講師側の正解よりも、はるかに良い結果がでることです。それでこそ、事例検討の意義があります。

一見、簡単に答えが出そうだけど、別の視点で考えると、もっと深い意味があるぞ、という事例を検討させます。
そのような事例をどこから見つけてくるか?
監査指摘報告書、機構からの指摘、JSQAの事例集、いろんなところから出ているQ&A集・・・・・・など等から探してきます。
ただ、それをそのまま提示しても、即、いい事例になることはありませんので、講師のほうで適切な事例に料理しなおします。

ここが、結構、手間隙がかかりますし、工夫のいるところです。
もし、可能なら、頭の切れる人、そのような事例検討を繰り返しやっていて訓練されている人などに前もって見てもらい、意見を貰うといいでしょう。



■「考えさせること自体が目的」な事例検討ということも想定できます。

その場合は、実は、検討終了後のほうが、重要な時間になります。
講師としては、本当に、あらゆる角度からメンバーが検討したかどうかが分かる質問をしないといけません。
また、そのような質問が他のグループから出てくるようでしたら、最高です。


■結論

ただ、ある事例を2時間かけて、検討しました、その間にグループとしての答えがでました、ハイ、おしまい。
・・・・・・というような事例検討にならないようにしてください。

検討した事例にもよりますが、2時間かけて出した結論を、今後、どのようにするのか、どうモニター活動に結びつけるのか、そこのところをハッキリさせないと、メンバーの間に不完全燃焼が生じ、次回からの事例検討に響きます。

そこまで考えて、事例検討のプログラムを作っておきましょう。
■事例検討の研修方法(新入社員用)

新入社員に「治験における倫理とは?」「人道的とはどういうことか?」を検討するための参考資料を作ってみました。

ご参考にどうぞ。⇒「新入社員用、ケーススタディ資料


研修方法の実際

1.講義形式&筆記試験 2.模擬研修
3.ロールプレー 4.事例検討(ケーススタディ)
5.e-ラーニングと集合研修の違い  


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