【モニター教育担当者用】

1)一番大切なこと 2)研修のあり方 3)カリキュラムの作り方 4)講師の育て方


2)研修のあり方


ホームに戻る

2.模擬研修

この『模擬研修』という手法は、あらゆる分野で応用可能です。
ここでは、ロールプレーは別の章立てをしていますが、ロールプレーも模擬研修の一種だと思って頂いても構いません。


■模擬研修の定義

通常の講義や筆記試験に対して、模擬研修とは、ある知識を実際に体を動かして体験してもらったり、実際のモニタリングで行うことを、研修内で体験させる研修と、ここでは定義します。

例えば・・・・

・重篤な有害事象発生時の行動(SOPの様式を書いたり、医師(役の人)を訪問する)

・模擬のカルテとCRFを使って、模擬SDVを行う

・医療機関、治験責任医師の調査、選定から契約までを実際のSOP書式と治験事務局(役の人)への対応を行う

・・・・・・など等です。

ここでは、上の3つの例のやり方をご紹介します。
■重篤な有害事象発生時の行動

まず、モニターが出張から帰社したら、次のようなメモが机に乗っていたというところから研修はスタートします。

1.机の上のメモ「K大学病院から被験者XXXが緊急入院したので、連絡して欲しい」を受講生に配布
    ↓

2.すぐにやるべきことを列記させます。(例:電話をかけ、患者さんの様態を聞く、医師にアポをとる、「重篤な有害事象報告書(第一報用)」を記載する、安全性情報担当部署等の関係者に連絡する・・・など。SOPで規定されていること)
    ↓

3.何人かの受講生を指名し、答えさせます。必要に応じて講師が補足、注意事項を解説します。
    ↓

4.電話で入手できた情報を「重篤な有害事象報告書(第一報用)」(各社のSOPに規定されているものなら、書式の名前は気にしないでください)に記載させる
    ↓

5.「重篤な有害事象報告書(第一報用)」の模範例を提示し、解説する
    ↓

6.モニターが医師に会い、より詳細な情報を入手したと仮定します。その時に入手した情報をこちらでメモ書きにして、受講生に配布します。 また、この時に医師に頼みたいことがあるなら、それを書いてもらいます。(例:医療機関の長への報告書作成依頼など)
    ↓

▼もし、可能なら、ここでロールプレーとして、医師役を配置し、実際にモニターが医師に質問する、という設定のほうが実践的です。
    ↓

7.医師より入手した情報を「重篤な有害事象報告書(詳細用)」に記載させる。その他にもやるべきことを記載させる。
    ↓

8.「重篤な有害事象報告書(詳細用)」の模範例を提示し、解説する
    ↓

9.この時点までで入手した情報から、今回発生した「重篤な有害事象」の原因をモニターに考えさせます。
今回の設定としては、治験に参加していた患者さんが、風邪をひき近医で薬を処方されたとしておきます。 その薬を飲んで数時間後にショック症状で入院したという状況です。
    ↓

ここで、「ショック症状とは?」 という問題を出してもいいでしょう。
    ↓

10.受講生を指名して、今回の有害事象の原因、治験薬との因果関係をどう思うか、答えてもらう
    ↓

11.正解を解説する。 実は、風邪で処方された中に抗生剤があり、それによる「アナフィラキシーショック」だったこと。そのため、因果関係は無し、であることを解説する。


・・・・・・というような感じです。想像できましたでしょうか?

今回は「重篤な有害事象」の発生という事例でしたが、いろんな事例に応用できますので、試してみてください。

■模擬のカルテとCRFを使って、模擬SDVを行う

まず、模擬カルテをでっちあげます(笑)。
ゼロから作るのは無理だよ〜〜〜というお困りの貴方! 大丈夫です。
実はこんな本が市販されています。↓ネットでも購入可

医療事務症例別レセプト作成問題集〈1〉外来編〈2002~2003〉
DAI‐X総合研究所医療事務試験対策プロジェクト (著)

ここに簡単なカルテが書かれていますので、そこへ、チョチョイと自分でワードで書いた有害事象や併用薬を切り貼りしコピーすれば、模擬カルテのできあがり〜〜!^^
また、上の本が上手い具合に「高血圧の場合」とか「肝硬変」の場合といろんなバージョンが書いてありますので、それらを半年くらいかけて使います。

次にCRFの必要な個所(例えば、「有害事象」記載覧のページや「併用薬」記載覧のページ)に、自分でその模擬カルテから読み取れる情報を記載します。
ただし、ここで、わざと日付を間違えたり、不適切な医師のコメントを記載したり、記載モレを作っておきます。

この二つを使って、模擬SDVをしてもらい、「気になる点、医師に確認すべき点」を列挙させます。

事前にSDVのポイントをレクチャーしてからやると、効果的です。

■「調査、選定から契約」までの模擬研修

社内で実際に走っているプロトコルをモディファイし、模擬プロトコールを作ります。
それに従って、施設の選定から契約までの一連の作業を以下のように研修します。(なお、今回は二人一組のチームでやることとし、タイムレースというゲーム要素も加えました。)

1.SOPの「施設の調査用紙」と「治験責任医師の調査用紙」に、あらかじめ必要事項を記入し、受講生に配る。この時、わざとおかしな点、調査不足を作っておく
     ↓

2.受講生に、おかしな点、さらに調査すべき点を列挙させ講師のところへ持ってきてもらう
     ↓

3.解答をチェックし、正解なら、次の問題用紙(SOPの「治験審査依頼書」)を渡し、作成するよう指示する。間違っているチームはやり直しを指示する。
     ↓

4.SOPの「治験審査依頼書」に必要事項を書いてもらったら、できたチームから治験事務局役のところへ持ってきてもらう
     ↓

5.依頼書に不備が無いかチェックし、こちらから口頭試問する。この質問はなんでもよい。例えば、GCPのことで、IRB構成メンバーの条件は?など。
依頼書に不備が有ったり、口頭試問間違えたり、制限時間内に答えられない場合は出直しを指示する。
     ↓

6.正解したチームには次の問題用紙(契約書のブランク用紙と治験審査結果通知書等)を渡す。実はこの通知書や契約書にはミスを入れて、事前に作成しておく

▼たとえば審査結果通知書に記載されているIRBメンバーの非専門家に「薬剤部長」を書いておく。契約書に「補償」の項が無いなど。

チームにはこの通知書等をチェックしたら、契約書を作成して、治験事務局役のところへ持ってきてもらうよう指示する。
     ↓

7.通知書にミスが無かったか、質問する。答えられなかったり、間違えていたら、その時点でやり直しを指示する。
通知書のミスを正解したチームに契約書にミスが無かったか、同じ様に質問し、以下同様。
     ↓

8.正解したチームの契約書記載事項を確認し、最後に口頭試問を行い、間違ったら出直してもらう。
正解したチームは、これで終了
     ↓

9.最も早く終了したチームを全員に紹介し、称賛する。あるいは記念品を贈呈する。



・・・・・・とまぁ、こんな感じでやります。
この手法も、いろんな研修に応用できると思います。

■模擬研修の意義

このような模擬研修は、知識を行動に移す訓練になります。
また、タイムレースにしたり、遊びの要素を加えると、「辛い、つまらない研修」が「楽しい研修」になります

どうせ、知識を身につけるなら、楽しいほうがいいと思いませんか?それに「楽しい研修」は自然に研修参加率がアップします

また、SOPを読むだけの研修より、その場で、どんどんSOPを読まざるを得ない状況を設定することにより、SOPやGCPの知識が身に成り、より定着します。


■ただし、このような模擬研修を半年以上続けることが重要です。

続けることにより、分からないことが有ったらSOPを読んだり、契約書や審査通知書の自己チェックが「習慣化」します。

この「習慣化」が大切です

「習慣化」というのは、「考えなくても、自然に体が動く」というレベルです。

モニターの研修はモニターをこのレベルまで持っていくことが最大の目的です。


研修方法の実際

1.講義形式&筆記試験 2.模擬研修
3.ロールプレー 4.事例検討(ケーススタディ)
5.e-ラーニングと集合研修の違い  


ホームに戻る

【モニター教育担当者用】

1)一番大切なこと 2)研修のあり方 3)カリキュラムの作り方 4)講師の育て方
inserted by FC2 system