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 「GCPガイダンス」と「治験119」の合体:GCPの注意事項、GCPのグレーゾーン(1)
治験調整医師が症例検討会などに出席して、実施医療機関から回収された症例報告書を見ても差し支えないでしょうか。


製薬協見解

治験調整医師とは、多施設共同治験の際に、「当該実施医療機関における当該治験実施計画書の解釈その他の治験の細目について調整する業務」を治験依頼者から委嘱される医師もしくは歯科医師と規定されています(GCP第2条第16項)。
「調整業務」としては、GCP第18条ガイダンス2において「例えば、治験実施計画書の内容の細目についての多施設間の調整や治験中に生じた治験実施計画書の解釈上の疑義の調整等、多施設共同治験における治験実施医療機関の調整に係る業務である」と例示されており、治験調整医師として選定できる範囲としては「治験責任医師の中から選定されることが考えられるが、必ずしも治験責任医師に限らない」(GCP第2条ガイダンス6、「治験協力者等も治験調整委員会を構成する委員となることは可能である」(GCP第2条ガイダンス7)となっています。
以上のように、治験調整医師は医療機関側の立場であって、症例検討や採否決定という治験依頼者が実施すべき業務を行う立場ではありません。今回のお問い合わせの中では、治験調整医師が症例検討会に出席され、治験実施医療機関から収集された症例報告書を見る目的が明確でありませんので、その目的を明らかにされてはいかがでしょうか。
質問番号:2007-28 被験者が記入したQOL質問票の原本の保存

あるグローバル治験で、患者さんにQOLに関するアンケートをとるのですが、患者さんの記入した原本を治験依頼者が入手し、その写しを医療機関で保存する手順になっています。これに某医療機関から、このようなデータの元となるものは医療機関が保存するものであり(必須文書通知 40.原資料の概要に「等」がついているが保存場所は医療機関のみ)、原本を治験依頼者に提出するのはおかしいのではないかと、意見をいただきました。
治験依頼者が、このように被験者が記入したアンケート等の原本を入手することはGCP(あるいは医療法?)上において問題となりますでしょうか?


製薬協見解

GCP第2条ガイダンス3では、原資料の定義として、「第10項の"原資料"とは、被験者に係る診療録、検査ノート、治験薬等の投与記録等の治験の事実経過の再現と評価に必要な記録を指す。具体的には、症例報告書等の元となる文書、データ及び記録(例:病院記録、診療録、検査ノート、メモ、被験者の日記又は評価用チェックリスト、投与記録、自動計器の記録データ、正確な複写であることが検証によって保証された複写物又は転写物、マイクロフィッシュ、写真のネガ、マイクロフィルム又は磁気媒体、エックス線写真、被験者ファイル及び治験に関与する薬剤部門、検査室、医療技術部門に保存されている記録等)をいうものである」と規定されています。

したがいまして、「QOLに関するアンケート」が治療を行う上で医師の判断に必要となり、かつ、症例報告書への記載の元データとなるものであれば、当然のことながら実施医療機関でその原本が保管されるべきです。
しかし、ご質問の内容からは治験依頼者のみがそのデータの評価を行うためのものと考えられますので、治験依頼者、実施医療機関がそれぞれ原本と写しを保存する旨が予め治験実施計画書等で明記され、事前に実施医療機関と合意されていれば、治験依頼者が原本を保存することで問題ないともの考えます。

ただし、被験者を特定できるような情報をマスキングする等、被験者のプライバシーの保護に配慮した上で、治験依頼者が原本を入手することは言うまでもありません。
 
質問番号:2009-31 有害事象の因果関係判定の時期

現在担当している治験にて有害事象が発生しました。

事象としては腹痛や便秘症などといったもので、これらの事象は治験薬投与後に発生し、すでに消失し治験薬も中止することなく現在も継続して投与中です。

そこで、医師へ治験薬との因果関係をうかがったところ、「一旦は症状がおさまってはいるものの、治験薬を投与している以上、またいつ発生するかはわからない。そのため現時点で因果関係を判定する事はできない。判定は全期間を通してどうであったのか、また、全国的には同事象がどの程度の頻度で発生しているのか、それらを総合的にみてからでないと判断はできない。」との見解を得ました。

確かに、医師の見解も納得はできます。
今後同様な事象が頻繁に発生すれば治験薬との因果関係は否定できないと考えます。
しかし、この考え方でいくと、すべての有害事象が治験薬との因果関係は否定できないという考え方になってしまいます。

治験依頼者側としても、今後どのような有害事象が起こるかは別にして、ひとつひとつの事象に対して現時点での見解が必要なのだと考えます。
有害事象の全てが因果関係なしとはいえないになってしまうと、いくら優れた薬剤であったとしても開発中止になる可能性も否定できません。

医師も最終的には判断いただけるのかとは思いますが、長期試験であるため、そこまで判定を先延ばしにするのはいかがなものかと考えます。
医師にこれらの旨を説明しましたが納得いただけませんでした。
有害事象を判定する時期に何か厳密な規定はあるのでしょうか。
その事象が消失した時なのか、全体を通してなのか、どちらも理解できるような気がいたしました。


製薬協見解

GCP第2条ガイダンス15 (10)では、副作用とは「当該治験薬と有害事象との間の因果関係について、少なくとも合理的な可能性があり、因果関係を否定できない反応を指す。因果関係の判定を行う際には、投与中止後の消失、投与再開後の再発、既に当該被験薬又は類薬において因果関係が確立、交絡するリスク因子がない、曝露量・曝露期間との整合性がある、正確な既往歴の裏付けにより被験薬の関与がほぼ間違いなく説明可能、併用治療が原因である合理的な可能性がみられない等を参考にすることができる。」と定義されております。

発生した有害事象の因果関係の判定を行う時期については、GCP上特に取り決めはありません。
有害事象の内容や経緯、対象疾患、治験薬の特性や投与からの時間的経過、該当する被験者の病歴や併用薬剤などの情報をもとに医師が判断します。
しかし、治験実施計画書に規定がある場合は、それに従って治験依頼者に報告していただく必要があります。
なお、後に得られた情報により因果関係の判定を適切な理由の下で変更していただくことも問題ありません。
質問番号:2009-33 治験依頼者提供する画像の保存媒体

これまで、当院では画像コピーは、主にフィルムと一部CD-Rで行っておりました。
今回、治験依頼者から提供できるのはCD-RWであり、他施設でもCD-RWでお願いしていると言われました。

当院としては、CD-Rですと情報の追加・修正ができないためデータが第3者により手を加えられないので、CD-RWでは問題であると考えております。
しかし、他施設でも実施しているように、CD-RWが一般的であれば、特に国際共同治験ではフレキシブルなそしてスピーディな対応が望めないので、CD-RWでも良いと判断しなければ準備が間に合わない状況です。
本当にCD-RWで進めている治験依頼者の方針は間違っていないのでしょうか。教えて頂ければ幸いです。
国際共同治験はスピードを要求するのに、対応はフレキシブルでなくスピーディでもありません。よろしくお願いします。


製薬協見解

貴院からの画像コピーをCD-RWにて治験依頼者へ提供しても差し支えないと思われます。
GCP第2条第10項に定義してありますように原資料とは「被験者に対する治験薬又は製造販売後臨床試験薬の投与及び診療により得られたデータその他の記録」ですので、実施医療機関で保存される画像データが原資料であり、治験依頼者に提供されるものは、あくまでもその写しと考えられます。

また、GCP第21条第1項ガイダンス1に「治験データ等が正確かつ完全で原資料等の治験関連記録に照らして検証できることを確認するため、モニタリング゙を実施すること」と定められていますので、提供したコピーについての追加・修正が行われたとしても治験依頼者の責めに因ると考えられます。
CD-RでなくCD-RWを指定されている理由等、その他のご不明な点がございましたら治験依頼者にお問い合わせください。
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