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 「GCPガイダンス」と「治験119」の合体:GCPの注意事項、GCPのグレーゾーン(5)
つづき
(治験の契約)

第13条 治験の依頼をしようとする者及び実施医療機関(前条の規定により業務の全部又は一部を委託する場合にあっては、治験の依頼をしようとする者、受託者及び実施医療機関)は、次に掲げる事項について記載した文書により治験の契約を締結しなければならない。
  ↓関連
質問番号:2005-14 治験責任医師の異動/交代(その3)

治験責任医師の異動(退職)後の対応に関する質問です。
すでに、2004年12月に類似質問の回答がありますが、さらに詳しく教えていただきたいと思います。
質問内容:治験責任医師に当該治験の専門外の医師がなっても良いのでしょうか?
質問の背景:
今回、分担医師がいない治験において、治験責任医師が3月末で病院を退職予定となりました。
しかし、その診療科の後任の医師が来る予定があるのかどうかは現段階では未定です。
後任が4月1日に着任しない場合は、その診療科の医師は事実上空席状態となり、治験責任医師となる医師の候補も不在となってしまいます。
治験については、被験者はすべて組み入れを終了しており、症例報告書記載を残すだけの状況です。
CRFを3月中に完成できるよう働きかけていくことは十分理解していますが、実際の治験期間は19年度 も続いており、SDVや各種問い合わせに対応するためにも、やはり治験責任医師の登録は必須だと 考えます。
この場合、後任の医師が来るまでの間、治験の専門領域外の医師を治験責任医師に登録することは可能でしょうか。
ただし、場合によっては後任の専門領域の医師が来るまでに専門外の医師が治験責任医師のまま治験が終了することもありえますが、それでも問題はないでしょうか。


製薬協見解

ご存知の通り、治験責任医師の変更は、GCP第6条(医療機関等の選定)、第32条(治験審査委員会の責務)、第35条(実施医療機関の要件)、第42条(治験責任医師の要件)等より、まずは治験依頼者が責任医師の選定を行い、それが適格と判断されればIRBでの審議を依頼し、承認されれば新たな治験責任医師による治験実施が可能となります。

治験分担医師がいらっしゃれば、治験の内容を熟知されていますので、後任として適任と考えます。しかし、治験分担医師がいらっしゃらない場合、今回、計画された治験薬の使用、検査・観察が終了し、症例報告書の記載のみが治験責任医師としての責務が残っているという由ですので、診療科が異なっていても、その治験の領域及び治験実施計画書の内容がある程度理解できる医師であれば、次善の策としてそのような方を治験責任医師として、IRBの承認を受けることは可能と考えます。

ただし、前任の治験責任医師への問い合わせや確認などの連絡体制について、後任となるべき治験責任医師と事前に十分協議し、必要な情報が前任の治験責任医師から提供されるよう事前に対策を講じておく必要があると考えます。
しかし、いずれの場合においても問題がないとは言い切れませんので、やはり可能な限り現在の治験責任医師の退職前に症例報告書の回収まで行うことが最善と考えます。

また、治験依頼者としては治験責任医師の候補の医師について事前調査、契約書改訂等の作業をする必要がありますので、早めに治験依頼者にご相談されることをお勧めします。
なお、何らかの理由により、治験責任医師が責務を果たせなくなった場合に備えて、予め、1名の治験分担医師にそのような場合に治験責任医師となることをIRBで承認、契約書に記載することも可能と考えます。米国では、regulationにはありませんが、principal investigatorの他にその代行を行うco-principal investigatorを置くことが可能になっています。
質問番号:2007-06 治験実施中からCROが関与する場合の治験契約

現在医療機関と依頼者との2社契約を行い治験を実施していますが、途中で依頼者がCROに業務を委託することとなりました。
これからは実質3社で治験を実施していくのですが、契約はどのようにすればよいのでしょうか。現在の2社契約に覚書をつけて3社とするのか、2社契約を解消させて、新たに3社契約を締結させればよいのでしょうか。


製薬協見解

治験依頼者が業務の一部を委託する場合であって、受託者たる開発業務受託機関(CRO)が実施医療機関において業務を行うときには、GCP第13条第1項に基づく治験の契約は、治験依頼者、実施医療機関及び開発業務受託機関(CRO)の間で契約を文書により締結しなければなりません。

GCP第13条第1項ガイダンス2に「治験依頼者による治験の準備及び管理に関する業務、実施医療機関における治験の実施に関する業務が円滑に実施できる場合にあっては、治験を依頼しようとする者、開発業務受託機関及び実施医療機関の三者合意の上、開発業務受託機関及び実施医療機関の二者の契約としても差し支えない。」とされています。治験途中からCROに業務が委託される場合においても、契約形態についてGCP上特に規定はなく、以下のいずれでも問題はありません。

1) 新たに三者契約を結ぶ
2) 二者契約を三者契約とする旨の覚書で対応する
3) 治験依頼者とCROとの間の契約とともに二者契約にCRO委託を追加する旨の覚書で対応する
4) 契約者を治験依頼者からCROに変更する旨の覚書を三者で結び、それ以降の契約事項の変更はCROと実施医療機関の二者覚書で対応する

覚書で対応する場合は、治験依頼者がCROに委託した業務の範囲を明記するとともに、原契約中の「治験依頼者(例:乙)」の記載を「治験依頼者(乙)及び開発業務受託機関(例:丙)」に読み替える必要があります。この際、原契約の条項内容によっては、「乙」が「乙及び丙」になるもの、「乙」そのままのものがありますので注意が必要です。
また、元のニ者契約とは別に新たにCROを加えた三者契約を締結する場合においても、注意すべき事項があります。それまでの経緯を明確にするため、前者契約書を保存しておく必要があります。また、二者契約と三者契約との間に契約期間の空白が生じさせないための配慮も必要です。
質問番号:2007-08 関連医療機関2施設で一つの治験を実施する場合の契約

「外来専門のクリニック」を併設している医療機関とどのように契約を結ぶべきか、ご意見をいただきたくご連絡差し上げました。
ある医療機関では、外来と入院をそれぞれ別名の医療機関(仮に、A病院とBクリニックとします)として経営しています。外来で診察に来る患者様は、まずBクリニックで診察を受けます(Bクリニックは外来専門のクリニックで、A病院と併設されています)。入院が必要な場合は、A病院へと転院していただき、以降はA病院にて治療を受けます。外来の患者様は、初めからA病院に行く事はなく、まずBクリニックを経由してからA病院へと転院される流れとなっています。A病院とBクリニックは、電子カルテを共有しており、双方からカルテや検査結果などを閲覧できるようになっています。
そこで、「入院の治験」をこの医療機関で行いたい場合、
●A病院と治験依頼者の二者契約
●A病院とBクリニックと治験依頼者の三者契約
のいずれの形態が適当なのでしょうか?
Bクリニックでは、以下の業務を行います。
●対象疾患かどうかを診断するための検査
●対象疾患かどうかの診断
●適格性確認(適格性のある患者様にのみ、治験の説明を行うため)
●治験概要の説明(同意説明文書は用いず、簡単な口頭による紹介の
み)

Bクリニックで紹介を受けた患者様は、A病院へ転院され改めて、「同意説明」「同意取得」という流れで治験に組み入れられます。
Bクリニックでは、同意説明・取得は行っていませんが、適格性確認のための検査データはBクリニックに残されており、モニターがSDVを行う際は、Bクリニックの電子カルテを参照することとなります。
このため、二者契約ではなく三者契約とし、Bクリニックも契約上治験に参加していることを明記すべきでしょうか?しかし、その一方で、治験薬の搬入はA病院のみであり、実質的な治験の開始(同意取得)もA病院で行われます。もし三者契約とすると、スクリーニングのみを担うBクリニックが治験実施医療機関として治験届に記載されなければならず、施設選定や安全性報告等の業務が二つの医療機関に対して二重に発生してしまいます。
上記のようなケースは、いくつかの医療機関で報告されております。GCP上、クリティカルな問題とはならないかもしれませんが、ご意見をいただければと存じます。


製薬協見解


A病院とBクリニック間での検査機器、測定方法等の違いが、治験実施計画書に抵触しないとの前提で、ご質問にお答えします。
同意取得から治験薬の投与をA病院で行うことから、A病院が治験実施医療機関となります。しかし、Bクリニックも当該治験に関与していますので、Bクリニックに来られた患者さんがA病院で治験に参加することの妥当性について治験審査委員会で審査されるとともに、以下のような対応を行う必要があると考えられます。

@Bクリニックで実施する検査が、日常診療の範囲内として行うことができない検査を実施する場合には、当該検査は治験のための行為であり、Bクリニックでの検査実施前に文書による同意を取得する必要があります(GCP第50条)。Bクリニックでも治験行為を実施することになりますので、治験実施医療機関として治験届への記載、治験依頼者との契約が必要となります。

ABクリニックで実施する検査が、日常診療の範囲内として行われる検査である場合には、Bクリニックは治験実施医療機関とはなりません。しかし、そのような場合でも、以下の点については留意/対応しておく必要があります。

●Bクリニックで実施された検査の結果が治験データとして用いられること、及び治験依頼者等が当該Bクリニックのデータを直接閲覧することが説明文書に記載されていること。
●被験者の適格性確認は、(A病院の)治験責任医師及び治験分担医師の責任であること(GCP第44条)。
●Bクリニックで実施された検査に関する原資料が、GCP第41条第2項で定める期間保存されること。
●電子カルテ情報がA病院とBクリニックで共有されており、Bクリニックでの検査結果は、A病院と治験依頼者の二者契約では直接閲覧を行うことはできないため、Bクリニックも含めた三者契約を締結すること。

契約については、直接閲覧以外にも、原資料の保存、守秘義務、治験依頼者のモニタリング・監査、治験審査委員会及び規制当局の調査を受け入れる旨、健康被害補償(侵襲的検査を実施する場合)、費用の負担などに関する項目を盛り込むべきと考えられます。
なお、以上のような煩雑な手順等による被験者をはじめとした関係者の負担を最小限にするためにも、最初の検査からA病院で実施することを再度検討されてはいかがでしょうか。
 質問番号:2007-16 契約期間終了後の症例報告書、治験薬回収

契約締結日:昨年12月、契約期間終了日:2007年10月31日の治験があったのですが、
@CRF、治験薬の回収が契約期間内に終わらないのは問題ないか。
ACRFが固定しないため、同じく、終了報告を契約期間内に提出できない(有効性・安全性がFIXされないため)のは問題ないか。
B2007年11月のIRBで継続審議をかけたいという依頼が治験依頼者よりあったが、契約期間外に審議をかけるのは問題ないか。
を教えていただけますでしょうか。
期間延長をすればいいかと思いますが、依頼者の見解は、契約=被験者対応に関することという意識があるようです。
ちなみにその治験のプロトコールには、治験期間は治験実施計画書に規定された来院の最終日とするといった規定がございます。


製薬協見解

GCP第13条第1項第7号において、治験の契約書に記載すべき事項は「治験の期間」と規定されています。治験契約書に記載されている治験期間の解釈について、実施医療機関と治験依頼者間で共通認識しておくことが大切です。通常、治験期間は、治験実施計画書で規定されています投与及び観察が終了する期間と解釈され、治験契約書に記載される治験期間と同じものと考えられます。

この場合、CRFの回収や未使用治験薬の回収についても治験期間内に終えることが望ましいのですが、最終被験者の参加時期によっては、これらの回収は、契約書に記載されている治験期間を超えるケースもあり得るかと思われます。
また、治験責任医師が作成する終了報告書及び実施医療機関の長からの終了通知書も上記のようなケースに対しては、治験期間以降に対応せざるを得ないと考えられます。
また、治験期間終了後の継続手続きですが、治験依頼者としては治験責任医師らの終了報告がなされないために、収集した副作用情報に対する継続審査を依頼しようとしているのではないかと推測します。
この場合も、治験期間終了後に審査されることには問題はありませんが、治験薬投与及び観察が既に終了しているのであれば、治験審査委員会で安全性情報を審査する必要はないと思われます。ただし、治験責任医師から終了報告書を治験終了後速やかに提出してもらうことが重要と思われます。
質問番号:2007-31 関連医療機関2施設で一つの治験を実施する場合の契約(その2)

治験119質問・見解集「質問番号2007-08」への製薬協見解について質問します。
治験の対象被験者としての適格性について診断及び検査を実施する場合、A病院又はBクリニックで実施したとしても被験者の同意取得後に実施することが当然の処置で、この点についての考え方は製薬協の回答内容と同様な処理が必要と考えます。私が疑問に思った事項は以下の点です。

質問1)
製薬協見解の@とAの回答内容で、@は「Bクリニックで実施する検査が、日常診療の範囲内として行うことができない検査を実施する場合〜」とA「Bクリニックで実施する検査が、日常診療の範囲内として行われる検査である場合〜」に区分されていますが、「日常診療の範囲内・外」で区分した理由は何か?

質問2)
製薬協見解の@の回答内容で、Bクリニックも治験届出の対象施設として取り扱う場合、治験依頼者が処理すべき事項についてお教え下さい。
Bクリニックを治験届出の対象施設とした場合、Bクリニックの処理は通常の治験依頼施設と同様全ての治験手続き処理(治験開始前、中、後の手続き)が必要か?即ち、
ア.Bクリニックでも治験責任医師の設置が必要か?
イ.Bクリニックを対象とした施設IRBの審議が必要か?(以下の手続きの記載は省略)

質問3)
Bクリニックを治験届出の対象施設とした場合「Bクリニックでの治験責任医師の設置」や「施設IRBの審議」及びその他の治験手続きの内、不要な手続き及び処理は何か?また不要と判断する場合にはどの様な理由によるものでしょうか?(治験薬を投与しない医療機関であるからか?)


製薬協見解

質問1)

通常診療では、来院された患者さんの診断のために必要な検査が治験の参加とは関係なく行われます(日常診療の範囲内)。しかし、治験参加を前提とした診療では、日常診療の検査のほか、被験者の選択・除外基準の確認のために、血液検査、尿検査、心電図、バイタルサイン、画像等の検査が行われます(日常診療の範囲外)。

治験実施計画書で規定された検査項目のうち、日常診療の範囲外の検査は、同意取得後に実施しなければなりませんので、先の見解では「日常診療の範囲内・外」で区分して回答致しました。

なお、被験者に対して精神的、身体的侵襲がある検査については、被験者の負担軽減のため、治験実施計画書で同意取得前の許容期間が予め定められていれば、同意前に実施されたデータであっても、治験のデータとして使用することは可能です。


質問2)、3)
Bクリニックに来院された患者さんに対して、上述のような治験参加の適格性確認、治験概略の説明を行うことは、治験実施計画書で規定されている行為の一部であることから、BクリニックはGCP上の実施医療機関として治験届出の対象となります。また、このBクリニックの医師は、適格性判断までのデータを症例報告書に記載しなければなりませんが、A病院と共同で治験を実施することになることから、その役割としては必ずしも治験責任医師でなければならないということはないと考えられます。

治験審査委員会等のBクリニック及びA病院におけるGCP上必要な各手続きや対応はいずれも必要であると考えられますが、当事例の如く、複数の医療機関が共同で実施する治験については、現在のGCPでは想定されていないと考えられますので、予め医薬品医療機器総合機構に手続きや治験実施上の注意点などについて、ご相談されることをお勧めします。
 
質問番号:2007-35 GCP実地調査に治験依頼者が立会う旨を治験契約書に記載することの必要性

規制当局の調査に依頼者が立会っても良いのでしょうか?

【質問の背景】
最近、ある外資系企業と新規の治験契約を締結する際、契約書の中に「実施医療機関は、規制当局による本治験に関する査察又は会議に治験依頼者の同席を許可する」という文言を入れて欲しいという申し出を受けました。
実際、医療機関に実地調査が入る際、治験依頼者の同席は認められるのでしょうか?またこのような契約内容について、受け入れる必要があるものなのでしょうか?
なお、「規制当局の査察」とは、国内外の両方を含んでいます。


製薬協見解

医薬品の承認申請資料に係るGCP実地調査に関する医薬品医療機器総合機構から発出される通知では、実施医療機関における実地調査に際し、治験依頼者の同席可否については触れられておりません。

一方、海外での承認申請に際して、当該海外規制当局が日本の実施医療機関を調査する可能性も考えられます。米国FDAをはじめとして、海外規制当局の多くは実施医療機関での調査に治験依頼者が同席することを認めています。言語の違いや各国規制の違い等を考慮すると、これらを理解している治験依頼者の同席は、調査を円滑に進めるために望ましい場合もあると考えられます。

いずれにしましても、調査する側の規制当局及び受け入れる側の医療機関双方の了解がないと治験依頼者の同席は実現しません。したがいまして、契約書に該当条項を記載される場合には、「規制当局が許可する場合に限り」と限定するか、該当条項を記載しない場合でも、調査を実施する規制当局が許可する場合には、治験依頼者による立会いにご協力下さいますようお願い致します。
質問番号:2008-01 治験責任医師による治験契約書の確認時期

GCP運用通知 第13条1に「治験責任医師も、契約内容の確認のため契約書又はその写しに記名捺印又は署名するものとする」とありますが、これは契約が締結されていることを確認するのか或いは契約書の内容のみを確認するのかどちらの解釈となりますでしょうか。
具体的に申し上げますと、医療機関の長と治験依頼者との契約締結日が治験責任医師の確認日よりも遅い日というものが可能でしょうか。


製薬協見解

ご質問のように、GCP第13条課長通知には、「・・・なお、治験責任医師も、契約内容の確認のため契約書又はその写しに記名捺印又は署名するものとする」とあります。この治験責任医師が確認すべき契約書の内容には、契約締結日が含まれていると考えられます。特に、契約書の治験期間の記載が「契約締結日〜平成○年○月○日」となっているような書式では、契約締結日を確認することは非常に重要になります。また、治験分担医師の追加に関する変更契約などでは、契約締結日以降に当該治験分担医師が業務を開始することができます。
したがいまして、治験責任医師は契約締結日を含めた内容全てを確認したうえで、記名捺印又は署名すべきと考えられます。
注釈:本質問及び見解は2008年8月時点のものであり、文中に引用した通知は、薬食審査発第0921001号「医薬品の臨床試験の実施の基準の運用について」(平成18年9月21日)です。「医薬品の臨床試験の実施の基準の運用について」の改訂(平成23年10月24日)に伴い、治験責任医師による治験契約書またはその写しへの署名等は必須ではなくなりました。
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