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 「GCPガイダンス」と「治験119」の合体:GCPの注意事項、GCPのグレーゾーン(9)
つづき
第27条
実施医療機関の長は、治験を行うことの適否その他の治験に関する調査審議を次に掲げる治験審査委員会に行わせなければならない。
    ↓(関連)
質問番号:2007-14 治験審査委員会の閉会(その1)

他施設の審査を受け入れているIRBが、委員の確保が困難等の理由で閉会する場合、他施設の実施中の治験についての取扱いはどのようになるのでしょうか?
今までに、そのような事例はございますでしょうか?
正当な理由があれば、別のIRBに途中から審査を依頼することは可能でしょうか?(「正当」にあたる理由には、他にどのようなケースが想定されますでしょうか?)
IC文書の改訂を含め、どのような手続か必要かもご教示いただけますと幸いです。


製薬協見解

治験審査委員会(以下、IRB)の閉会により、当該IRBの審査を受けた治験実施医療機関(以下、実施医療機関)で実施中の治験は、以後、GCP第31条(継続審査等)に定められる審査を受けられないことになります。

この場合、GCPの目的である被験者の人権、安全及び福祉の保護、並びに治験の科学的な質と成績の信頼性を継続して確保するためも、他のIRBに審査を依頼することが以降の対応として適切であると考えられます。
その手続きとして以下の事項が考えられます。

@実施医療機関の長は、GCP第27条第1項ガイダンス1及び2の趣旨に従って、治験の開始から終了に至るまでの一貫性のある調査審議などを考慮し、適格なIRBを選定し、契約を締結する。

A 閉会となるIRBでのこれまでの当該治験に関わる審査関連資料(議事録等)を新たなIRBへ提供し、説明文書の改訂とともに、当該治験の審査を依頼する。

B 新たなIRBでは、過去の審議状況を踏まえた上で、当該治験の実施が適切であるかを審査していただく。当該IRBから意見があった場合には、必要な対応を行う。

C IRBが変更になった旨を被験者に連絡するとともに、新規被験者に対しては、改訂された説明文書にて説明を行う。
また、GCP第34条に定められるIRBに関わる記録の保存も以後必要です。

当該IRB閉会までの記録について、IRBの設置者と実施医療機関の長、必要に応じて治験依頼者も含めて事前に協議のうえ、保存場所、保存責任者を定め、移管することが必要です。

さらに、GCP第27条第1項第2号から第4号のIRBが調査審議の依頼を受ける場合のIRB設置者の要件として、GCP第27条第2項第6号「その他治験審査委員会の業務の公正かつ適正な遂行を損なうおそれがないこと」が掲げられており、その事項の一つには、「治験の開始から終了に至るまで、継続的に治験に関する調査審議を行う体制を整えていること」(GCP第27条第2項ガイダンス5(8))と規定されています。

したがいまして、今回の閉会及び委託先IRBの選定にあたり、「実施医療機関の長は、治験審査委員会に関する必要な情報を入手するなどして、治験の開始から終了に至るまで一貫性のある調査審議を行うことができる治験審査委員会を選択し、調査審議の依頼を行うこと」(GCP第27条第1項ガイダンス2)を説明する書面を作成することが、実施医療機関の長にとって必要であると考えます。

なお、上記は日本製薬工業協会としての見解ですが、本件は及ぼす影響が大きいため、必要な対応等について規制当局に相談することをお奨めします。
質問番号:2008-37 治験審査委員会の選択に関する手順

治験審査委員会の選択(GCP27条第1項運用通知)に関して、ある治験依頼者から手順書に記載されますかとの質問を受けました。例えば、以下のような文面が必要ではないかとのようです。

「院長は依頼があった治験に対し、GCP第27条第1項の規定により適切な治験審査委員会を選択した上で、調査審議を依頼することができる。」
これは必要なのでしょうか。当院は従来より自前の治験審査委員会で全て審査しており、その事を前提として手順書等を整備しております。


製薬協見解

GCP第27条第1項ガイダンス2において「実施医療機関の長は、適切な治験審査委員会を選択するために必要な手順を定める」旨の規定があります。
これは、同ガイダンスの1に規定されています「実施医療機関の長は、次の(1)から(8)に掲げる治験審査委員会より、治験ごとに適切な治験審査委員会を選択し、調査審議の依頼を行うこと。」に対する手順と考えられます。

当該実施医療機関で行う全ての治験(医学領域)に対して適切な調査審議を行うことができると考えられる治験審査委員会が設置されており、外部の治験審査委員会に調査審議を依頼することを想定されていないということでしたら、「依頼された治験に対しては実施医療機関の長が設置した●●●●治験審査委員会に調査審議を依頼する」と手順書に明記するか、その旨が手順書上で明らかであれば問題はないものと考えられます。

なお、種々の医学領域の治験を適切に調査審議するためには、相応に委員構成を充実するとともに、必要時に委員以外の特別な分野の専門家に協力を求めることができる状態にあることが必要と思われます。
質問番号:2009-07 医療法人社団設置の治験審査委員会

質問番号2008-09で、「医療法人設置の治験審査委員会は認めていない」という記載がありますが、医療法人社団設置の治験審査委員会は認められているのでしょうか(その違いは良く分からないのですが)。
実際、医療法人社団設置のIRBが存在しているので質問させていただきました。


製薬協見解

医療法では、第39条第1項「病院、医師若しくは歯科医師が常時勤務する診療所又は介護老人保健施設を開設しようとする社団又は財団は、この法律の規定により、これを法人とすることができる。」及び第2項「前項の規定による法人は、医療法人と称する。」と定められております。
したがって、ご質問の医療法人社団は、医療法で定義されています医療法人に該当する法人かと考えられます。医療法人設置の治験審査委員会はGCPで認めていませんので、医療法人社団についても同様かと思われます。
質問番号:2009-08 治験審査委員会の閉会(その2)

この度、弊社支援医療機関において、院長の体調不良により閉鎖を予定しているクリニックがあり、当該医療機関に設置されている治験審査委員会の閉鎖についての手続きをご教示頂きたくメールを差し上げた次第でございます。

【背景】

・医師は院長1名のみ
・本年12月で診療を終了予定
・現在実施中の試験あり(今年秋には被験者対応が終了予定、年内に終了報告を予定しているがぎりぎりである)
・現在、他の医療機関からの審議も引き受けている(今年中に試験終了が間に合わない可能性がある)
・クリニックはテナントであり、12月末で賃貸契約が更新となる。できれば12月いっぱいで契約を更新することなく撤退したいと考えている。
・院内に設置されているIRBについて、メンバー構成は全て外部委員である

【質問事項】

@ 現在のIRBが機能している間に、同一メンバーで他の医療機関のIRBを設立する事は可能か。

A IRB委員構成を変更することなく、他の医療機関のIRBとして新たに立ち上げた場合、現在実施中の試験の審議を引き継いで行う事は可能なのか。

B 当該医療機関の閉鎖に治験終了が間に合わない場合、やむをえない状況であると考え、途中からであっても別のIRBに審議を委託することは可能なのか。

C Bが不可能な場合、本年12月末で医療機関の診療が終了した後でもこれらの試験が終わるまでの間IRBとして存在し続ける事は可能なのか。可能である場合、いつまで可能なのか。(標榜取り下げ手続きをした日となるのか、医療機関の所在地から撤退した日となるのか)

D 医療機関閉鎖後の治験の記録の保存場所について

E その他、IRB廃止について医療機関として実施すべき作業はあるのか

GCP上、同一IRBにて治験開始から終了まで審議を行わねばならない事は理解しているのですが、それが叶わない治験実施中の突然の閉院についてはどのように対処すべきか悩んでいる次第でございます。


製薬協見解

@ 複数の治験審査委員会の委員を兼任しても問題はありません。他の実施医療機関の長が適格と判断されるのであれば、全く同じメンバーから構成される他の治験審査委員会が設置されることもあり得ることかと考えられます。

A 治験審査委員会の閉会に伴う対応につきましては、質問番号(2007-14:治験審査委員会の閉会-その1)をご参照ください。

B GCPでは、同一の治験審査委員会による一貫した審議を行うことが規定されています。
治験審査委員会が設置され機能している間は、同一の治験審査委員会による審議を行うべきと考えられます。
なお、治験審査委員会を閉会することがすでに決定されている場合には、質問番号(2007-14:治験審査委員会の閉会-その1)をご参照ください。

C 医療法に従って実施医療機関が廃止された場合、実施医療機関の長により設置された治験審査委員会も閉会せざるを得ないと考えられます。

D 診療録等につきましては、医師法に定められた期間の保存義務が課せられており、このうち治験の原資料となる診療録等につきましては、GCPに定められた期間を遵守して保存していただく必要があります。
実施医療機関が廃止された場合は、これらの関連法令に定められた期間、他の医療機関やSMO等に委託して継続して保存するような措置を講ずる必要があります。
この場合、個人情報保護、保存期間、場所などを明確にするため委託先との間に保存に関する契約を締結することが必要と思われます。なお、原資料のうち診療録については、医療機関に保存を継承することが望ましいと考えられます。

E 質問番号(2007-14:治験審査委員会の閉会-その1)をご参照ください。
質問番号:2009-17 治験審査委員会を有する医療機関による外部の治験審査委員会の利用

当施設は院内に治験事務局及び治験審査委員会を設置し、治験業務を行っております。
また、某SMOと業務提携をしております。

先日、治験依頼者から新案件の審査をSMOが提携する治験審査委員会を利用したいとの要望があるとの相談がSMOよりございました。
しかし、当施設は治験審査委員会を設置しておりますので、当施設での治験審査委員会で審議していただくのが妥当かと考えます。

なお、この案件の前相の治験については当施設の治験審査委員会で審議され、実施いたしました。
このように、治験審査委員会を設置している施設であるにもかかわらず、セントラルでの治験審査委員会を利用することに問題はないのでしょうか?
もし、セントラルでの治験審査委員会を利用するのであれば当施設が留意すべきことはございますでしょうか。
また、今回のように治験依頼者が治験審査委員会を指定するということはGCP上問題ないのでしょうか。


製薬協見解

GCP第27条第1項ガイダンス2において「実施医療機関の長は、適切な治験審査委員会を選択するための必要な手順を定めるとともに、・・・(中略)・・・治験審査委員会を、治験ごとに適切に選択し、調査審議の依頼を行うこと。
また、実施医療機関の長は、治験審査委員会に関する必要な情報を入手するなどして、治験の開始から終了に至るまで一貫性のある調査審議を行うことができる治験審査委員会を選択し・・・(後略)」とあります。

したがって、貴施設の標準業務手順書に外部の治験審査委員会を選択するための手順が規定されていれば、たとえ貴施設の治験審査委員会において当該治験薬の前相の治験が審議されていたとしても、いわゆるセントラルでの治験審査委員会を利用することに問題はありません。
利用する場合には、調査審議の依頼に関する契約の締結、委員名簿や標準業務手順書の入手が必要になります。

ただし、GCP第27条において、治験審査委員会の選択は実施医療機関の長の役割と規定されていることから、治験依頼者やSMOが治験審査委員会を指定することはできません。
 
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