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 「GCPガイダンス」と「治験119」の合体:GCPの注意事項、GCPのグレーゾーン(11)
(治験審査委員会の会議)

第29条 次に掲げる委員は、審査の対象となる治験に係る審議及び採決に参加することができない。

1)治験依頼者の役員又は職員その他の治験依頼者と密接な関係を有する者

2)自ら治験を実施する者又は自ら治験を実施する者と密接な関係を有する者

3)実施医療機関の長、治験責任医師等又は治験協力者

2 審議に参加していない委員は、採決に参加することができない。
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〈第1項〉

1 当該治験の治験依頼者又は治験責任医師と関係のある委員は、治験審査委員会における当該治験に関する事項の審議及び採決に参加してはならない。

2 「その他の治験依頼者と密接な関係を有する者」とは、例えば、治験依頼者の親会社又は子会社の役員若しくは職員、及び当該治験の準備、依頼又は管理に係る業務の全部又は一部を受託する開発業務受託機関の職員等がこれに該当する。

3 「自ら治験を実施しようとする者又は自ら治験を実施する者と密接な関係を有する者」とは、例えば、自ら治験を実施する者の上司又は部下等がそれに該当するものと考えられる。なお、自ら治験を実施する者と実施医療機関内で共同研究を行っている者については、当該共同研究が当該治験と関係がないことが確認できる場合には、それに該当しないと考えられる。また、治験薬提供者又は例えば、当該治験薬提供者から継続的に報酬を得ている者その他当該治験薬提供者と密接な関係を有する者はそれに該当するものと考えられる。

4 治験審査委員会における審議品目の説明は、治験実施計画書及び治験薬概要書等に精通している者が行うことが適当であることから、治験責任医師(治験責任医師の出席が困難な場合にあっては治験分担医師)が行うことが望ましいこと。
なお、必要がある場合には、治験依頼者が治験審査委員会に出席し、補足説明等を行うことは差し支えないこと。

5 多施設共同治験において、各実施医療機関の長が一つの治験審査委員会(いわゆる「セントラルIRB」)に調査審議の依頼を行う場合には、当該治験に参加する実施医療機関より治験調整医師等の適切な治験責任医師を選出し、その者が各実施医療機関の治験責任医師を代表して治験審査委員会において説明することで差し支えないこと。

6 治験責任医師は、その関与する治験について、治験審査委員会に情報を提供することは許されるが、当該治験の審議及び採決には参加してはならない。治験分担医師及び治験協力者も同様である。

7 実施医療機関の長は、当該実施医療機関の長が設置した治験審査委員会以外の治験審査委員会の委員になることはできるが、自らの医療機関で行う治験についての審議及び採決には参加してはならない。

〈第2項〉

1 治験審査委員会の採決には、審議に参加した委員のみが参加を許される。

2 治験審査委員会は、あらかじめ開催が通知され、手順書に規定する定足数以上の委員が出席した会議においてその意思を決定する。
関連する治験119

質問番号:2005-03 治験審査委員会における採決の基準

IRBにおける承認条件についての質問です。
IRBのSOP作成に当たり、「出席委員のうち採決権のある委員全員の合意をもって承認とする」という案を作成しましたが、医療機関からの「過半数で承認だ」という意見により否定されてしまいました。
機構のコメントでは、2/3以上あるいは全員一致がのぞましいとされているとのことですが、これに関して公式の記述などはあるでしょうか。
また過半数での承認で問題ないかご意見をお聞かせください。


製薬協見解

GCP第29条第2項では、「審議に参加していない委員は、採決に参加することができない。」とありますが、採決に当たっての基準、例えば「過半数」あるいは「2/3以上」等は明記されていません。また、GCP第282項ガイダンス3では、IRB成立要件として「委員の過半数。ただし最低でも5名以上の委員の出席が必要。」となっていますが、採決条件については明記されていません。
GCP実地調査の際に採決の方法についてコメントを出している場合があるようですが、公式の記述や規制当局が主催する説明会ではそのような具体的な指導は行われていないようです。
IRBとしての責務、すなわち被験者保護を考えますと、賛成できない委員の理由を明確にし、必要に応じ治験依頼者等適切な関係者に追加資料を要求したり、専門家等を招聘して意見を聞いたりして、十分検討することが重要と考えます。
また、採決について過半数での賛成で承認という規定を設けた場合でも、その反対の理由を議事要旨に記載し、さらには、治験審査委員会の意見を記載した文書にも反対の理由を記載して、治験依頼者及び治験責任医師等に治験を実施する際に注意を喚起することも考えられます。
質問番号:2007-12 治験審査委員会委員の適格性

新規治験を依頼する上で、治験審査委員会の構成についてお尋ねします。
治験依頼予定の医療機関(クリニック)には治験審査委員会が組織されているのですが、その委員長が医療機関の長の妻ということで公平な審査ができるのかという部分で疑問があります。治験責任医師候補でもある医療機関の長は生活を共にすることと、治験の審議は切り分けて考えているので問題はないと主張されているのですが、GCP上の問題はありますでしょうか。
なお、この治験審査委員会の医師は委員長一人であり、採決に不参加とすると医師はいなくなることになります。


製薬協見解

ご質問の内容は、治験責任医師(=実施医療機関の長)の配偶者が、治験審査委員会の委員(委員長)として選任されているというケースですが、審議及び採決に参加することができないと規定されているGCP第29条第1項第1号〜第3号には該当していません。さらに、GCP第29条第1項ガイダンス1では、「治験責任医師と関係のある委員は、治験審査委員会における当該治験に関する事項の審議及び採決に参加してはならない」と補足されていますが、この「関係のある」ということに対して、ご質問のケースが該当するか否かについて具体的なことまで解説されていません。

治験責任医師の配偶者であるという点だけをもって、GCP上、不適切な委員であると断定することはできませんが、当該委員長が独立した立場で院長に意見を言うことができるか否かを個々に判断する必要があると思われます。

なお、GCP第28条第1項にて治験審査委員会の要件として「治験について倫理的及び科学的観点から十分に審議を行うことができること」、また、GCP第28条第1項ガイダンス10にて「治験審査委員会は、委員以外の特別な分野の専門家に出席を求め、その協力を得ることができる」との規定があります。当該治験審査委員会の構成として、医師の資格を有する委員が1名であることに対する実施医療機関の長(治験審査委員会の設置者)の見解を確認するとともに、委員の追加又は委員以外の専門家への協力要請を提案する等の対応を行っておくことも大切かと考えられます。
質問番号:2007-37 被験者登録期間の延長に対する治験審査委員会での審査の必要性

治験実施計画書の取扱いについて質問させていただきます。
現在実施している治験の治験実施計画書には、治験期間に加え、症例の登録期間が設定されています。症例の登録期間が満了しようとした時期に、ちょうど治験実施計画書が改訂になりました(医療機関との契約期間はまだ先まで残っています)。改訂内容としては、治験依頼者及びCROの人員変更、症例登録期間の延長です。

医療機関によっては、症例の登録率が悪く、治験依頼者としては症例登録が多い施設に関しては、登録期限を延長し、少ない施設については登録期限の延長はしないとのことでした。

症例登録期間延長になった医療機関に対しては、治験責任医師と合意書を交わし、IRBで審議をお願いしたのですが、期間延長にならなかった医療機関に対しての対応に関してはいかようにしたらよろしいのでしょうか。

治験依頼者の見解としては、「IRBにて審議いただけるのであれば、治験実施計画書は改訂になるが、症例登録期間延長はしない旨を審査依頼書に明記し審議していただく」。もしくは、IRBの審議対象にはならないと治験依頼者は認識しているので、「治験責任医師及び治験事務局への連絡のみ行い、IRB審議は依頼せず、必須文書として取り扱わない」とのことでした。

しかしながら、GCP(第36条)上、治験期間中を通じて治験審査委員会の審査対象となる文書を最新のものにしなければならないと記載がございました。
今回のケースにおいては症例の登録期限は過ぎたが、治験実施計画書の改訂があった為、IRBに審議を掛け、必須文書として保存をするという見解が正しいのではないでしょうか。


製薬協見解

「治験依頼者及びCROの人員変更」及び「症例登録期間の延長」により治験実施計画書が改訂されたとのことですが、症例登録期間を延長する実施医療機関と、延長しない実施医療機関とでは治験実施計画書の改訂内容が異なります。これは、実施医療機関固有の治験実施計画書の改訂と同様の考え方になります。

症例登録期間を延長する実施医療機関に対しては、「治験依頼者及びCROの人員変更」及び「症例登録期間の延長」両方の改訂が行われ、当該実施医療機関及びIRBの手順書に従い、必要な手続きを行う必要があります。

一方、症例登録期間を延長しない実施医療機関に対しては、治験責任医師の了解を得た上で、「治験依頼者及びCROの人員変更」のみの改訂が行われます。この場合でも、GCP第28条第2項ガイダンス2(3)Cに規定される「進行中の治験に関わる軽微な変更」に該当すると考えられますので、上記手順書に従った手続きが必要です。

なお、GCP第7条第1項ガイダンス2から「治験依頼者及びCROの人員変更」については、治験実施計画書の別冊として作成し取り扱うことができます。今回の「治験依頼者及びCROの人員変更」が当該実施医療機関に関わらない場合には、必ずしもすべての実施医療機関に別冊を提出する必要性はなく、変更事項に該当する実施医療機関にのみ改訂の対応を行うことでも問題ないと考えられます。

さらに、GCP第7条第1項ガイダンス3には「治験実施計画書又はその分冊に記載されたモニター以外のモニター及び監査担当者が診療録の閲覧等を行う場合は、モニター等の氏名等を当該実施医療機関が把握できるようにすること」と記載されましたので、柔軟な対応が取れると考えられます。
いずれの場合でも、当該実施医療機関で行われた治験実施計画書の改訂については、GCP第34条及び第41条の規定通り、文書を適切に保管する必要があります。
質問番号:2008-18 治験責任医師の治験審査委員会への出席

GCP第29条第1項運用通知6では、「治験責任医師は、・・・(中略)・・・、当該治験の審議及び採決には参加してはならない。」と記載されていますが、見学することは可能ですか?若しくは退席が必要ですか?また、その理由も教えて下さい。


製薬協見解

治験責任医師が当該治験の内容について説明を終えた後、治験審査委員会による審議及び採決を行うにあたって、治験責任医師が退席する必要があるかについてはガイダンスでは規定されておりません。

治験審査委員会での審議採決の方法(挙手、記名票、等)にもよるかとは思われますが、治験責任医師が採決の場に同席されていると、治験審査委員の中には採決(意思表示)しにくいと考えられる委員の方もいらっしゃるかもしれません。

治験審査委員は治験責任医師及びスタッフの適格性、並びに設備・支援体制等について監視的な立場から十分な意見を述べられることが望ましいと思われますので、治験責任医師が同席していてもそれが可能かどうかを考慮の上で治験審査委員会としてご判断いただく必要があると考えます。
質問番号:2008-21 「治験責任医師と関係のある委員」の範囲(その1)

(背景)

●無床クリニックの治験審査委員会で、構成は委員7名、専門家3名、外部委員2名及び非専門家2名
●院長が治験責任医師で、治験分担医師はいません
●専門家委員の1名が、月に1度、院長の代診をしていますが、治験の対応はしていません。当該委員が治験審査委員会の審議及び採決に参加したことについて、GCP第29条第1項 運用通知1にある「治験責任医師と関係のある委員は、治験審査委員会における当該治験に関する事項の審議及び採決に参加してはならない」に抵触するため、IRBが成立しないと治験依頼者より問い合わせがありました。

質問@

月に1度代診をしていることで、治験責任医師と関係のある委員となりますでしょうか。

質問A

仮に審議及び採決に参加できないとしても、治験審査委員会は成立すると思いますが、当該委員が参加していたことで、治験審査委員会が不成立となりますでしょうか。


製薬協見解

ご質問の@について

審査の対象となる治験に係る審議及び採決に参加することができない委員としては、GCP第29条第1項の第1号〜第3号が該当します。また、同条同項に対しますガイダンスでは、ご質問のケースが「治験責任医師と関係のある」委員に該当するか否かについては示されておりません。一般論としまして、治験を担当していないことを踏まえると、代診を行うだけであれば問題ないものと考えられます。ただし、実際に「治験責任医師と関係のある」委員かどうかは、より詳細な背景情報を元に個々に判断する必要があると思われます。


ご質問のAについて

GCP第29条にて規定されています審議に参加できない委員が、審議及び採決に参加していた場合、当該治験の審議結果については不成立とみなされます(言い換えると、審議及び採決に参加していなければ成立します)。緊急又は次回開催の治験審査委員会にて再審議、又は審議結果の再確認を行っておく必要があると考えられます。
質問番号:2009-16 「治験責任医師と関係のある委員」の範囲(その2)

治験審査委員会委員長が変更されることになりました。
現在、進行中の治験の治験分担医師が新たな委員長です。
そこで、治験分担医師から削除しましたが、これで「GCP第29条第1項の1」を回避することは可能でしょうか?

なお、治験責任医師は当該科の部長ですが、新委員長の診療科は同一ですが職位は院長補佐です。
この場合も治験責任医師が部下と解釈されますか?


製薬協見解

治験審査委員会委員長が治験分担医師として係っておられる治験の審議案件に対しましては、審議及び採決には参加できません。
したがって、治験分担医師の削除(本人)に対します審議には参加できませんが、その後の当該治験の審議に対しましては問題ありません。

GCP第29条第1項ガイダンス1に規定されています「治験責任医師と関係のある委員」とは、治験責任医師、治験分担医師及び治験協力者と解されます。
治験審査委員会委員長と治験責任医師の所属診療科の関連性及び職位における上下関係については、実施医療機関の手順書及び治験審査委員会の手順書にて規定されてない限り、問題ないものと考えます。
質問番号:2009-19 「治験責任医師と関係のある委員」の範囲(その3)

最近当院に申請のあった治験で、同一の治験実施計画書でそれぞれ別々の診療科(2診療科、それぞれ@、Aとします)で行われるものの審査が行われました。

この審査にあたり、治験審査委員のうちの一人が@の申請診療科のドクターであったため公平な審査ができないと考え、@の採決には関わらないことし、Aについてのみ審査には関わっていただくという対応をとりました。

ところがその後治験依頼者より、同一の治験実施計画書であるのだから、同委員がAの審査に関わることが問題だというクレームを受けました。
事務局としては当方の対応でGCP上は問題ないと考えるのですが、治験依頼者の主張されるとおり、この様な場合は公平な審査が行えないものとして取り扱ったほうがよろしいのかご教示下さい。


製薬協見解

@の申請診療科の医師が当治験の治験責任医師、治験分担医師、治験協力者の場合には、GCP第29条第1項第3号に規定されていますように、当該治験に係る審議及び採決に参加することができませんが、いずれでもでない場合には、診療科@及び診療科Aにおける治験の実施に対して審議及び採決に参加することに問題はないと考えます。
(2011-13の見解もご参照下さい)
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