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 「GCPガイダンス」と「治験119」の合体:GCPの注意事項、GCPのグレーゾーン(13)
つづき
(実施医療機関の長)
第36条 実施医療機関の長は、治験に係る業務に関する手順書を作成しなければならない。
     ↓(関連)
質問番号:2008-09 理事長による実施医療機関の長の業務の実施

医療法人の医療機関の場合、GCPにおける実施医療機関の長とは、理事長と病院長のどちらが適切でしょうか。
あるいは、どちらでも良いのでしょうか。

【背景】

ある医療法人の実施医療機関は、かつてはA病院長+B副院長の体制であり、この当時に治験受託のための実施体制の構築(院内SOPの作成等)に着手しました。

治験実施体制構築着手と同時期に、医療法人化に伴い、A理事長とB病院長へと体制が変更になりました。院内SOPでは、契約、治験審査委員会(院外)への審査依頼や治験依頼者・治験責任医師への通知等、GCP上で言う「実施医療機関の長の業務」を行う者は病院長と記載されていましたが、実際にはA理事長が全ての「実施医療機関の長の業務」を実施しておりました。

治験依頼者は、治験実施体制と院内SOPとの矛盾にしばらく時間が経過してから気づいたため(治験の書類上は全て、病院長Aとなっておりました)、事実関係と適切な対応方法について実施医療機関と協議しました。
実施医療機関としては、GCP上で言う「実施医療機関の長の」の責務は、A理事長が果たしており、本来であれば、院内SOPにおける実施医療機関の長を、病院長ではなく理事長と記載すべきであったとの見解でした。このため、治験依頼者より院内SOPにおける病院長を理事長へ改訂すること及び誤記載について治験依頼者へ報告文書を提供することを要請致しました。

一方、GCP上の実施医療機関の長は、理事長ではGCP違反となる可能性があり、病院長とすべきであるから、A理事長の業務を速やかにB病院長へ移行すべきとのお考えで対応を要請されている他の治験依頼者もあるようです。

私は、GCP上で言う「実施医療機関の長」は、GCP上の責務が果たせるのであれば理事長、 病院長いずれでも良いと考えています。
しかし,医療法上の理事長と病院長の責任の違い、権限の違いなど良く分りませんが、医療法上の病院長でなければ、GCP上の実施医療機関の長の責務は果たせず、結果として理事長はGCP上の実施医療機関の長には不適切というようなことはあるのでしょうか。


製薬協見解

GCP省令では「実施医療機関の長」の定義は明確には規定されておりません。

一方、医療法では「医療機関の管理者」(第4章 病院、診療所及び助産所 第2節 管理 第10条等)及び「理事長」(第6章 医療法人 第3節 管理 第46条の3)がそれぞれ規定されており、「理事長」は医療法人の役員です。また、両者の役割について、「医療機関の管理者」は第10条等に、「理事長」は「理事長は、医療法人を代表し、その業務を総理する。」(第46条の4)とそれぞれ規定されています。

治験を実施する上での実施医療機関の長の役割につきましては、GCP第36条等に規定されていますが、その内容は医療法による「理事長」というよりは「医療機関の管理者」に近いものと考えられます。また、当該医療機関におきまして治験審査委員会が設置されていた場合、「理事長」が実施医療機関の長として治験審査委員会の設置者となると、医療法人が設置した治験審査委員会とみなされる可能性があります(医療法人設置治験審査委員会はGCP省令では認められておりません)。

したがいまして、GCP省令上は、「理事長」が実施医療機関の長となることについて明確には規定されておりませんが、上記のような点を考慮しますと、B病院長が実施医療機関の長としての役割を担うことが望ましいと考えられます。
質問番号:2008-30 実施医療機関手順書のバージョンコントロール(その1)

実施医療機関の手順書(SOP)を改訂したいのですが、現行のSOPが項目ごとの分冊となっており、それを1冊のものにしようと改訂を考えております。
しかし、版数が分冊ごとに付与されており、第2版もあれば第10版もあるといったような状況です。
この場合、1冊に改訂した際に版数をどのようにしたら良いか、ご教授ください。


製薬協見解

GCPでは手順書(SOP)の版数記載ルールについての規定はありません。
実施医療機関におけるSOPの作成手順に従い付番していただくことで問題ありません。

ご質問のケースにおきましては、これまでの分冊型であったSOP の版管理を改訂の経緯と共に記録・保存した上で、新たに統合したSOPを改訂第一版として差し支えないと思われます。
この場合、分冊型SOPから統合型SOPに移行した旨の経緯を記録しておくことが重要と考えます。
 
質問番号:2009-32 実施医療機関手順書のバージョンコントロール(その2)

以前に他SMO支援での治験実施経験がある医療機関において、この度、当社で初めて試験の支援をすることとなりました(今回が当該医療機関における2度目の試験実施)。

試験実施に際し標準業務手順書(以下、SOP)整備の必要があり、確認のためSOPの提示をお願いしましたところ、前回の治験実施後、現在までの約5年間治験を実施しておらず、さらにこの間、病院の移転があったこと等からSOPを紛失してしまったようだとの返答がありました。
また、以前に支援をしていたSMOは数年前に廃業しており、当該SMOからの情報取得も不可能となっております。

以前に試験を実施していることから、SOP第1版(初版)が存在することは確かですが、当該医療機関のSOP(初版)の所在、制定日等の情報が全く判らない状態です。

このようなケースの対応経験がなく、SOP整備にあたり、版管理についてどうすべきか困っております。この件に関する対応として、以下のような意見が挙がっておりますが、SOP紛失の際の対応として、今後どのような版管理をすることが望ましいのでしょうか。

1) 過去のSOP(初版)の所在、情報確認ができないため、新たに初版を制定する

2) 過去に初版が存在していたが紛失した(又は制定日不明など)、と改訂履歴に記載した上で第2版を作成する(改訂履歴に初版の制定日を記載することができないため)


製薬協見解

治験119番 質問・見解集の2008-30に見解を示していますように、GCPでは実施医療機関SOPの版数記載ルールについての規定はありませんので、ご質問内容にあります1)、2)何れでも問題はないものと思われます。

なお、実施医療機関の記録保存責任者はGCP第41条に従って記録を保存しておく必要があります。
実施医療機関SOPもこの記録に該当しますので、当時の治験に対する保存期間が終了していないようでしたら当該治験依頼者にこの旨を連絡するとともに、紛失の経緯について記録を作成する必要があると思われます。
このとき、当該治験依頼者が当該手順書の写しを入手して保存しているようであれば、その写しを代わりに保存されておくことも善後策の一つかと思われます。
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