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 「GCPガイダンス」と「治験119」の合体:GCPの注意事項、GCPのグレーゾーン(16)
つづき
(症例報告書等)

第47 条 治験責任医師等は、治験実施計画書に従って正確に症例報告書を作成し、これに記名押印し、又は署名しなければならない。

2 治験責任医師等は、症例報告書の記載を変更し、又は修正するときは、その日付を記載して、これに押印し、又は署名しなければならない。

3 治験責任医師は、治験分担医師が作成した症例報告書を点検し、内容を確認した上で、これに記名押印し、又は署名しなければならない。
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〈第1項〉

1 治験責任医師等は、症例報告書を治験実施計画書の規定に従って作成し、その内容を点検し、問題がないことを確認したときに、記名押印又は署名すること。また、治験依頼者に提出した症例報告書の写しを保存すること。

2 症例報告書中のデータのうち原資料に基づくものは、原資料と矛盾しないものであること。原資料との何らかの矛盾がある場合には、治験責任医師はその理由を説明する記録を作成して、治験依頼者による治験においては治験依頼者に提出するとともにその写しを保存し、自ら治験を実施する者による治験においては自ら治験を実施する者が保存すること。

3 治験責任医師は、症例報告書及びその他のすべての報告書のデータが、正確、完全で、読み易く、提出の時期が適切であること、及び被験者の識別に被験者識別コードを用いていることを保証すること。

〈第2項〉

1 治験責任医師等は、症例報告書の変更又は修正に当たり、治験依頼者から提供された又は自ら治験を実施する者が作成した手引きに従うこと。症例報告書のいかなる変更又は修正にも日付の記入及び押印又は署名がなされ、重大な変更又は修正については説明を記すること。また、変更又は修正は当初の記載内容を不明瞭にするものであってはならない(すなわち、監査証跡として保存すること。)。このことは文書及び電子データの変更又は修正の双方に適用される。

2 治験責任医師は、症例報告書の変更及び修正の記録を治験依頼者による治験においては治験依頼者に提出するとともにその写しを保存し、自ら治験を実施する者による治験においては自ら治験を実施する者が保存すること。

注1)治験依頼者は、治験の実施に先立って、治験責任医師等に症例報告書の変更又は修正に関する手引きを提供すること。また、治験依頼者が指名した者によって行われた症例報告書の変更又は修正においては、それらが文書に記録され、必要なものであり、かつ治験責任医師が承認したものであることを保証するための手順書を作成しておくこと。

注2)自ら治験を実施する者は、治験の実施に先立って、症例報告書の変更又は修正に関する手引きを作成し、治験分担医師(自ら治験を実施する者が治験調整医師である場合においては、治験責任医師を含む。)に提供すること。

〈第3項〉

1 治験責任医師は、治験分担医師が作成した症例報告書について、その内容を点検し、問題がないことを確認したときに、記名押印又は署名すること。治験分担医師が行った症例報告書の変更又は修正について、治験責任医師が点検し、問題がないことを確認したときを含む。
質問番号:2009-22 水性インクペンによる症例報告書へのデータ記入、治験に係る文書又は記録の作成

症例報告書や治験に係る全ての書類の記載についての質問です。

GLP関連通知では、生データの記録方法として「容易に消すことが出来ない方法で・・・(略)・・・記録」と規定されており、ボールペンでの記述はそれにあてはまると思うのですが、ボールペンには現在主流に使われているインクが油性とゲル状の2種類があると思います。

ゲル状インクは水性で水に溶けると言われていますが、症例報告書及び治験に係る全ての書類に関し、使用は可能なのでしょうか?いろいろ調べてみたのですがハッキリとした明確な答えが見つからずにいます。


製薬協見解

GCP第47条第2項ガイダンス1に「変更又は修正は当初の記載内容を不明瞭にするものであってはならない(すなわち、監査証跡として保存すること。)」とあります。これは変更又は修正に関しての記載ですが、症例報告書への最初の記載や、その他の治験関連書類についても同じようにあてはめることができると考えます。

ゲル状インクを用いた記載が水に触れた場合、どのくらい不明瞭になるかはわかりませんが、医療及び治験の記録として必要な期間判読可能でなければならないという観点から油性インクのボールペンをお使い頂ければと思います。
 
(治験中の副作用等報告)

第48条 治験責任医師は、治験の実施状況の概要を適宜実施医療機関の長に文書により報告しなければならない。

2 治験依頼者が治験を依頼する場合にあっては、治験責任医師は、治験薬の副作用によると疑われる死亡その他の重篤な有害事象の発生を認めたときは、直ちに実施医療機関の長に報告するとともに、治験依頼者に通知しなければならない。この場合において、治験依頼者、実施医療機関の長又は治験審査委員会等から更に必要な情報の提供を求められたときは、当該治験責任医師はこれに応じなければならない。

3 自ら治験を実施する者が治験を実施する場合にあっては、治験責任医師は、治験薬の副作用によると疑われる死亡その他の重篤な有害事象の発生を認めたときは、直ちに実施医療機関の長(一つの実施計画書に基づき共同で複数の実施医療機関において治験を実施する場合には他の実施医療機関の治験責任医師を含む。)に報告するとともに、治験薬提供者に通知しなければならない。この場合において、治験薬提供者、実施医療機関の長又は治験審査委員会等から更に必要な情報の提供を求められたときは、当該治験責任医師はこれに応じなければならない。
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〈第1項〉

1 治験責任医師は、治験審査委員会等の継続審査を受けるために、治験の現況の概要を年に1回又は当該治験審査委員会等の求めに応じてそれ以上の頻度で、実施医療機関の長に文書をもって提出すること。

2 「治験実施状況の概要」は、第31条に規定する治験を継続して行うことの適否の審査のために用いられる資料である。

〈第2項〉〈第3項〉

1 重篤な有害事象の発生を認めたときは、治験薬との因果関係の有無に係わらず、すべての重篤な有害事象を報告するという趣旨である。

2 治験責任医師は、すべての重篤な有害事象を実施医療機関の長に直ちに文書により報告すること。この場合、治験責任医師は、報告する重篤な有害事象のうち重篤で予測できない副作用を特定すること。

3 治験責任医師は、治験実施計画書及び治験薬概要書等の文書において緊急の報告が不要であると規定されている場合を除き、すべての重篤な有害事象を治験依頼者に直ちに報告すること。また、緊急報告の後に、文書による詳細な報告を速やかに行うこと。

4 治験責任医師は、治験実施計画書において治験薬の安全性評価のために重要であると規定された有害事象について、治験実施計画書で規定された報告要件及び期限を守って治験依頼者に報告すること。

5 治験責任医師は、報告した死亡例を含む重篤な有害事象又は副作用について、治験依頼者、実施医療機関の長及び治験審査委員会等から要求された追加の情報(剖検報告書、末期の医療記録及びその他必要とされる情報)をこれらに提出すること。

6 自ら治験を実施する者が治験を実施する場合にあっては、治験責任医師は、治験薬 の副作用によると疑われる死亡その他の重篤な有害事象の発生を認めたときは、直ちに実施医療機関の長のみならず、共同で治験を実施している他の実施医療機関の治験責任医師(多施設共同治験の場合)及び治験薬提供者に対しても通知すること。治験薬提供者、実施医療機関の長又は治験審査委員会等から更に必要な情報の提供を求められたときは、当該治験責任医師はこれに応じること。
質問番号:2008-03 予定手術のための入院に対するSAE報告の取扱い(その2)

(入院予約を知り得た時点でSAE報告は必要か?)

市販後臨床試験中に以前より排便のコントロールができていないことの診断目的で大腸ファイバーを実施し、大腸ポリープを発見しました。
このとき、消化器の医師より大腸ポリペクトミーを進められたようです。
その後、ご本人の意志で試験終了後に大腸ポリペクトミー予定で入院予約をしていました。予約日は試験終了後1ヶ月以上先です。

これに対して、モニターより入院予約を知り得て24時間以内の報告が発生しますと言われました。SAE報告の定義・治療のための入院又は入院期間の延長が必要となるものに該当するとの判断との事です。
私は入院した時点で報告と認識しておりましたがいかがでしょうか。「質問番号2005-13」で予定された入院に関しての見解は理解しました。入院の予定を知り得た時点でのSAE報告に関しての見解をご指導ください。


製薬協見解

GCP第48条第2項に「治験依頼者が治験を依頼する場合にあっては、治験責任医師は、治験薬の副作用によると疑われる死亡その他の重篤な有害事象の発生を認めたときは、直ちに実施医療機関の長に報告するとともに、治験依頼者に通知しなければならない」とあります。

ご質問にあります、モニターとの見解の相違が生じた理由は、「発生を認めたとき」の解釈の違いによるものと考えられます。
ご質問のケースでは、「入院の予約」を「入院」と同一と取り扱うべきかが問題となります。
しかし、入院の予約はあくまで予約であり、被験者の方の今後の状況によって変更されることが十分に考えられます。
したがいまして、現時点では入院として取り扱い、重篤な有害事象と判断する必要はないと考えられます。

ただし、「質問番号2005-13」の見解にもありますように、治験依頼者としては緊急に報告すべき事象かどうか(治験中の悪化によるものかどうか等)を判断するため、できるだけ速やかに情報を収集する必要があります。そのため、ご質問のような情報がある場合は、速やかに治験依頼者にご提供下さいますようお願い致します。
質問番号:2008-10 治験責任医師不在中の重篤な有害事象報告

【背景】

被験者の家族からCRCに電話が入り、昨日、被験者が外出中に倒れ、他院に救急車で搬送されたが、死亡、死因は脳梗塞と診断されたと、CRCからモニターに連絡が入った。

〔2008.6.9(月)〕
被験者の主治医は治験分担医師であった。治験責任医師は海外出張中であった。治験分担医師から搬送先の主治医に電話をしていただき、入院時の状況、処置内容、治験薬との因果関係に関する参考意見などを聞いていただいた。

〔2008.6.10(火)〕
治験分担医師に「重篤な有害事象に関する速報」を作成していただき、Faxにて受領した。

〔2008.6.11(水)〕
治験実施計画書によると、治験責任医師は当該SAEを知ってから5暦日以内に詳細報「重篤な有害事象に関する報告書」を治験依頼者及び実施医療機関の長に提出しなければならないことになっている。
しかし、治験責任医師は2008.6.18まで帰国しない。

@ 情報入手日はCRCから連絡が入った日か、治験分担医師が他院から情報入手し、その情報(速報)を治験依頼者がFaxで受領した日か?
CRCは医学的判断を伴わない業務に限られると思いますが、薬事法施行規則では治験依頼者が重篤な有害事象を知ったときから報告期限が設定されています(副作用だった場合)。

A 報告者は治験分担医師でもよいか?
GCP第48条によれば、重篤な有害事象発生の医療機関の長及び治験依頼者への報告は治験責任医師の責務となっています。しかし、上記の場合、治験責任医師が帰国するまで待つと、重要な安全性情報が速やかに伝達されないことになってしまいます。

B 治験実施計画書に治験責任医師が重篤な有害事象に関する報告を行うと記載されている場合、治験分担医師が治験責任医師に代わってこれを行うことはGCP第46条の医療上やむを得ない逸脱などに相当しますか?


製薬協見解

@のご質問について

平成22年7月29日付厚生労働省医薬食品局審査管理課・安全対策課事務連絡「副作用等報告に関するQ&Aの改訂について」において、「"A.1.6 情報源から最初に報告が入手された日"には、最低限必要な情報を企業が知った日を記載するが、最低限必要な情報とは具体的に何を指すか?」との質問(Q58)に対して、「(1)患者を識別できる情報(イニシャル、年齢(XX 歳代、子供、小児、中年、高齢等)、性別等のいずれか)、(2)情報源(医師、薬剤師、その他の医療専門家、消費者、文献、機構等)、(3)副作用・感染症名、(4)疑われる医薬品(治験薬)名」と回答されています。
したがいまして、治験依頼者がこれら情報を入手した日(情報入手日を0日)となります。

Aのご質問について

ご質問にも記載されていますように、重篤な有害事象(SAE)発生の報告は治験責任医師の責務です。
しかし、安全性情報報告の緊急性を優先して治験分担医師から治験依頼者及び実施医療機関の長に報告していただくこともやむを得ない対応と考えられます。
ただし、治験分担医師は、海外出張中の治験責任医師に必要な情報を提供するとともに必要な判断について、十分に協議、確認した上で当該SAEを報告することが望ましいと考えられます。
さらに、治験責任医師は、帰国後、速やかに治験分担医師による報告内容を確認し、その旨を治験依頼者及び実施医療機関の長に報告することも必要と思われます。

Bのご質問について

今回のケースは、GCP第46条第1項に規定されています「被験者の緊急の危険を回避するためその他の医療上やむを得ない理由により治験実施計画書に従わなかった場合」には該当しないと考えます。

なお、GCP第42条に「治験責任医師は、次に掲げる要件を満たしていなければならない。(中略)3)治験を行うのに必要な時間的余裕を有すること」と規定されていますように、治験責任医師は、治験中は学会や海外出張の際もGCPに定められた治験責任医師の責務を果たす義務があります。そのため治験期間中に、国内・海外に出張される場合には、その間の対応について治験分担医師、CRC及び治験依頼者と十分に協議しておくことが重要と考えられます。
質問番号:2008-46 検査入院に対するSAE報告の取扱い

長期試験に参加されております被験者様が狭心症様の胸痛を自覚され、循環器内科にて心カテ入院を予定されました。当院の見解としては、治療の為の入院ではなくあくまでも検査入院であり検査の結果狭心症の診断がついた時点でSAE報告書作成を検討すると考えておりました。

治験依頼者側からは、まず心カテ入院時にSAE報告書(狭心症疑いのため入院)で第1報を報告し、検査結果で診断されなければSAE報告書取り消しの報告(SAE報告書と同様の書面と情報量記載あり)を行うというものでした。
結果的に狭心症と診断されたのですが、治療は不要との事でSAE報告書は取り下げの報告をするという当院にとっては理解に苦しむ内容でした。

GCPを確認しても上記SAE報告は不要と考えますが、治験責任医師は治験依頼者の要望に応える方針のようです。SAE報告書作成に要するCRC業務量は長時間を要し、可能でしたら不要な業務時間を減らしたいと思っています。
そのため、治験依頼者にSAE報告書が不要であると返答し、治験責任医師にもSAE報告の必要がないと納得して頂くには、もう少し確かな証拠や前例を蓄積したいと思いお尋ねいたします。


製薬協見解

治験依頼者は、被験薬について薬事法第80条の2第6項を知ったときには規制当局、実施医療機関の長及び治験責任医師に通知する義務があり、その事項の一つとしまして、薬事法施行規則第273条の2)の1では、「治療のために病院又は診療所への入院又は入院期間の延長が必要とされる症例」が掲げられています。

厚生労働省医薬食品局審査管理課・安全対策課発の事務連絡「副作用等報告に関するQ&Aについての改訂について」(平成22年7月29日)のQ31において、検査を行うための入院は重篤な有害事象(以下、SAE)に該当しないとされている一方で、副作用治療のために入院したが特に処置を行っていない場合(安静治療)はSAEに該当するとされています。

また同事務連絡のQ24において、重篤に該当するかどうかは企業(治験依頼者)の責任において判断するとされています。
併せて医師等が重篤と判断した症例は全て「重篤」な症例に該当するが、医師等が重篤でないと判断した症例であっても当該企業が重篤と判断した場合は「重篤」な症例に該当するとなっています。

よって、ご質問のような事例では、被験者の方の入院が治療を伴うものかどうかという治験責任医師の医学的判断と、治験依頼者がどのような理由で治療を伴わない(もしくは伴う)と判断したかがポイントになると考えられますが、あくまで治療入院が確定した時点が第1報を報告するタイミングになります。具体的な事例での判断については、治験依頼者と協議をお勧めします。
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