モニターへの道のトップページへ

GCPのトップページへ

 「GCPガイダンス」と「治験119」の合体:GCPの注意事項、GCPのグレーゾーン(16)
(被験者となるべき者の選定)

第44条 治験責任医師等は、次に掲げるところにより、被験者となるべき者を選定しなければならない。

1)倫理的及び科学的観点から、治験の目的に応じ、健康状態、症状、年齢、同意の能力等を十分に考慮すること。

2)同意の能力を欠く者にあっては、被験者とすることがやむを得ない場合を除き、選定しないこと。

3)治験に参加しないことにより不当な不利益を受けるおそれがある者を選定する場合にあっては、当該者の同意が自発的に行われるよう十分な配慮を行うこと。
==========================================
1 治験責任医師等は、被験者となるべき者の選定に当たり、人権保護の観点から、治験実施計画書に定められた選択基準及び除外基準に基づき、被験者の健康状態、症状、年齢、性別、同意能力、治験責任医師等との依存関係、他の治験への参加の有無等を考慮のうえ、治験に参加を求めることの適否について慎重に検討すること。

2 同意の能力を欠く者については、当該治験の目的上、被験者とすることがやむを得ない場合を除き、原則として被験者としない。

3 「治験に参加しないことにより不当な不利益を受けるおそれがある者」とは、中央薬事審議会答申にある「社会的に弱い立場にある者」の典型例を示したものである。
「社会的に弱い立場にある者」とは、参加に伴う利益又は参加拒否による上位者の報復を予想することにより、治験への自発的参加の意思が不当に影響を受ける可能性のある個人。例えば、階層構造を有するグループの構成員としての医・歯学生、薬学生、看護学生、病院及び検査機関の下位の職員、製薬企業従業員並びに被拘禁者等がある。その他の例として、不治の病に罹患している患者、養護施設収容者、失業者又は貧困者、緊急状態にある患者、?数民族集団、ホームレス、放浪者、難民、未成年及び治験参加の同意を表明する能力のない者があげられる。これらの者を被験者とする場合には、特に慎重な配慮を払うこと。
関連治験119

「質問」
外国人のエントリーの是非について教えていただきたいのですが・・・。少なくとも当院で受託している試験プロトコールにはその是非について記載されていません。
ただ、CRFにはじめからモンゴル人種にチェックのあったものはありました。
医薬品ごとに代謝酵素等々問題がある場合、ない場合があると思います。
問題がある場合のみプロトコールに記載されているのでしょうか、あるいは無条件にNGあるいはOKなのでしょうか。
個人的には、好ましくないとは思いますが、多分どこにもかかれていないと思います。
外国人をエントリーすることは、無条件に海外データを受け入れるに等しいことでブリッジング試験を無視することになると思います。
ただ、外国人というのも曖昧で国籍だけで言えるものでもないと思います。
人種で言うのが正確ですが、その特定も難しいことがあると思います。また世代の問題もあるかと思います。


「製薬協見解」
外国人の治験へのエントリーは、試験プロトコール(以下、「治験実施計画書」)の中で何ら規定(制限)されていないのであれば、意図的に外国人ばかりを対象としない(日本の住民集団の構成比とかけ離れない)限り、「可(問題なし)」として取り扱っていただいて差し支えありません。ただし、この場合、当該被験者に理解できる言語を用いた説明文書によって適切にインフォームド・コンセントを取得する必要があります。
ところで、国内で実施される治験では、ほとんどの場合、外国人のエントリーを避けるための措置、具体的には人種又は民族に関する対象の選択・除外基準の設定、がとられていません。
これは、1)承認申請資料の収集を目的として国内で実施する臨床試験に対して、規制上、「日本人を対象とすることの必要性」が明確に示されていない、2)国内で実施された臨床試験成績は、GCPが遵守され収集・作成され、かつ信頼性基準に適合していれば、一様に日本(人)における有効性及び安全性の評価を行うための資料として受入れられる、といったことにもよります。
一方、治験実施計画書中の対象の選択・除外基準として人種又は民族を規定しておく必要のある場合としては、1)人種又は民族特有のリスク等を予測させるデータが得られている場合(リスク回避の措置として)、2)薬物動態試験、等が上げられます。
なお、被験者の選定に際し人種又は民族を不問としながらも症例報告書への記載を求めるといったことは、1)多国籍企業による治験、2)multinational trial(同一プロトコールによる多国間試験、今後その実施が増加すると予想されている)、等において多く採用されているようです。
質問番号:2005-16 他治験での追跡期間中の被験者の治験参加

今回は、治験開始する時点でそれ以前に治験に参加されており、その追跡期間にある方の対応について教えて頂きたいと思います。
私の私見としては追跡と言えども、治験の期間なのでその追跡は同意撤回と判断し、新たに同意頂いた時点でそれ以降の情報は提供しないと考えておりました。
しかし、以前に参加されていた治験の有害事象の追跡期間であり次治療開始されていない同意のみの期間である場合には、2社が同じ被験者の情報を共有する事例があると聞きました。(同じ時期にモニタリングを実施)
また、生存確認のみでモニタリングする必要もないので、生存か否かの情報のみ頂きたいと企業側が希望された場合には、施設はどのような対応が可能か教えて頂ければ幸いです。


製薬協見解

ご質問の背景に不明確な点がありますが、理解した範囲内で以下のように見解を述べさせていただきます。
1) 治験実施計画書で予め定められた、投与終了後の観察期間(たとえば、2週間とか、4週間とか)であれば、治験実施中であり、次の治験への参加は不可と考えます。
2)上記1)の投与終了後の観察期間中に認められた有害事象が、治験実施計画書の規定に基づいてさらに正常値あるいは症状が安定するまで追跡することになっている場合、通常は投与終了後の観察期間中に因果関係があると思われる事象が対象になると考えられ、この場合も「治験実施中」に該当するため、次の治験への参加は不可と考えます。治験責任医師が追跡調査対象の事象に対して、追跡の必要なしと判断した場合は、これを以て当該治験は終了とし、その後、次の治験への参加の可否を、次の治験実施計画書の選択・除外基準に基づき、治験責任医師が判断することになると考えます。
3)生存期間確認のための調査
これは治験実施期間とは別に、参考までに生存のみを確認するためであれば、先行する治験は終了しているとみなし、よって、新たな治験への参加は問題ないと考えます。
質問番号:2007-07 生活保護受給者の治験参加

生活保護者の治験参加の場合には、負担軽減費や特療費(保険外併用療養費)等について保険事務所とよく相談しなけらばならないということは聞いたことがあるのですが、実際にその経験をしたことがありません。もしそのような場合には、具体的にどのようなことに注意すべきでしょうか。


製薬協見解

生活保護受給者が治験へ参加される場合は、社会的弱者への配慮及び生活保護制度への影響を検討する必要があります。
社会的弱者への配慮については、主に治験審査委員会で審査することになります(GCP第32条第1項/第2項ガイダンス1)。
また、生活保護制度への影響については、負担軽減費を受け取ることによって、生活保護の適応除外又は保護費減額の事由になり得ますし、保険外併用療養費制度は原則として適用できません(生活保護法第52条第2項)。これらの点につきまして、生活保護受給者を管轄する福祉事務所への問い合わせが必要です。福祉事務所に対して予定される支払い費用を説明すると共に、院内並びに被験者と調整を図り、生活保護受給額に影響がでる可能性があることを説明した上で、被験者にとって最も望ましい対応をとることが重要と考えます。
質問番号:2007-09 生活保護受給者の治験参加に対する治験審査委員会での審査

質問番号2007-07の回答につきまして、1点追加で伺いたいことがございます。
「社会的弱者への配慮については、主に治験審査委員会で審査することになります(GCP第32条第1項/第2項運用通知1)」について、あらかじめ生活保護被験者(社会的弱者)エントリー前に審査されていないと問題が生じるというものなのでしょうか。もし仮に当局の実地調査にて上記審査がなされていないにも関わらず、エントリーがされていた場合を追求されたとしても、福祉事務所及び責任医師、被験者ご本人様との間で被験者様が不利にならないよう調整が取れていれば問題ないような気がします。ただし、このような見解は一般的な見解としてふさわしくなく、治験119番事務局様としてご回答しにくいことは十分に承知いたしております。もしご回答いただければ(主観的なご判断でも構いません)ご教授願いたいところでございます。


製薬協見解

GCP第32条第1項/第2項ガイダンス1では、「治験審査委員会は、すべての被験者の人権の保護、安全の保持及び福祉の向上を図ること。社会的に弱い立場にある者を被験者とする可能性のある治験には特に注意を払うこと」とあります。
したがって、治験薬の特性又は対象患者として、社会的弱者をエントリーする可能性のある治験又は実施医療機関においては、治験実施計画書にこのような被験者に対する倫理(人権)、安全性及び福祉に十分配慮した規定があることを確認しておく必要があると考えられます。
一方で、生活保護受給者(以下、「当該被験者」)については、負担軽減費を受け取ることによって、生活保護の適応除外又は保護費減額の事由になり得ます。また、保険外併用療養費制度は原則として適用されません(生活保護法第52条第2項)。そのため、当該被験者が治験に参加するにあたっては、生活保護制度への影響、費用の負担方法について、福祉事務所、治験実施医療機関及び被験者間で調整が必要になりますので、治験審査委員会は、当該被験者が治験に参加する前に上記のような調整が行われることを確認していれば、個々の治験又は被験者毎に、当該被験者の治験への参加の可否を審査する必要はないものと思われます。
質問番号:2007-34 観察期間に一度脱落した被験者の再組入れ

「観察期間除外例の再同意後の組入れ」について教えていただきたく、お願い致します。
観察期間での選択・除外基準にひっかかり、登録・割付に至らなかった症例が、一定期間の後に再同意を取得して観察期間に組入れることは可能でしょうか?
検査等の特殊事情により、観察期間に入った時点における当該症例の状態が偶然的に基準にひっかかったと考えられる場合には、再同意を取得して治験を一から始めることにより問題ないと考えています。治験薬投与前である観察期間の除外であるので、治験薬の有効性や安全性の評価に対してバイアスを与えることも無いと考えています。


製薬協見解

治験への参加同意後の観察期間中に、選択・除外基準に抵触してしまった被験者に対して、治験実施計画書にて再度の治験参加についての規定が記載されていない場合、通常、脱落症例扱いになるかと思われます。

GCP第44条第1項ガイダンス1として、「治験責任医師等は、被験者となるべき者の選定に当たり、人権保護の観点から、治験実施計画書に定められた選択基準及び除外基準に基づき、被験者の健康状態、症状、年齢、性別、同意能力、治験責任医師等との依存関係、他の治験への参加の有無等を考慮のうえ、治験に参加を求めることの適否について慎重に検討すること」と規定されています。

ご質問のような経緯にて、脱落となった被験者に対して、再度、同一治験の対象として取り扱うことの妥当性については、医学的な観点から慎重に判断する必要があります。特に、他の治療法により被験者に十分な利益がもたらされると考えられる場合には、再度の組入れに一層の配慮が必要と思われます。

また、被験者に対して治験への参加を強要しているような印象を与えてしまう可能性もありますので、倫理面からも慎重に判断する必要があります。

また、ご質問では、治験薬の有効性及び安全性の評価に対するバイアスの面について触れられていますが、今回のケースは、被験者の利益と倫理面を最重要と考え判断すべき事項と考えられます。再度の治験参加について、医学専門家及び治験責任医師と綿密に協議された上で、治験依頼者として最終的な組入れの可否を判断されることをお勧めします。
質問番号:2008-45 治験契約前における患者への治験情報の提供

治験審査委員会での承認後、治験の契約が締結される前に、治験の説明を候補の患者さまにお話することは可でしょうか。
ある治験において、契約締結前に、医師が候補の患者さまに口頭で治験の説明をした旨の記録がカルテに残っていました。契約締結前に患者さまに治験の説明をしてもいいものでしょうか。

患者さまに、治療のひとつとして紹介がてら治験のお話をするケースもあると思うのですが、そういったケースであれば契約締結前でも治験の話をすることはどこまでなら可能でしょうか。また、契約締結前に、患者さまに対し治験の話をする上で注意点などあれば教えて下さい。


製薬協見解

治験は、実施医療機関の長が治験審査委員会の意見に基づいて治験の実施を了承し契約締結を行った後に開始されることになります。

したがって、治験の契約が締結されていない前に、患者さんに対して医師やCRCが当該治験の具体的な内容や治験参加への説明を行うべきではありません。
しかし、近年は治験に関する情報が公開されており(例http://www.clinicaltrials.jp/user/cte_main.jsphttp://www.umin.ac.jp/ctr/index-j.htmhttp://rctportal.niph.go.jp/search)、患者さんから特定の治験について質問があった場合には、当該治験や実施予定について説明することは、医師の責務としてやむを得ない面があると思われます。

この場合は、患者さんからの質問に答えた旨を記録に残し、契約締結後にインフォームドコンセントを行うことで問題ないと思われます。

被験者候補の患者さんに口頭で治験の説明をした旨の記載があり、ご心配されているとのことですが、治験の説明にも様々なケースが考えられますので、実際に、患者さんに対してどのような説明がなされたのかを医師に確認されては如何でしょうか。

なお、治験に関する一般的な説明(医薬品開発における治験の位置付け、研究を伴うこと等)、患者さんの疾患を対象とした治験が実施されていることの一般的紹介程度であれば問題ないと考えますが、治験の内容(特定の治験実施計画書の記載内容)に踏み込んだ説明を行うことは問題と考えます。
(被験者に対する責務)

第45条 治験責任医師等は、治験薬の適正な使用方法を被験者に説明し、かつ、必要に応じ、被験者が治験薬を適正に使用しているかどうかを確認しなければならない。

2 治験責任医師等は、被験者が他の医師により治療を受けている場合には、被験者の同意の下に、被験者が治験に参加する旨を当該他の医師に通知しなければならない。

3 実施医療機関の長及び治験責任医師等は、被験者に生じた有害事象に対して適切な医療が提供されるよう、事前に、必要な措置を講じておかなければならない。

4 治験責任医師等は、被験者に有害事象が生じ、治療が必要であると認めるときは、その旨を被験者に通知しなければならない。
==========================================

〈第1項〉

1 治験責任医師は、治験薬が承認された治験実施計画書を遵守した方法でのみ使用されることを保証すること。

2 治験責任医師等は、治験薬の正しい使用方法を各被験者に説明、指示し、当該治験にとって適切な間隔で、各被験者が説明された指示を正しく守っているか否かを確認すること。

〈第2項〉

1 第2項の趣旨は、被験者が既に受けている治療において投与されている医薬品等との相互作用等による被験者の健康被害を防ぐためのものであること。

2 治験責任医師等は、被験者に他の主治医がいるか否かを確認し、被験者の同意のもとに、主治医に被験者の治験への参加について知らせること。

〈第3項〉〈第4項〉

1 治験責任医師は、治験に関連する医療上のすべての判断に責任を負うこと。

2 実施医療機関の長及び治験責任医師は、被験者の治験参加期間中及びその後を通じ、治験に関連した臨床上問題となるすべての有害事象に対して、十分な医療が被験者に提供されることを保証すること。また、治験責任医師等は、有害事象に対する医療が必要となったことを知った場合には、被験者にその旨を伝えること。

3 被験者が治験の途中で参加を取り止めようとする場合、又は取り止めた場合には、被験者はその理由を明らかにする必要はないが、治験責任医師等は、被験者の権利を十分に尊重した上で、その理由を確認するための適切な努力を払うこと。
関連する治験119

質問番号:2004-06 治験中に被験者が受診した他の医療機関からの診療情報収集

当院で治験実施中の患者さまが他の医療機関を受診された場合,その医療機関における必要な患者情報を入手するために,主治医に書面やお電話で情報提供をご依頼したのにもかかわらず,思うように結果が得られないことがあります。
何度か情報収集に努めたにもかかわらず,十分な情報が提供されなかった場合,その時点で得られた情報のみを報告すればよいのでしょうか。
また,他の医療機関に対して,臨床試験における情報収集の目的で,カルテの開示を求めることは可能でしょうか。
そのような場合には,法律を守るためにどのような手続きをとればよいのでしょうか。
臨床試験における,カルテ開示に関する法的手続きなどを含めてお教えいただきたく,よろしくお願い申し上げます。


製薬協見解

医療機関の間での診療情報提供について、現在調査した範囲では、医療法第1条の4第3項、保険医療機関及び保険医療養担当規則第16条の2、及び「診療情報等の提供に関する指針」(平成22年9月17日改正厚生労働省医政局医事課)の10にありますが、いずれも提供する情報の範囲については明記してありません。診療録の第三者への開示については、秘密の漏洩に関する規定(医療法第72条)以外は、手続きに関する法的規制は調査した範囲ではありませんでした。
治験の安全性、有効性を確認(特に、被験者の安全性を確保)する上で、治験中の他の医療機関による診療情報は重要です。

他の医療機関に診療情報の提供を依頼する手順として以下のことが考えられます。まず、被験者の方から文書で同意を得た上で、その同意文書を添付して治験責任医師が文書で依頼します。依頼をされる際に、治験に参加していただいている被験者の安全性確保に他の医療機関の診療情報が重要であること、必要とされる情報の範囲を明確にすると他の医療機関も診療情報の提供について理解し、提供していただきやすいと考えます。提供された情報及び被験者の方から得た情報(他の医療機関で薬剤が処方されている場合は、その薬を持参してもらい内容を確認します)の範囲で症例報告書に記載することになります。

尚、想定はできませんがご質問にあります、他の医療機関の診療録の内容を確認する必要性が生じた場合、他の医療機関の診療録の内容を確認することが必要と判断された場合は、被験者の方の同意を文書で得た上で、治験責任医師が上記と同様にして依頼することになります。ただし、診療録の第三者への開示については、法的に定められた手続きは調査した範囲では見当たりませんので、相手の医療機関とご相談の上、その院内手続きを尊重して行うことになると考えます。また、診療録の開示は通常患者本人又は患者が死亡の場合は遺族にのみ認められていること、及び個人情報の保護に十分留意されることが必要と考えます。

いずれにしても、診療録に適宜これらを記録し、また、診療情報の提供の依頼及び情報の受領は文書で行い、原資料の一部として保管するようお願いします。
(治験実施計画書からの逸脱)

第46条 治験責任医師は、被験者の緊急の危険を回避するためその他医療上やむを得ない理由により治験実施計画書に従わなかった場合には、すべてこれを記録し、その旨及びその理由を記載した文書を直ちに治験依頼者が治験を依頼する場合にあっては治験依頼者及び実施医療機関の長に、自ら治験を実施する者が治験を実施する場合にあっては実施医療機関の長に提出しなければならない。

2 治験依頼者が治験を依頼する場合における前項に規定する文書の提出については、第10条第2項から第6項までの規定を準用する。この場合において、これらの規定中「治験の依頼をしようとする者」とあるのは「治験責任医師」と、「実施医療機関の長」とあるのは「治験依頼者」と読み替えるものとする。
==========================================

1 治験責任医師又は治験分担医師は、治験責任医師が治験依頼者との事前の文書による合意及び治験審査委員会の事前の審査に基づく文書による承認を得ることなく、治験実施計画書からの逸脱又は変更を行ってはならない。ただし、被験者の緊急の危険を回避するためのものであるなど医療上やむを得ないものである場合又は治験の事務的事項(例:治験依頼者の組織・体制の変更、実施医療機関の名称・診療科名の変更、実施医療機関及び治験依頼者の所在地又は電話番号の変更、治験責任医師の職名の変更、モニターの変更)のみに関する変更である場合には、この限りではない。

2 治験責任医師又は治験分担医師は、治験実施計画書から逸脱した行為を理由のいかんによらずすべて記録しておくこと。
治験責任医師は、逸脱した行為のうち被験者の緊急の危険を回避するためその他医療上やむを得ない理由により治験実施計画書に従わなかったものについてのみ、その理由を記載した文書を作成し、直ちに治験依頼者及び実施医療機関の長に提出すること。

3 自ら治験を実施する者による治験において、治験責任医師又は治験分担医師は、治験実施計画書から逸脱した行為を理由のいかんによらずすべて記録しておくこと。
治験責任医師は、逸脱した行為のうち被験者の緊急の危険を回避するためその他医療上やむを得ない理由により治験実施計画書に従わなかったものについてのみ、その理由を記載した文書を作成し、直ちに実施医療機関の長に提出すること。

4 治験責任医師又は治験分担医師は、被験者の緊急の危険を回避するためのものである等医療上やむを得ない事情のために、治験依頼者との事前の文書による合意及び治験審査委員会の事前の承認なしに治験実施計画書からの逸脱又は変更を行うことができる。
その際には、治験責任医師は、逸脱又は変更の内容及び理由並びに治験実施計画書の改訂が適切な場合にはその案を可能な限り早急に治験依頼者並びに実施医療機関の長及び実施医療機関の長を経由して治験審査委員会に提出してその承認を得るとともに、実施医療機関の長の了承及び実施医療機関の長を経由して治験依頼者の合意を文書で得ること。

5 治験責任医師は、無作為割付の手順が規定されている場合にはこれに従い、治験薬割付記号が治験実施計画書を遵守した方法でのみ開封されることを保証すること。盲検法による治験において予め定められた時期よりも早い段階での開封(事故による開封、重篤な有害事象のための開封など)を行った時は、治験責任医師はこれをその理由とともに速やかに文書に記録し、治験依頼者による治験においては治験依頼者に提出し、自ら治験を実施する者による治験においては自ら治験を実施する者が保存すること。

6 治験責任医師は、治験の実施に重大な影響を与え、又は被験者の危険を増大させるような治験のあらゆる変更について、治験依頼者、実施医療機関の長及び実施医療機関の長を経由して治験審査委員会等に速やかに報告書を提出すること。

7 治験責任医師は、自ら治験を実施する者の実施する治験においては、被験者の緊急の危険を回避するためその他医療上やむを得ない理由により治験実施計画書に従わなかった場合には、実施医療機関の長にその旨及びその理由を記載した文書を直ちに提出すること。
なお、提出された内容については、実施医療機関の長を経由して治験審査委員会等に速やかに報告すること。
質問番号:2007-11 治験実施計画書からの逸脱記録が必要な範囲(その1)

治験薬を1日2回朝夕食後、1年間服用する治験があります。治験依頼者より、1回でも治験薬を飲み忘れた場合は、逸脱として扱い、逸脱報告書を提出するよう言われました。
治験依頼者の見解は、治験実施計画書中に明確に逸脱としないことを宣言していない事柄については、逸脱とすべきであるとの観点から、1回でも飲み忘れた場合は逸脱扱いとするそうです。
他の治験の場合ですと、治験実施計画書に記載されていない場合でも、治験薬服薬率が80%以上であれば逸脱としないなど、治験依頼者によって対応が異なります。
1回でも飲み忘れた場合、逸脱報告書を記載することが本当に必要なのでしょうか。本当に必要なものなのかどうかよくわからないため、教えていただけますと幸いです。


製薬協見解

GCP第46条ガイダンス2に、「治験責任医師又は治験分担医師は、治験実施計画書から逸脱した行為を理由のいかんによらず全て記録しておくこと。治験責任医師は、逸脱した行為のうち被験者の緊急の危険を回避するためその他医療上やむを得ない理由により治験実施計画書に従わなかったものについてのみ、その理由を記録した文書を作成し、直ちに治験依頼者及び実施医療機関の長に提出すること」とあります。治験薬の飲み忘れは、緊急の危険回避には該当しないと思われますので、逸脱報告書の提出は不要と考えます。
ただし、服薬率に対する逸脱の考え方については、対象疾患、薬物の用法用量や体内動態によって薬効評価への影響が大きく変わることから一律に論じることはできません。そのため、治験依頼者は治験毎に治験実施計画書等で服薬遵守率に対する逸脱の取扱いを規定しています。この規定によっては、たとえ1回の飲み忘れであっても、逸脱として取扱う場合があり、その場合は逸脱した事実がわかるように記録しておくことが必要になります。
したがいまして、治験依頼者との事前の文書による合意がない場合には、上記を考慮の上、逸脱として取扱うか否かを治験依頼者と協議することをお奨めします。
質問番号:2008-22 治験実施計画書からの逸脱記録が必要な範囲(その2)

平成20年10月1日発出されたGCP運用通知(薬食審査発第1001001号)について、以下の点を教えて下さい。

「被験者の緊急の危険を回避するため、その他医療上やむを得ない理由による治験実施計画書からの逸脱」(GCP第46条運用通知2)及び「治験の実施に重大な影響を与え、又は被験者の危険を増大させるような治験のあらゆる変更」(GCP第46条運用通知6)が生じた場合には、治験責任医師は当該逸脱/変更を治験依頼者及び実施医療機関の長に文書で報告することが求められています。

@ 上記逸脱/変更に該当するかどうかは、誰が判断するのでしょうか?

A 上記逸脱/変更に該当しない軽微な逸脱について、治験依頼者から報告書の提出を求められた場合、どのように対応すればいいでしょうか?


製薬協見解

@ 医療上の判断は、当該被験者を診ている医師でないと判断できないと考えます。よって、判断するのは治験責任医師又は治験分担医師と考えます。

A 基本的に、GCPでは求めていないことですから拒否しても構わないと考えますが、当該逸脱報告書の提出を治験実施計画書等で規定している場合等も考えられますので、平成20年10月1日時点で実施中の治験については、治験依頼者と実施医療機関で取扱いを協議しておく必要があると思います。
当該逸脱報告書の廃止にあたっては、実施医療機関と治験依頼者の役割分担を明確にしておくことが重要です。
即ち、実施医療機関は、逸脱したことを認識し再発防止に努め、モニターは、再発防止の措置を講じているか確認し、取られていなければ注意喚起して措置を講じることです。
質問番号:2008-40 「治験に影響を与え、又は被験者の危険を増大させるようなあらゆる変更」の例

GCP第46条「治験実施計画書からの逸脱」では緊急逸脱のみ理由を記載した文書を作成し、直ちに実施医療機関の長に報告することとありますが、運用通知同条解説6では、治験責任医師が「治験に影響を与え、又は被験者の危険を増大させるようなあらゆる変更」する場合とありますが、どのような事例と思われますか?

例えば、治験実施計画書の除外基準で規定した症状を持った被験者には投与しないようにと規定してあったにもかかわらず、医師が治験実施計画書を遵守せず、間違って症状を持った被験者に上記治験薬を投与してしまった場合等の逸脱事例は含まれますか?
この場合、治験責任医師は、従来のように報告書を作成し、医療機関の長と治験依頼者に内容と経緯及び対応について報告し、医療機関の長はIRBに報告するよう要請してよいと思われますか?


製薬協見解

GCP第46条ガイダンス6には「治験責任医師は、治験の実施に重大な影響を与え、又は被験者の危険を増大させるような治験のあらゆる変更について、治験依頼者、実施医療機関の長及び実施医療機関の長を経由して治験審査委員会等に速やかに報告書を提出すること」とあります。

この、「重大な影響」ですが、治験の科学的評価に対して影響を与えるような変更が該当すると考えられます。
また、「被験者の危険を増大させるような変更」は、明らかに被験者の安全性に対して重大な影響を与える可能性が高い変更が該当すると考えられます。

上記のような変更の具体的な事例や個々の変更が上記変更に該当するかどうかにつきましては、治験薬の特性や治験の目的等により左右されますので、治験依頼者にご確認ください。
 ■次を見る>>

このページのトップへ

GCPのトップページへ

モニターへの道のトップページへ

inserted by FC2 system