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 治験のまとめのホームページ
 IRBの基礎/治験責任医師と関係のある委員について
 「治験責任医師と関係のある委員」の範囲(その1)
  
(背景)
  • 無床クリニックの治験審査委員会で、構成は委員7名、専門家3名、外部委員2名及び非専門家2名
  • 院長が治験責任医師で、治験分担医師はいません
  • 専門家委員の1名が、月に1度、院長の代診をしていますが、治験の対応はしていません。当該委員が治験審査委員会の審議及び採決に参加したことについて、GCP第29条第1項 運用通知1にある「治験責任医師と関係のある委員は、治験審査委員会における当該治験に関する事項の審議及び採決に参加してはならない」に抵触するため、IRBが成立しないと治験依頼者より問い合わせがありました。

 質問1
 月に1度代診をしていることで、治験責任医師と関係のある委員となりますでしょうか。

 質問2
 仮に審議及び採決に参加できないとしても、治験審査委員会は成立すると思いますが、当該委員が参加していたことで、治験審査委員会が不成立となりますでしょうか。


     ↓

ご質問の1について

 審査の対象となる治験に係る審議及び採決に参加することができない委員としては、GCP第29条第1項の第1号〜第3号が該当します。
また、同条同項に対しますガイダンスでは、ご質問のケースが「治験責任医師と関係のある」委員に該当するか否かについては示されておりません。

一般論としまして、治験を担当していないことを踏まえると、代診を行うだけであれば問題ないものと考えられます。
ただし、実際に「治験責任医師と関係のある」委員かどうかは、より詳細な背景情報を元に個々に判断する必要があると思われます。


 ご質問の2について

 GCP第29条にて規定されています審議に参加できない委員が、審議及び採決に参加していた場合、当該治験の審議結果については不成立とみなされます(言い換えると、審議及び採決に参加していなければ成立します)。

緊急又は次回開催の治験審査委員会にて再審議、又は審議結果の再確認を行っておく必要があると考えられます。



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 「治験責任医師と関係のある委員」の範囲(その2)
治験審査委員会委員長が変更されることになりました。

現在、進行中の治験の治験分担医師が新たな委員長です。そこで、治験分担医師から削除しましたが、これで「GCP第29条第1項の1」を回避することは可能でしょうか?

 なお、治験責任医師は当該科の部長ですが、新委員長の診療科は同一ですが職位は院長補佐です。
この場合も治験責任医師が部下と解釈されますか?

      ↓

治験審査委員会委員長が治験分担医師として係っておられる治験の審議案件に対しましては、審議及び採決には参加できません。
したがって、治験分担医師の削除(本人)に対します審議には参加できませんが、その後の当該治験の審議に対しましては問題ありません。

 GCP第29条第1項ガイダンス1に規定されています「治験責任医師と関係のある委員」とは、治験責任医師、治験分担医師及び治験協力者と解されます。

治験審査委員会委員長と治験責任医師の所属診療科の関連性及び職位における上下関係については、実施医療機関の手順書及び治験審査委員会の手順書にて規定されてない限り、問題ないものと考えます。




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 「治験責任医師と関係のある委員」の範囲(その3)
最近当院に申請のあった治験で、同一の治験実施計画書でそれぞれ別々の診療科(2診療科、それぞれ(1)、(2)とします)で行われるものの審査が行われました。

 この審査にあたり、治験審査委員のうちの一人が(1)の申請診療科のドクターであったため公平な審査ができないと考え、(1)の採決には関わらないことし、(2)についてのみ審査には関わっていただくという対応をとりました。

 ところがその後治験依頼者より、同一の治験実施計画書であるのだから、同委員が(2)の審査に関わることが問題だというクレームを受けました。事務局としては当方の対応でGCP上は問題ないと考えるのですが、治験依頼者の主張されるとおり、この様な場合は公平な審査が行えないものとして取り扱ったほうがよろしいのかご教示下さい。

     ↓

(1)の申請診療科の医師が当治験の治験責任医師、治験分担医師、治験協力者の場合には、GCP第29条第1項第3号に規定されていますように、当該治験に係る審議及び採決に参加することができませんが、いずれでもでない場合には、診療科(1)及び診療科(2)における治験の実施に対して審議及び採決に参加することに問題はないと考えます。
(2011-13の見解もご参照下さい)



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「治験責任医師と関係のある委員」の範囲(その4)
現在当院にて、実施中の同じ治験を他院でも実施しており、他院での治験継続可否についての審議を当院治験審査委員会にて受託しています。

当院の治験責任医師、治験分担医師及び治験協力者は、他院の治験責任医師、治験分担医師及び治験協力者とは全く別の者ですが(他院の本治験には係わっていません)が、その他院での本治験に関する審議、採決に参加できないのでしょうか?

     ↓

治験審査委員会では、GCP第10条第1項各号に掲げる文書に基づき審査を行わなければならないとされています。

これらの文書のうち治験実施計画書については、実施医療機関の適切性(機器・設備やスタッフ等)、治験責任医師の適格性あるいは治験責任医師が作成する説明文書などに対する審査とは異なり、治験計画の内容そのものについての審査となります。当該治験を実施する治験責任医師等が治験計画の内容についての審査に参加することは治験審査委員会の独立性の面で適切でないと考えられます。

 したがいまして、貴院の治験責任医師、治験分担医師及び治験協力者は、他院の本治験に係わっていなくても審議、採決に参加することはできません。



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  「治験責任医師と関係のある委員」の範囲(その5)
当病院ではすべての治験に関する案件を、院内の治験審査委員会で、審議、採決しています。

また、治験の円滑な実施のために臨床試験管理センターが院長直属の機関として設置されており、治験事務局、IRB事務局、CRC等の業務を行う者が配置されています。

 IRB委員の一人がこの臨床試験管理センターの副センター長となっているのですが、IRB委員の要件としてGCP上これは問題とならないでしょうか?


   ↓

ご質問の「臨床試験管理センター副センター長」が、GCP第28条第1項第1号にありますように、治験について倫理的及び科学的観点から十分に審議を行うことができる方であれば、IRBの委員の要件を満たしています。

 一方、GCP第29条第1項第3号には、実施医療機関の長、治験責任医師等又は治験協力者は審査の対象となる治験に係る審議及び採決に参加できない旨が規定されています。

「臨床試験管理センター副センター長」は治験事務局及びCRCの所属部署責任者でありますが、ご自身が治験責任医師、治験分担医師又は治験協力者とならない限りは、当該治験の審議及び採決に参加することに問題はありません。

 なお、過去の見解2009-16もご参照下さい。


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 治験薬管理(担当)者である委員の治験審査委員会審議・採決への参加の可否
治験薬管理補助者がIRB委員の場合、該当する治験の審議・採決への参加ができますか?
 GCP第29条第1項運用通知1でいうところの「治験責任医師と関係のある委員」の「治験協力者」に該当すると考えられますか?
 当院のSOPでは「当該治験に関係のある委員はその審議及び採決に参加できない」とあります。

   ↓

質問番号(2009-16)への見解にも記載しましたように、GCP第29条第1項ガイダンス1の「治験責任医師と関係のある委員」とは、治験責任医師、治験分担医師及び治験協力者と解されます。

治験薬管理者は概ね以下のような業務を行う者(GCP第39条ガイダンス4)であり、治験薬管理補助者は治験薬管理者の業務を補助する者ですので、職制としましては治験薬管理者、治験薬管理補助者とも「治験責任医師と関係のある委員」と見なす必要はなく、当該治験の審議・採決に参加されても問題ないと考えます。

  • 治験依頼者より治験薬を受領
  • 治験薬の保管、管理
  • 被験者への治験薬の払出し
  • 未使用治験薬の治験依頼者への返却

一方、治験薬の管理業務の範囲を超えて、治験分担医師又は治験協力者が行うような業務(GCP第2条ガイダンス 5、第43条第1項ガイダンス 1参照)の一部を担当されるのでしたら、該当する治験の審議・採決には参加できません。

 なお、貴院のSOPで規定されています「当該治験に関係のある委員はその審議及び採決に参加できない」の範囲につきましては、GCP第29条に従うとともに、貴院にて追加すべきと判断される範囲・要件がございましたら、SOPに明記しておくことが望ましいと考えます。

(GCP第2条ガイダンス5)
 第14項の「治験協力者」とは、実施医療機関において治験を実施するチームのメンバーで、治験責任医師によって指導・監督され、専門的立場から治験責任医師及び治験分担医師の業務に協力する者である。
(GCP第43条第1項ガイダンス1)
 治験責任医師は、治験関連の重要な業務の一部を治験分担医師又は治験協力者に分担させる場合には・・・(中略)その了承を受けること。

【見解改訂理由】
 治験薬管理補助者だけでなく、治験薬管理者も「治験責任医師と関係のある委員」と見なす必要がない旨が理解しやすいように、見解の表現を一部変更しました。


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 治験審査委員会委員の適格性

新規治験を依頼する上で、治験審査委員会の構成についてお尋ねします。

 治験依頼予定の医療機関(クリニック)には治験審査委員会が組織されているのですが、その委員長が医療機関の長の妻ということで公平な審査ができるのかという部分で疑問があります。

治験責任医師候補でもある医療機関の長は生活を共にすることと、治験の審議は切り分けて考えているので問題はないと主張されているのですが、GCP上の問題はありますでしょうか。

 なお、この治験審査委員会の医師は委員長一人であり、採決に不参加とすると医師はいなくなることになります。


    ↓

ご質問の内容は、治験責任医師(=実施医療機関の長)の配偶者が、治験審査委員会の委員(委員長)として選任されているというケースですが、審議及び採決に参加することができないと規定されているGCP第29条第1項第1号〜第3号には該当していません。

さらに、GCP第29条第1項ガイダンス1では、「治験責任医師と関係のある委員は、治験審査委員会における当該治験に関する事項の審議及び採決に参加してはならない」と補足されていますが、この「関係のある」ということに対して、ご質問のケースが該当するか否かについて具体的なことまで解説されていません。

 治験責任医師の配偶者であるという点だけをもって、GCP上、不適切な委員であると断定することはできませんが、当該委員長が独立した立場で院長に意見を言うことができるか否かを個々に判断する必要があると思われます。

 なお、GCP第28条第1項にて治験審査委員会の要件として「治験について倫理的及び科学的観点から十分に審議を行うことができること」、また、GCP第28条第1項ガイダンス10にて「治験審査委員会は、委員以外の特別な分野の専門家に出席を求め、その協力を得ることができる」との規定があります。

当該治験審査委員会の構成として、医師の資格を有する委員が1名であることに対する実施医療機関の長(治験審査委員会の設置者)の見解を確認するとともに、委員の追加又は委員以外の専門家への協力要請を提案する等の対応を行っておくことも大切かと考えられます。

【見解改訂理由】
「医薬品の臨床試験の実施の基準の運用について」の改訂(平成23年10月24日)に伴い、GCP第29条第1項ガイダンス1の解説を変更しました。




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