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 治験責任医師の基礎/治験責任医師の異動・交代について
 治験責任医師の異動/交代(その1)
  

契約終了後、治験責任医師が異動して後任者が存在しない場合の書類の手続についての質問です。契約が年度末で終了する治験で、たまたま治験責任医師も同時期に異動があり、他施設へ移られるといった場合、4月以降発生する書類において、治験責任医師の不在により不都合が生じます。

 契約を継続する場合は、後任の治験責任医師が引き継ぐため、問題ないのですが、上記の場合、全く治験責任医師不在の状態となってしまいます。

 例えば、当院では、新GCP施行後、治験終了時、診療科長、治験責任医師より、(様式では連名)病院長へ治験終了報告書を提出することになっていますが、治験終了報告書の提出が、年度を越えた場合、治験責任医師として当該書類を提出する者がおりません。

 こういった場合は、診療科長の署名捺印のみでも、GCP上、問題ないでしょうか?


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治験終了報告書を実施医療機関の長に提出すべき治験責任医師が不在ということになりますので、GCP第49条第3項や貴施設の規程に照らしても、問題ないとはいえません。

このため、実施医療機関の関係者の方々には、例えば、下記の点にご留意いただくなどして、上述のような事態を回避願いたいと考えています。

治験責任医師:(1) 異動日までに治験終了が見込まれる場合、治験終了後速やかに治験終了報告書を提出する。(2) 異動日までに治験終了が見込めない場合、治験責任医師変更の手続きを速やかに実施する。

治験事務局等:治験責任医師に対して、異動情報の入手時又は定期的に、治験終了報告書の提出の必要性について連絡をとる。

 治験責任医師から治験終了報告書が実施医療機関の長に提出された以降については、GCP上、治験責任医師宛に又は治験責任医師から発出されなければならない文書はありませんので、実施医療機関固有の文書については、各実施医療機関の判断で取扱っていただいてよいと考えています。

なお、治験終了報告書提出後において、治験依頼者が症例報告書に関連してお問い合わせしたり、監査に伺ったりすることがありますので、それらの受入れと関連文書の保存等に関して治験責任医師と治験分担医師あるいは治験協力者との間の受け継ぎ体制作りをお願いします。

【見解改訂理由】
 「医薬品の臨床試験の実施の基準の運用について」の改訂(平成23年10月24日)に伴い、治験終了報告書への治験責任医師の記名捺印又は署名の必要性を再検討し、見解中の説明を変更しました。

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 治験責任医師の異動/交代(その2)

 「3月31日付けで退職予定の治験責任医師のあと、4月から責任医師となることが予定されている医師に対し、まだ赴任していない3月のIRBにおいて治験責任医師の変更をあらかじめ審査し、4月1日より赴任した病院において治験責任医師になることができますか?」

 少し分かりにくい文章で恐縮ですが、ご教示いただきたく思います。

 ちなみに同僚の中でも意見がわかれており、私個人はダメであると思っているのですが、可能であるとの見解をもっている人もいます。それぞれ根拠もあるのですが、本来はどうなのでしょうか。


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治験責任医師の急な転出に関して、新GCPに関するQ&Aハンドブック改訂版(発行:エルゼビア・ジャパン株式会社)の6-A4において、以下のように記載されています。

 「治験責任医師の転出の場合には、治験責任医師の変更届をIRBで審議し、治験責任医師の不在期間がないように検討してほしい。治験責任医師がいない状態での治験実施は不可なので、継続の患者がいる場合、患者が不利にならないよう、迅速に治験責任医師の変更を行われたい。」

 回答のポイントは、治験責任医師の不在期間をなくすこと及び被験者の不利益にならないようにすることであると考えます。

 一方、治験責任医師の変更は、通常以下の手順が想定されます。

  1. 治験依頼者による治験責任医師候補の選定調査/評価
  2. 治験依頼者と新治験責任医師候補との治験実施計画書の合意
  3. 現治験責任医師による被験者への治験責任医師交替のお知らせ/継続意思確認
  4. 新治験責任医師候補による被験者への説明文書の見直し/作成
  5. 新治験責任医師候補による治験分担医師協力者リストの作成及び提出
  6. 医療機関の長による治験分担医師協力者リストの了承
  7. 新治験責任医師等についての治験審査委員会による審査
  8. 変更契約締結
 

上記手順の内、1.は赴任前にGCP第42条の要件を満たしていることを確認することは困難であり(赴任先での時間的余裕、治験スタッフの確保、期間内の被験者確保等)、また、5. が医療機関として受け付けられるかも問題になると思われます。

 これらの問題を回避する方法は、現治験分担医師を新治験責任医師とすることですが、諸事情によりこれが不適切な場合には、被験者の不利益にならないよう配慮することが最も重要と考えます。

 継続中の被験者がいる場合には、事前に新治験責任医師候補と赴任後の業務打合せを行い、治験責任医師の要件を満たせるよう配慮すると共に、赴任が確実な場合は、事前に上記手続きが進められるよう医療機関内の規定を整備すれば、新治験責任医師による治験継続は可能であると考えます。

【見解改訂理由】
 「医薬品の臨床試験の実施の基準の運用について」の改訂(平成23年10月24日)に伴い、「医療機関の長による治験分担医師協力者リストの承認」を「医療機関の長による治験分担医師協力者リストの了承」と変更しました。



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治験責任医師の異動/交代(その3)

治験責任医師の異動(退職)後の対応に関する質問です。

 すでに、2004年12月に類似質問の回答がありますが、さらに詳しく教えていただきたいと思います。

質問内容:
治験責任医師に当該治験の専門外の医師がなっても良いのでしょうか?

質問の背景:
 今回、分担医師がいない治験において、治験責任医師が3月末で病院を退職予定となりました。

 しかし、その診療科の後任の医師が来る予定があるのかどうかは現段階では未定です。

 後任が4月1日に着任しない場合は、その診療科の医師は事実上空席状態となり、治験責任医師となる医師の候補も不在となってしまいます。

 治験については、被験者はすべて組み入れを終了しており、症例報告書記載を残すだけの状況です。

 CRFを3月中に完成できるよう働きかけていくことは十分理解していますが、実際の治験期間は19年度も続いており、SDVや各種問い合わせに対応するためにも、やはり治験責任医師の登録は必須だと考えます。

 この場合、後任の医師が来るまでの間、治験の専門領域外の医師を治験責任医師に登録することは可能でしょうか。

 ただし、場合によっては後任の専門領域の医師が来るまでに専門外の医師が治験責任医師のまま治験が終了することもありえますが、それでも問題はないでしょうか。


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ご存知の通り、治験責任医師の変更は、GCP第6条(医療機関等の選定)、第32条(治験審査委員会の責務)、第35条(実施医療機関の要件)、第42条(治験責任医師の要件)等より、まずは治験依頼者が責任医師の選定を行い、それが適格と判断されればIRBでの審議を依頼し、承認されれば新たな治験責任医師による治験実施が可能となります。

 治験分担医師がいらっしゃれば、治験の内容を熟知されていますので、後任として適任と考えます。

しかし、治験分担医師がいらっしゃらない場合、今回、計画された治験薬の使用、検査・観察が終了し、症例報告書の記載のみが治験責任医師としての責務が残っているという由ですので、診療科が異なっていても、その治験の領域及び治験実施計画書の内容がある程度理解できる医師であれば、次善の策としてそのような方を治験責任医師として、IRBの承認を受けることは可能と考えます。

 ただし、前任の治験責任医師への問い合わせや確認などの連絡体制について、後任となるべき治験責任医師と事前に十分協議し、必要な情報が前任の治験責任医師から提供されるよう事前に対策を講じておく必要があると考えます。

 しかし、いずれの場合においても問題がないとは言い切れませんので、やはり可能な限り現在の治験責任医師の退職前に症例報告書の回収まで行うことが最善と考えます。

 また、治験依頼者としては治験責任医師の候補の医師について事前調査、契約書改訂等の作業をする必要がありますので、早めに治験依頼者にご相談されることをお勧めします。

 なお、何らかの理由により、治験責任医師が責務を果たせなくなった場合に備えて、予め、1名の治験分担医師にそのような場合に治験責任医師となることをIRBで承認、契約書に記載することも可能と考えます。米国では、regulationにはありませんが、principal investigatorの他にその代行を行うco-principal investigatorを置くことが可能になっています。



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治験責任医師の異動/交代(その4)
【背景】
 治験責任医師体調不良のため、緊急入院、長期療養(当分入院)が必要となりました。実施医療機関では治験責任医師交代の手続きを実施中。治験責任医師は入院中であるが、書類等確認できる状態。また、医療機関として代行者は立て、被験者の安全性に配慮し、手続き実施中です。
 現在、速やかに治験実施計画書等の合意がされ、新治験責任医師よりIRB前に治験協力者の指名はされます。

 【質問】
 治験責任医師の交代に伴う種々の変更(治験責任医師の変更、同意説明文書の変更、治験契約書)に関する申請者は、 治験依頼者+現治験責任医師又は治験依頼者+新治験責任医師 のどちらでしょうか。同意説明文書の変更がありますので新治験責任医師での申請は、必要ないのでしょうか。また、同意説明文書のみ別書式を発生したほうがよいのでしょうか。
 現在、治験依頼者より現治験責任医師からの申請でよいとの見解は頂いておりますが、GCP上問題がないかのご教示をお願いいたします。


    ↓

治験責任医師は、治験審査委員会の審議、実施医療機関の長の承認、契約締結を経て正式に任命となります。

治験責任医師の変更の場合、新治験責任医師は候補であり、治験責任医師ではありません。
したがいまして、申請者は「治験依頼者+現治験責任医師」が適切と思われます。

なお、現治験責任医師の病状が芳しくなく申請手続きが行えないような場合は、治験依頼者と協議の上で、「治験依頼者+新治験責任医師」で申請することもやむを得ないと考えます。

 また、説明文書の改訂につきましては、治験責任医師の変更が承認された後に新たな治験責任医師が作成されました改訂版に対する審議依頼を行っていただくことになります。

しかし、すでに、新たに治験責任医師となられる予定の先生が改訂版を作成されているようでしたら、治験を継続的に進めるという観点から、併せて申請していただいても問題ないと考えられます。

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 治験責任医師の異動/交代(その5)
現在進行中の治験施設において、治験責任医師が急遽、入院してしまいました。

 病院の院長先生とお話をして、治験分担医師の先生を治験責任医師に変更する手続きを行うことになりましたが、変更契約が締結されるまでの期間、責任医師の代行業務を、変更予定の先生に行っていただくことは可能でしょうか?

 緊急事態でやむを得ないということで、院長先生と話し合って決めた旨、モニタリング報告書に残そうと思います。併せて、治験審査委員会へ迅速審議をお願いし、後日、定期の審査で正式に審議してもらうことを考えています。

   ↓

治験責任医師が不在となる場合、本来は治験を中止する必要があります。

しかし、ご質問のような突発的なケースの場合、治験継続中の被験者の安全性と福祉保護の見地から、治験分担医師による対応もやむを得ないものと考えます。

 GCP及び治験実施計画書等にて治験責任医師が実施する規定のある事項については、新たな治験責任医師が承認されるまで中止しておくことが望ましいと考えられます。

例えば、新たな被験者への識別コードの割り付け、治験実施計画書等の改訂、治験分担医師・治験協力者の追加、治験に関連する医療上の全ての判断、症例報告書への最終的な署名、等が挙げられます。

また、本件は「迅速審査」の対象とはなりません。
むしろ、治験審査委員会の緊急開催を依頼して、早急に審議していただくことが望ましいと考えます。


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 治験責任医師の異動/交代(その6)
ある実施医療機関の治験責任医師が急死されました(全く予測不可でした)。

被験者対応は終了(最終来院を終え、SDV後全てのCRFを提出済み)しており、数ヵ月後に治験終了報告書が提出されるという状況ですが、実施医療機関側としては治験責任医師が不在である状況は好ましくないことから、早急に治験分担医師の中から治験責任医師を選出するとなりました。

 治験責任医師の変更は審議事項である事から、緊急にIRBを開催する準備をしていました。
しかし、治験依頼者が治験責任医師の選定と合意、治験計画変更届を提出後に、書式10「治験に関する変更申請書」を実施医療機関の長に提出するので、その後にIRB審議をして欲しいと要請されました。そうすると次のIRBでは間に合わず、結果2ヶ月先に審議ということになってしまいます。

 治験依頼者の対応を待っていると空白期間がある為、実施医療機関側としては、まずは、新治験責任医師が治験分担医師・治験協力者リストを作成して病院長に提出、その後すぐに病院長の指名がなされました。

治験責任医師の変更については、治験依頼者から変更申請の提出があるまでは審議をしないで欲しいと言われ、審議しておりません。このような対応で良いものなのでしょうか。


   ↓

GCP第6条で規定されていますように、治験責任医師を選定する責務は治験依頼者にあります。

したがいまして、緊急のケースにおきましても、治験依頼者は適切な治験責任医師を選定した上で、実施医療機関の長に変更を申請する必要があります。

 一般に選定手続きは社内SOPで定められ、新しい治験責任医師の履歴書の入手や調査、記録の作成、社内責任者による承認に時間を要します。
それらの選定手続きを行ったうえで初めて新治験責任医師との治験実施計画書の合意、その後の実施医療機関への申請が許されます。また薬事法に基づく治験計画変更届は覚書締結前の提出が必要です。
もちろん、今回のような緊急のケースにおきましては、これら手続きは速やかに行う必要があります。

 治験責任医師変更の審議に関して、定例の会議ではなく貴院が準備された臨時の会議開催で対応するとのお考えは適切であると考えます。
しかしながら、治験依頼者では、上述の手続きを踏む必要があることから緊急のIRBに書類の提出が間に合わないこともあります。

 また、治験依頼者からの対応のないまま新治験責任医師がリストを作成し、実施医療機関の長の了承を得ることの手続きについては、治験依頼者内での新治験責任医師の選定日と貴院での了承日との間で矛盾を生じるおそれがあります。

 GCPには治験依頼者と実施医療機関との間で一連の手続きが求められている部分もあります。

手続きを行うにあたっては2005−72009−412009-43の見解を参考に、治験依頼者と十分に協議しながら進めることをお薦め致します。

なお、今回のケースでは、既に全ての被験者が最終来院を終え、SDV後全てのCRFを提出済みとのことですので、治験依頼者及び実施医療機関の長と協議の上で、治験責任医師の変更手続きを行わずに治験分担医師より治験終了報告書を提出してもらうことも、ひとつの特例措置かと思われます。



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