表 3 早期探索的臨床試験の実施のために推奨される非臨床試験
臨床: | 非臨床: | |||
投与用量 | 初回及び最高用量 | 薬理学 | 一般毒性試験a | 遺伝毒性b / その他 |
アプローチ1: 総投与量は100μg以下(投与間隔の制限なし) 且つ 総投与量は無毒性量の1/100以下及び薬効量の1/100以下(静脈内投与では体重換算、経口投与では体表面積換算) |
最高用量と初回用量は同じとできるが、総累積投与量は100μg以下 | インビトロ標的/受容体結合プロファイルの解析を実施すべき。 薬力学的に外挿性のあるモデルにおける薬効薬理作用(作用機序や効力)についての適切な評価に基づいて、臨床投与量を設定すべき。 |
1種(通常、げっ歯類)における拡張型単回投与毒性試験(脚注c及びdを参照)。 投与経路はトキシコキネティクス付きで予定臨床経路とするか、あるいは静脈内投与。 最高用量は臨床投与量の1000 倍(静脈内投与では体重換算、経口投与では体表面積換算)とすることができる。 |
遺伝毒性試験は実施しなくてもよいが、何らかの試験あるいは構造活性相関の情報があれば治験申請時に提出すること。 高放射活性物質(例えば、PETイメージング剤)の場合には、適切な薬物動態学的情報と放射線暴露量の推定が必要。 |
アプローチ2: 総投与量は500μg以下、投与は休薬期間(実際もしくは予想される半減期の6倍以上)を設けて、最大5回 且つ 各用量は100μg 以下 且つ 各用量は無毒性量の1/100以下及び薬効量の1/100以下 |
1日最高用量と初回用量は同じとできるが、100μg以下 | インビトロ標的/受容体結合プロファイルの解析を実施すべき。 薬力学的に外挿性のあるモデルにおける薬効薬理作用(作用機序や効力)についての適切な評価に基づいて、臨床投与量を設定すべき。 |
1種(通常、げっ歯類)における7日間反復投与毒性試験。 投与経路はトキシコキネティクス付きで予定臨床経路とするか、あるいは静脈内投与。血液学、血液生化学、剖検及び組織病理学データが含まれること。 最高用量は臨床投与量の1000 倍(静脈内投与では体重換算、経口投与では体表面積換算)とすることができる。 |
遺伝毒性試験は実施しなくてもよいが、何らかの試験あるいは構造活性相関の情報があれば治験申請時に提出すること。 高放射活性物質(例えば、PETイメージング剤)の場合には、適切な薬物動態学的情報と放射線暴露量の推定が必要。 |
アプローチ3: 準薬効用量又は推定薬効域での単回投与試験 |
初回用量は、最も感受性の高い動物種における毒性所見のタイプや薬効用量を考慮して選択すべきである。ヒトでの初回用量に関して、考慮すべきその他の事項については、各極のガイダンスを参考にすべきである。 動物で認められた毒性がヒトにおいてモニタリングが可能で可逆的なものと予想される場合には、最高用量は、より感受性の高い種における無毒性量での暴露の1/2までが許容される。 |
インビトロ標的/受容体結合プロファイルの解析を実施すべき。 薬力学的に外挿性のあるモデルにおける薬効薬理作用(作用機序や効力)についての適切な評価に基づいて、臨床投与量を設定すべき。 安全性薬理試験コアバッテリー(第2節を参照) |
げっ歯類及び非げっ歯類における拡張型単回投与毒性試験(脚注cを参照)。 投与経路はトキシコキネティクス付きで予定臨床経路。血液学、血液生化学、剖検及び組織病理学データが含まれること。 この条件では、最高用量は、MTD、MFD、又は限界量(第1.5節を参照)とすべきである。 |
Ames試験(例えば、抗菌剤等のようにAmes試験が不適当な場合はその他の代替試験)。 |
アプローチ4: 薬効域であるが、臨床最大耐量の評価を目的としない14日までの投与 |
両動物種で毒性がみられた場合、初回用量は適切な各極のガイダンスに従う。 毒性がいずれの動物種でもみられなかった場合(即ち、試験された最高用量が無毒性量であり、MFDのような限界量を用いていない)や毒性が1種の動物種でしかみられなかった場合、初回用量は、その推定暴露量(種間の薬物動態モデリングあるいは体表面積換算のいずれかに基づく)が、より低い暴露を示した動物種の無毒性量におけるAUCの約1/50になるように設定されるべきである。ヒトの初回用量に関して、例えば、薬力学活性の推定などの、考慮すべきその他の事項については、各極のガイダンスを参考にすべきである。 両動物種で毒性がみられない場合、臨床最高用量は、動物試験での最高用量におけるいずれかの種での低い方の暴露(AUC)の1/10を超えない用量が推奨される。 1種においてのみ毒性が示されている場合、最高臨床用量は、毒性を示した動物種から得られた無毒性量でのAUC又は毒性を示さなかった動物種における最高用量でのAUCの1/2のいずれか低い方を超えるべきではない。 両動物種で毒性がみられる場合、最高臨床用量は、標準的なリスク評価方法に基づくべきであり、この特殊な場合には臨床最大耐量が探索できる。 |
インビトロ標的/受容体結合プロファイルの解析を実施すべき。 薬力学的に外挿性のあるモデルにおける薬効薬理作用(作用機序や効力)についての適切な評価に基づいて、臨床投与量を設定すべき。 毒性試験と同様な投与量を用いた安全性薬理試験コアバッテリー(第2節を参照)。 |
げっ歯類及び非げっ歯類における2週間反復投与毒性試験。 標準的な検査項目について評価され、用量は最高臨床用量で予測される臨床AUCの数倍の暴露を基に設定する。 |
Ames試験(例えば、抗菌剤等のようにAmes試験が不適当な場合はその他の代替試験)及び染色体損傷検出のためのほ乳類の試験系を用いた試験(インビトロ又はインビボ)。 |
アプローチ5: 薬効域であるが、臨床最大耐量の評価を目的とせず、非げっ歯類の投与期間を超えない14日までの投与。 |
暴露量を考慮した初回用量は、体表面積換算で、より感受性の高い動物種における無毒性量の1/50以下とすべきである。初回用量に関して、考慮すべきその他の事項については、各極のガイダンスを参考にすべきである。 ヒトにおける最大暴露は、非げっ歯類の無毒性量でのAUC又はげっ歯類での無毒性量でのAUCの1/2のいずれか低い方を超えるべきではない(脚注eを参照)。 |
インビトロ標的/受容体結合プロファイルの解析を実施すべき。 薬力学的に外挿性のあるモデルにおける薬効薬理作用(作用機序や効力)についての適切な評価に基づいて、臨床投与量を設定すべき。 毒性試験と同様な投与量を用いた安全性薬理試験コアバッテリー(第2節を参照)。 |
げっ歯類における標準的な2週間反復投与毒性試験(げっ歯類が適切な種であることの理由が必要)。 最高用量はMTD、MFD、又は限界量とすべき(第1.5節を参照)。 非げっ歯類(n=3)における確認試験で、げっ歯類での無毒性量における暴露を得られると推定される用量を最短3日間かつ少なくとも予定臨床試験期間を投与する。 もしくは、非げっ歯類における漸増投与試験で、げっ歯類での無毒性量における暴露を得られると推定される用量を最短3日間かつ少なくとも予定臨床試験期間を投与する。 |
Ames試験(例えば、抗菌剤等のようにAmes試験が不適当な場合はその他の代替試験)及び染色体損傷検出のためのほ乳類の試験系を用いた試験(インビトロ又はインビボ)。インビボ試験を実施する場合には、げっ歯類の毒性試験の一部として組み込むことが可能な場合もある。 |
表 3 早期探索的臨床試験の実施のために推奨される非臨床試験
a. 一般毒性試験はGLP下で実施されるべきである。
b .遺伝毒性試験のデザインと用量設定については参考文献10を参照のこと。
c 一般的に、拡張型単回投与毒性試験では、単回投与後に血液学的検査、血液生化学的検査、剖検及び病理組織学的検査(高用量群で投与に関連した病理組織所見が観察されない場合は対照群及び高用量群のみ)を行うとともに、投与2週間後において遅延毒性や回復性を評価できるように計画されるべきである。げっ歯類を用いる通常の試験デザインでは、投与翌日の検査用には全群について10例/性/群、投与後14日目の検査では選択された群について5例/性が供試される。非げっ歯類を用いる通常の試験デザインでは、投与翌日の検査には全群について3例/性/群、14日目の検査では検査を行う群について2例/性が供試される。
d. マイクロドーズ試験のための拡張型単回投与毒性試験では、14日目に回復性や遅延毒性を評価するための用量は1用量でよい。そのための用量は必ずしも最高用量にする必要はないが、臨床投与量の少なくとも100倍の投与量にすべきである。
e. 臨床試験において有害事象が認められず、毒性試験での知見が臨床試験においてモニタリング可能であり、可逆的かつ軽度なものであると予想される場合には、上記のAUCを超える投与量への増量ができる場合もある。