【糖尿病の説明】

治験担当モニターのための糖尿病の説明
「経口血糖降下薬の臨床評価方法に関するガイドライン」について
(2)





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●経口血糖降下薬の臨床評価ガイドライン
今週は「糖尿病と経口血糖降下薬の臨床評価」について学びます。

では、今週は「『経口血糖降下薬の臨床評価方法に関するガイドライン』について」です。
    ↓
http://www.pmda.go.jp/regulatory/file/guideline/new_drug/keikou-kettoukoukayaku-rinjyu-hyouka-guideline.pdf

このガイドラインは、あくまでも「経口」の治験薬のガイドラインである点をまず注意しておきましょう。


いや〜〜!

驚いた!

このガイドラインを読んで、糖尿病の(経口剤)治験って、大変なんだ!ということがよ〜〜〜〜く分かりました(特にフェーズ3と長期投与試験で。これは金曜日に書きますが。)



本質から外れますが、この(↑)ガイドラインは他の分野の「臨床評価ガイドライン」に比べると、病気の概略や問題点が多く書かれていて、結構、このガイドラインだけでも勉強になります。


たとえば、3ページ目から「糖尿病の特徴」があります。

ここから概略を抜粋すると「糖尿病の特徴」は次のようになります。
   ↓
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1. 疾患の概念

糖尿病とは・・・・

インスリン作用の不足により起こる慢性高血糖を主徴とし、種々の特徴的な代謝異常を伴う疾患群である。

その発症には遺伝因子と環境因子がともに関与する。

代謝異常の長期間にわたる持続は特有の合併症を来しやすく、動脈硬化症をも促進する。

代謝異常の程度によって、無症状からケトアシドーシスや昏睡に至る幅広い病態を示す。

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なるほど、糖尿病は『特徴的な代謝異常を伴う疾患群』なのですね。

あとで出てきますが、糖尿病の三大合併症は「腎臓」「網膜」「神経」に出てきます。

この「合併症」が患者のQOLを著しく低下させるわけです。

「血糖」が多少、上がるだけでは、まぁ、なんともないのですが、これが長期間続くと出てくる「合併症」が怖い。



次に「糖尿病」の分類が書かれています。
  ↓
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2. 糖尿病の分類

糖尿病の発症機序や病態に関しては、インスリン分泌の障害とインスリン作用の障害の両面からとらえる必要がある。

すなわち、膵ベータ細胞におけるインスリン分泌の異常と、筋肉や肝臓、脂肪といったインスリン標的臓器におけるインスリン作用の障害が血糖値の上昇をもたらし、糖尿病発症へと進展する。

(中略)

1型、2型、という用語は、成因論的分類に用いられるものであり、その成因分類では、膵β細胞の破壊的病変でインスリンの欠乏が生じることによって起こる1型糖尿病、インスリン分泌低下とインスリン感受性低下の両因子により発症する2型糖尿病、特定の原因によるその他の型の糖尿病、妊娠糖尿病の4群に分けられている。


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ふんふん。

「糖尿病」は4つに分類されるというわけですね。

1型糖尿病・・・インスリンの欠乏によっておこる

2型糖尿病・・・インスリン分泌低下とインスリン感受性低下によっておこる

3型糖尿病・・・特定の原因によっておこる

4型糖尿病・・・妊娠糖尿病


モニターが(CRCも)新しい領域の疾患を担当することになったら、まず、大枠を把握することから始めましょう。

「大枠→詳細」という理解の仕方は「新しい仕事を覚える・始める」時も同様です。



さて、上記の4つの糖尿病の詳細がガイドラインにも書かれています。

1型糖尿病は以下のように説明されています(要約)。
  ↓
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1型糖尿病はβ細胞の破壊により発症するもので、通常は生存のためにインスリンが必要なインスリン依存状態に至る。

さらに1型糖尿病は、A.自己免疫性とB.特発性に分類される。

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1型糖尿病は「インスリン依存状態」になってしまうのですね。

つまり「インスリン」が無いと生きていけないという非常に苦しい病気です。

この1型糖尿病の患者さんには、いわゆる「インスリン製剤」が使われます。




次に2型糖尿病です。
  ↓
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2型糖尿病はインスリン分泌低下とインスリン感受性の低下が主体となるものであり、日本人の糖尿病の大多数を占める。

この両因子の関与の程度は症例によって異なっており、インスリン分泌低下を主体とするものと、インスリン抵抗性が主体で、それにインスリンの相対的不足を伴うものなどがある。

膵β細胞機能はある程度保たれているため、インスリン依存状態となることは?ない。

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ここで暗記すべきは日本人の糖尿病の大多数は「2型糖尿病」だということです。




次は3型糖尿病です。
  ↓
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(3) その他特定の機序、疾患による糖尿病

ミトコンドリア遺伝子異常のように単独で糖尿病を発症するような糖尿病の原因遺伝子がいくつか同定され、これらは『その他の特定の機序、疾患によるもの』の中でも、『遺伝因子として遺伝子異常が同定されたもの』として分類された。

一方、膵疾患や内分泌疾患による糖尿病など、いわゆる二次性の糖尿病は『他の疾患、条件に伴うもの』としてここに含まれる。

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最後が4型糖尿病です。
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妊娠糖尿病は、妊娠中に発症もしくは初めて発見された糖尿病、と1999年の『糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告』で定義されており、2008年の『妊娠糖尿病の定義、スクリーニング、診断基準に関する提言』においても新しい知見が得られるまでの間はこの定義が維持されることとなった。

従って、妊娠糖尿病には、(1)以前から未発見の糖尿病があり、妊娠中の検査で初めて発見されたもの、(2)以前から軽度の糖代謝異常があり、妊娠中に初めて糖尿病型を呈するに至ったもの、(3)妊娠中に糖尿病型よりも軽い糖代謝異常が初めて出現したもの、が含まれる。

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以上が「糖尿病」の4つの分類でした。


ちなみに、糖尿病は英語でDiabetes Mellitus(DM)です。


以下、ウィキペディアより。

1674年、イギリスの臨床医学者トーマス・ウィリスはヨーロッパで当時奇病とされていた多尿症の研究をしていた。

ウィリスは尿に含まれる成分を何としても知りたいと考え、患者の尿を舐めてみたところ、甘かったことが本病確認のきっかけとされている。


う〜〜ん、よく患者の「尿」を舐めたよね。

探究心の強い科学者の偉大なところです。



「糖尿病」の名称は、血糖が高まる結果、尿中に糖が排出されることに由来する。

しかし尿中に糖が排出されること自体は大きな問題ではない。

1型糖尿病の場合、放置すると容易に急激な高血糖と生命の危険も伴う意識障害を来す糖尿病性ケトアシドーシスを引き起こしかねないため、インスリン注射などの積極的な治療により強力に血糖値を下げることが基本的な治療目標となる。
●経口血糖降下薬(糖尿病の疫学的特徴等)
上記のガイドラインには糖尿病の疫学的考察も記載されています。
  ↓
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厚生労働省による平成19年の国民健康・栄養調査の結果では、糖尿病が強く疑われる人が約890万人、また、いわゆる「予備群」である糖尿病の可能性を否定できない人が約1320万人、合わせて2210万人と推計されている。

平成14年の同じく同省による糖尿病実態調査では、それぞれ約740万人、約880万人であり2、糖尿病とその予備群と考えられる人は大幅に増加していることが推定される。

また、世界的にみても糖尿病患者数の増大は、殊にアジア地域において爆発的なものがあり、この憂うべき現状は、今世紀がまさに糖尿病の世紀であることを予感させるといっても過言ではない。

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すごいですね。

可能性を否定できない人を含めると「2210万人」ですって。

5人に1人ですね。

特にアジアでは「爆発的なもの」があるそうです。

これは、新薬を作らないといけない。


僕も「甘いモノ」が大好きで、若干、血糖値が上がり気味なので、注意しないと。


ちなみに、今回、紹介している「経口血糖降下薬の臨床評価方法に関するガイドライン」は参考資料にはきちんとリンクが張られていて、とっても便利です。

今後は、他のガイドラインもこれを見習ってほしいところです。




さて、次に「臨床的特徴」です。
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糖尿病患者の代謝異常は軽度であればほとんど症状を呈さないことから、糖尿病の存在が自覚されず長期間放置されることがある。

しかし、中等度以上の高血糖が持続するような代謝異常状態では、口渇、多飲、多尿、体重減?、易疲労といった特徴ある症状を呈する。

最も極端な場合は、高度のインスリン作用不足によって、ケトアシドーシスや著しい高浸透圧・高血糖などの急性合併症をきたし、ときには意識障害、さらには昏睡に至り、効果的な治療が行われなければ死に至ることがある。

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うむ。

慢性疾患にありがちですが、糖尿病でも「自覚されず長期間放置される」ことが注意点ですね。

「頭痛」のように強烈な自覚症状があると、患者も薬を使いますが、人間、何も感じないと、当然と言えば当然ですが、問題があっても放置しがちです。

お互いに、注意しましょう。


次に重要なことが書かれています。
  ↓
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代謝異常が長く続けばさまざまな慢性合併症が出現する。

すなわち、網膜、腎、神経を代表とする多くの臓器に機能・形態の異常をきたす。

これらの合併症に共通するものは細小血管症であり、糖尿病に特有である。

進展すれば視力障害や失明、腎不全、下肢の壊疽などの重大な結果をもたらす。

さらに、糖尿病患者は多くの場合、肥満、高血圧、脂質異常症などを伴い、全身の動脈硬化症が促進され、冠動脈、脳動脈、下肢動脈などの大血管病変は狭心症・心筋梗塞、脳梗塞、下肢の閉塞性動脈硬化症などの原因となる。

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これですね、糖尿病が怖いのは。

「網膜」「腎」「神経」に異常をきたす。←これは今すぐ、暗記しましょう! 「糖尿病」と言えば「網膜」「腎」「神経」です。

これらは「細小血管症」が原因なのですね。

さらに、動脈硬化症まで促進させる。

やっかいな病気ですね、糖尿病。



ちなみに、糖尿病による死者数は、後天性免疫不全症候群(AIDS)による死者数に匹敵し、糖尿病関連死亡は、AIDSのそれを超えると推計している。

このような状況を踏まえ国際連合は、国際糖尿病連合 (IDF)が要請してきた「糖尿病の全世界的脅威を認知する決議」を2006年12月20日に国連総会で採択し、インスリンの発見者であるバンティング博士の誕生日である11月14日を「世界糖尿病デー」に指定した。

日本でも、2007年11月14日には東京タワーや鎌倉大仏、通天閣などを「世界糖尿病デー」のシンボルカラーである青にライトアップし、糖尿病の予防、治療、療養を喚起する啓発活動が展開された。

なお、国連が「世界○○デー」と疾患名を冠した啓発の日を設けたのは、12月1日の「世界エイズデー」に続き「世界糖尿病デー」が2つ目である。

 

●経口血糖降下薬:評価方法
今週は「『経口血糖降下薬の臨床評価方法に関するガイドライン』について」です。
    ↓
http://www.pmda.go.jp/regulatory/file/guideline/new_drug/keikou-kettoukoukayaku-rinjyu-hyouka-guideline.pdf


今日から、いよいよ、本陣に突入です。

「経口血糖降下薬の有効性の評価方法」です。
  ↓
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(3) 臨床試験の評価において推奨される観察項目

経口血糖降下薬は血糖コントロールをできるだけ正常値に近づけることにより、合併症の発症・進展を抑制することを目的としている。

したがって、高度な糖代謝異常や合併症に伴う自覚症状や他覚所見については評価指標として適切ではない。

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ここが肝心です→「高度な糖代謝異常や合併症に伴う自覚症状や他覚所見については評価指標として適切ではない」

では、何を指標にすればいいのか?

それはこれらです。
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●血糖コントロール指標:HbA1cが最も推奨される。

しかし、短期間の血糖コントロール指標としてグリコアルブミン、既に比較的良好な血糖コントロールが得られている症例における食後高血糖の指標として1,5-アンヒドログルシトール(以下「1,5-AG」という。)も有用な指標である。


●血糖値:早朝空腹時の血漿グルコース濃度(以下「FPG」という。)が安定した指標として推奨される。

食後血糖値を測定する場合は、標準食を用いて、食事開始後一定時間(60分、90分、120分など)の血糖値を測定する。

糖代謝異常が軽度の場合は、75g経口ブドウ糖負荷試験(以下「75gOGTT」という。)で評価することも可能である。

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「ガイドライン」の後半を読むと分かるのですが、上記の特に「HbA1c」が新薬の重要な臨床評価指標になります。

「HbA1c」とは何か?

HbA1cは「ヘモグロビン・エイワンシー」と読みます。

高血糖状態が長期間続くと、血管内の余分なブドウ糖は体内の蛋白と結合します。

この際、赤血球の蛋白であるヘモグロビン(Hb)とブドウ糖が結合したものがグリコヘモグロビンです。

このグリコヘモグロビンには何種類かあり、糖尿病と密接な関係を有するものが、HbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)です。



さらに、「臨床評価」の注意点も解説されています。

代表的な注意点だけ抜き書きします。
  ↓
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2型糖尿病の治療に関してはまず、食事療法、運動療法が基本であり、これらの治療のみでは血糖コントロール目標を達成できない場合に薬物療法の適応となる。

したがって、経口血糖降下薬の有効性の適正な評価のためには、食事療法、運動療法がすでに指導され、かつ直近の血糖コントロール状態が安定している症例を選択することが求められる。

さらに、被験薬の評価期間に被験者の食事療法、運動療法の内容及び遵守状況が安定していないと、血糖コントロール状態が不安定となり、適正な評価ができない原因となりうる。

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糖尿病では「食事療法、運動療法が基本」なのですね。

さらに血糖コントロールが不安定だと治験薬の評価も不安定になりますので、「食事療法、運動療法がすでに指導され、かつ直近の血糖コントロール状態が安定している症例を選択することが求められる」わけです。




では、次に「非臨床試験」のパートを見ましょう。
  ↓
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治験薬の効果を動物で評価する際には、ヒトへの外挿性を考慮し、適切な種類の動物を選択する。

また、モデル動物を用いて薬効を検討する際には、自然発症モデル動物としてはdb/dbマウス(肥満2型)、ob/obマウス(肥満2型)、KK-Ayマウス(肥満2型)、GKラット(非肥満2型)、Zucker fattyラット(肥満)、ZDFラット(肥満2型)、Wistar fattyラット(肥満2型)などがある。

人為的に作成されたモデル動物としては、新生児期にストレプトゾトシンの投与により誘発された非肥満2型糖尿病モデルラットがある。

これらのモデル動物や正常動物を用い、治験薬を単回及び反復投与した時の影響について、血漿グルコース濃度や血漿インスリン濃度、その他治験薬の作用機序を考慮した適切な薬理学的評価指標により検討する。

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糖尿病を自然発症するマウスが開発されているんですね。「へ〜!」です。

その他は、一般的な非臨床試験を実施します。



ではでは、いよいよ「臨床試験」です。

まず、フェーズ1ですが、これまた、通常の治験薬とほぼ同様です。

ただし、「血糖降下薬」ですので、次の検査が重要です。
  ↓
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なお試験を進めるにあたっては、被験者の安全の確保を常に優先するように心がけねばならない。

とりわけ低血糖の発現、重症化に対して十分に対応を心がけるべきである。

(中略)

糖代謝関連:血漿グルコース、血中インスリン、Cペプチド、グルカゴン、1,5-AG、グリコアルブミン、ケトン体等

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当然ながら、「糖代謝関連」が測定されますね。

ちなみにフェーズの対象者として「2型糖尿病患者」もありだと記載されています。
  ↓
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第T相試験は、非臨床試験から得られた情報をもとに、治験薬をはじめてヒトに適用する臨床試験の最初の段階である。

比較的限定された被験者(健康志願者、場合によっては2型糖尿病患者)が対象となり、治験薬のヒトにおける安全性の確認に重点がおかれる。

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それと、「血糖値」が大事ですので、「食事」等が厳しく統一されています。
  ↓
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(4) 試験方法

プラセボ投与群をおき、二重盲検法により試験を行う。原則として、試験期間を通じて被験者にはすべて同一の基準食を摂らせるものとする。

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上記について「「経口血糖降下薬の臨床評価方法に関するガイドライン」に関する質疑応答集(Q&A)について」(事務連絡:平成22年7月9日)にも解説があります。
  ↓
http://www.pmda.go.jp/regulatory/file/guideline/new_drug/keikou-kettoukoukayaku-qa.pdf
  ↓
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標準食としては、適切な評価を行うために、少なくとも同一試験の中では、同じ組成・熱量の食事を用いて実施していただきたい。

日本人の標準的な食事内容を反映したものが望ましいが、試験の目的や薬剤の特性に応じて組成を決定しても差し支えない。

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●経口血糖降下薬:フェーズ2
今週は「『経口血糖降下薬の臨床評価方法に関するガイドライン』について」です。
    ↓
http://www.pmda.go.jp/regulatory/file/guideline/new_drug/keikou-kettoukoukayaku-rinjyu-hyouka-guideline.pdf


今日はフェーズ2から始めます。
  ↓
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第2相試験は、2型糖尿病患者を対象として、治験薬の有効性、安全性、用法・用量、血糖降下作用の用量反応関係などを検討することを目的とする臨床試験である。

第2相試験は通常、患者を対象に有効性と安全性を探索する前期第2相試験と第3相試験の用法・用量を決定する後期第2相試験に分けられる。

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話は「血糖降下薬」から離れますが、上記の「前期第2相試験」と「後期第2相試験」という名前を聞いたことが無い、という人が若い人には多いかもしれませんね。

最近「フェーズ2」って「探索試験」という呼び名をよく使いますからね。

昔はよくこの「前期」「後期」という言葉を使いました。

ついでに、「前期第2相試験」を「フェーズ2a」、「後期第2相試験」を「フェーズ2b」と呼ぶこともあります。


さて、前期第2相試験では、初めて「糖尿病」の患者に治験薬を投与することになります。

対象は「2型糖尿病患者で、進行した合併症がなく、状態が安定した成人を対象とする。」となります。

プライマリーエンドポイントは「HbA1c」です。

それ以外としては下記のように記載されています。
  ↓
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(4) 評価項目

HbA1c、FPG、食事負荷後血糖(AUC、2時間値など)、1,5-AG、グリコアルブミンなどがあげられるが、治験薬の特性、投与期間などを考慮し、適当と思われるものを選択する。

場合によっては75gOGTTも評価項目になりうる。

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治験期間(投与期間)は下記のように長くなります。
  ↓
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(5) 期間

投与開始前のデータを収集する目的と、できるだけ安定した血糖コントロール 状態で治療期に移行するために、適切な観察期間をおく必要がある。

投与期間は治験薬の特性、評価項目などにより有効性の探索的な検討ができる期間を設定する(例:評価項目が食事負荷後の血糖AUCであれば2週間程度、グリコアルブミンであれば1ヶ月程度、HbA1cであれば3ヶ月程度など)。

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投与期間(観察期間)が長くなるのは「HbA1c」が、そもそも「過去1〜2か月」の血糖値を示すからですね。

それと特徴的なのが「適切な観察期間をおく必要がある」です。

これは安定した血糖値を測定するためです。

ベースの「血糖値」がしっかりしていないと、治験薬の効果が「あやふや」になるからですね。

「対照薬」は「プラセボ」です。




さて、「後期第2相試験」です。

この試験の目的は方法は、他の分野の治験薬と同様です。

フェーズ3に使用する治験薬の投与量を決めるためにドーズをふって「至適用量」を決めることです。


治験期間は次のように規定されています。
  ↓
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HbA1cを主要評価項目とする場合、原則として投与期間は?なくとも12週間は必要である。また、適切な観察期間を設定する。

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最低でも12週間(3か月)ですね。

また、観察期間も含めるとトータルで4か月ぐらいになります。



糖尿病は「食事療法」や「運動療法」が基本になりますので、これらが治験期間中、一定にするのが難しそう。
  ↓
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(6) 試験計画

原則、無作為化二重盲検群間比較試験とする。

食事療法・運動療法の大きな変更は治験薬の評価に多大な影響をおよぼす可能性があるため、試験期間を通じて出来るだけ食事療法・運動療法の内容及び遵守状況が一定になるよう留意する。

また、被験薬の用量として、3群以上を設定することが望ましい。

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●経口血糖降下薬:「フェーズ3」と「長期投与試験」
今日は「フェーズ3」と「長期投与試験」についてです。


「フェーズ3」と「長期投与試験」について、次のように解説されています。
  ↓
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経口血糖降下薬における第3相試験を大きく分けると単独療法における有効性、安全性を評価するための試験と他の経口血糖降下薬との併用療法における主に安全性を評価するための試験に分類される。

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この「他の経口血糖降下薬との併用療法における主に安全性を評価するための試験」が最大の特徴です。



まず、普通の「フェーズ3」については次のように記載されています。
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3-1. 単独療法試験

3-1-1 無作為化二重盲検群間比較試験

(1) 目的

第3相試験は、第2相試験により明確にされた適応、用法・用量等に基づいて、 治験薬の有用性をより客観的に検証することを目的とする。

このため、適切な対照薬を選び二重盲検法による群間比較試験を行う。

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まぁ、ここまでは普通ですね。

治験期間は長めになります。
  ↓
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(5) 試験期間

投与期間は治験薬の有効性、安全性を評価するに足る十分な期間が必要である。

HbA1cを主要評価項目とする場合は、少なくとも12週は必要であり、原則として24週が望ましい。

また、適切な観察期間も設定する。

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う〜〜ん24週(6ヶ月))プラス観察期間(1ヶ月ぐらい)ですね。

このように長い治験期間の場合、「ドロップアップ」する患者さんが多くなるので、難しいところです。



次に「普通」の「長期投与試験」についてです。
  ↓
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3-1-2. 長期投与試験

経口血糖降下薬の性質上、長期にわたる投与が一般的であるので、長期投与の安全性、有効性の確認が重要である。

長期投与試験は一般的に非盲検法により、第3相比較試験に並行又は継続して実施される。

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ここで素朴な疑問として「長期投与試験は一般的に非盲検法」とありますが、何故、長期投与試験は「非盲検法」なのか?

逆に「群間対照試験」では「ブラインド」なのか?

「対照試験」では「対照薬」と「治験薬」を比較するのが目的ですので、どちらかに「バイアス(先入観・偏り)」がかかるとまずいですよね。

でも、「長期投与試験」は通常「対照薬」がないので、偏りがかかりようがないので「非盲検法」でよいというわけです。




さて、評価項目は「安全性」で試験期間が1年というのも、他の分野の治験薬と同様です。
  ↓
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(4) 評価項目

主要評価項目は治験薬の安全性とし、副次評価項目として有効性(HbA1c等)を評価する。


(5) 試験期間

投与期間は、無作為化二重盲検群間比較試験と並行して長期投与試験を実施する場合は1年間以上、無作為化二重盲検群間比較試験から継続する場合は両試 験で合わせて1年間以上とする。

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ここまではいいのですが、次からが「経口血糖降下薬のガイドライン」の最大の特徴です。
  ↓
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3-2. 併用療法長期投与試験(非盲検併用療法長期投与試験)

(1) 目的

薬理学的作用機序により大別した既承認の経口血糖降下薬と治験薬を長期間併用した場合の安全性及び有効性を評価することを目的とする。

そのため、各々の既承認の経口血糖降下薬と治験薬の2剤併用療法(医療現場で併用が想定される組み合わせ)について、まとめて一つの非盲検併用療法長期投与試験として実施する。

治験薬と理論上併用が可能であり、実臨床において併用が想定される全ての被併用薬群*との組み合わせが推奨される。

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これですね!!

「併用療法の長期投与試験」がガイドラインで義務付けられています。

これが大変そう!!

しかも、「実臨床において併用が想定される全ての被併用薬群*」ですよ。


この「*」は次のようになります。
  ↓
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*ここでいう被併用薬群とは各種経口血糖降下薬の種類別に群をわけたものを指す。

(例えばSU薬群、ビグアナイド薬群、α?グルコシダーゼ阻害薬群など。)

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他の領域での治験では「長期投与試験」は下記のガイドラインのように「6か月、300例」のデータで製造販売承認申請ができます。

で、「1年、100例」のデータは承認前までに提出すればいいとなっています。

「致命的でない疾患に対し長期間の投与が想定される新医薬品の治験段階において安全性を評価するために必要な症例数と投与期間について」
  ↓
http://www.pmda.go.jp/ich/e/e1_95_5_24.pdf
  ↓
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8.通常は,6カ月間投与して得られた成績をもって当該医薬品の承認申請を行うことが可能である。

その場合は,12カ月間投与して得られた成績を承認前の可能な限り早い時点に追加提出しなければならない。

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ところが!!

「経口血糖降下薬」では次のようになっています。
  ↓
「「経口血糖降下薬の臨床評価方法に関するガイドライン」に関する質疑応答集(Q&A)について」(事務連絡:平成22年7月9日)。
  ↓
http://www.pmda.go.jp/regulatory/file/guideline/new_drug/keikou-kettoukoukayaku-qa.pdf
  ↓
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Q12

効能・効果の記載は、「2型糖尿病」とするのが適当とされているが、今後、従来のような効能・効果の記載は認められず、併用療法長期投与試験成績の提出が必須と考えるのか。

また、その場合の併用療法長期投与試験成績の提出時期はどのように考えたらよいか。



A12

本ガイドラインに従って新規の経口血糖降下薬の臨床開発を行い承認申請する場合には、併用療法長期投与試験を含めて必要な臨床試験を実施した上で、効能・効果を「2型糖尿病」と設定することが原則であり、当該試験成績を含めた臨床データパッケージで承認申請する必要がある。

また、併用療法長期投与試験では、既承認の経口血糖降下薬と治験薬を長期間併用した場合の安全性及び有効性を評価することを目的としていることから、当該試験が終了し、当該試験の成績が揃った時点でなければ、その安全性及び有効性を評価することはできないため、最初に併用療法長期投与試験以外のデータを用いて申請し、申請後に当該長期試験のデータを追加提出することは受け入れられない。

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上記のQ&Aを読むと、私の理解では「併用療法の長期投与試験」の結果が出てからでないと製造販売承認申請できないんですね。


いや〜〜!

これは大変だ!!

疾患領域によって、治験のやり方も様々ですね。

う〜〜ん、勉強になるな。

 
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