【モニターがまずやること】

モニターが最初にやること




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■モニターがやるべきこと(プロトコルを読む)
初めて治験を担当するモニターになったらやることは?

モニターが新しい治験のプロジェクトに配属されたらやることは・・・・

(1)プロトコルを読む

(2)治験薬概要書を読む

(3)CRFを確認する

(4)同意説明文書を読む

(5)疾患の勉強会をやる



新しいプロトコルをもらったら、まずは「背景」(あるいは「諸言」というタイトルの箇所ね)をじっくり読もう。

普通はこの「背景」はあまり重視されていないけれど、この「背景」に治験薬の存在意義が書いてある。(治験薬概要書にはもっと詳しく書いてあるけれど。)

この治験薬がターゲットにしている疾患と、その疾患に対するこれまでの治療方法が書かれている。

そして、その治験薬が、これまでの治療薬のどんな不便なことを解決してくれるのか、ということが書かれているはず。

こはを本当はもう少し「じっくり」書いて欲しいところなんだけれどね。

ここに記載されている治験薬の存在意義を治験責任医師や治験分担医師やCRCに「説得材料」として使う。

これから開発しようとしている治験薬が既存の治療薬よりも有効性が高いのか、安全性が高いのか、それとも、そもそも治療薬が存在していない領域だったのか、というあたりだ。

ついでに、この治験薬がどこで発見されたのか、どこの会社がオリジナルなのか、海外ではどのような状態なのか(既に20か国で発売されているとか、アメリカでは申請済だとか、世界同時開発中だとか)も確認しておこう。


「背景」を把握したら、プロトコルには、次に「治験の概略」がたいてい2ページぐらいにまとめられているので、ここをザッと読んで治験を俯瞰する。

この「とりあえず、まず俯瞰する」という方法はプロトコルの理解だけでなく、「新しいことを学ぶ」いろんな所で応用できる。

たとえば、薬学出身ではない人が「薬理」を勉強する時も、いきなり「詳説薬理学」を読むよりは「シンプル薬理学」のような薄い本で、「薬理学」をザッと読んで俯瞰して、そのあとで「詳説」に入ったほうが理解しやすいし、スピードもあがる。

それはさておき、治験の概略を理解したら、今度は詳しく内容を見ていく。

対象疾患は?

疾患の程度は?

選択基準と除外基準は?

特に気をつけないといけないクライテリアは?


「選択基準」は治験薬の有効性に大きく影響する。

たとえば「軽度のうつ病」を対象疾患とした治験薬なら、選択基準に「軽度」をはかるための方法が書いてあるはずなので、そこを重点的に治験責任医師等に説明する。

ここを間違えると「重度のうつ病」の患者が治験に入ってしまい、治験が失敗することになる。


また、「除外基準」は治験薬の安全性に影響することなので、ここを間違えると患者の安全性に大きく影響するので要注意だ。

「2か月以内にワーファリンを使用している人」が除外基準に記載されていたら、何故、そういう基準が設けられているのか、モニターは説明できないといけない。


これらの選択基準と除外基準に関連する項目として「併用禁止薬」が設定されているので、これまた、何故、その薬が併用禁止なのかをモニターは理解しておこう。

ついでに、併用禁止薬としてどんな薬があるのか「販売名」で覚えておこう。

きっと併用禁止薬一覧表があると思うので、それらを確認しておく。


次にプロトコルで気をつけないといけないのが、「治験のスケジュール」だ。

どの検査を何週間おきに行うのか、暗記しておくこと。

特に、途中で1回だけ測定する、なんていう変則的な検査項目もあるので気をつけよう。


ちなみに、プロトコルをこれから作成する人は、臨床の現場を考えて、この治験スケジュールを設定してください。

「とんでもない」スケジュールを設定しているプロトコルがあって、それは結局、プロトコル逸脱につながってしまう。

本当に必要不可欠の検査なのかどうかもう一度、考えてみましょう。


モニターとしてはプロトコルを読んだら、どこが逸脱しやすいかを考えよう。

そして、その逸脱を未然に防ぐ方法を考える。


そして最後に、モニターは「目標登録数」と「治験期間」を確認する。

治験全体で何人の患者に入ってもらう必要があるのか、自分が担当する施設では何症例が必要なのか。

1ヶ月で何症例が必要か、1週間では? ということを確認し、その目標を達成するためにはどのような戦略が必要かを考えよう。

とは言っても、こういうことはモニターひとりで決められないので、チームで考える。

もし、チームに戦略が無かったら、自分で考えて、それをチームに提案する。

それが終わったら、次に「治験薬概要書」を読もう。


ついでに、「臨床試験 プロトコルの作成」で検索すると、結構な数がヒットし、「プロトコル作成要領」などもある。

たとえば「TRI 臨床研究情報センター のプロトコル作成要領」
   ↓
http://www.tri-kobe.org/support/download/protocol_summary.pdf


時代は確実に流れているんだなと、変なところで実感した。
■モニターがやるべきこと(治験薬概要書を読む)
「治験薬概要書」を毛嫌いするモニターがいるが、それではいけません。

この「治験薬概要書」に治験薬の全てが書かれているのですから。

プロトコルのところでも書いたけれど、そもそも、この治験薬の存在意義が書かれている。

じっくり読んで、自分がまず納得する。

「何故、この治験薬を開発する意義があるのか?」だ。

そのために「背景」をしっかり読む。

その背景を読んだら、次は、治験薬概要書の一番、最後の項目を読む。

普通、治験薬概要書の最後には「データの要約及び治験責任医師に対するガイダンス」が書かれているはず。

ここに治験薬の有効性と安全性の「まとめ」が(普通は)書かれています。

その治験薬概要書が作成された段階で得られているデータの概略が書かれているので、そこをしっかりと理解、暗記する。

ちなみに、ICH-GCPでは、この「データの要約及び治験責任医師に対するガイダンス」には「治験薬を過剰投与した場合の対処方法」も記載されることになっているんだけれど、知ってた?

下記のPDFの50ページの下から2行を見てみよう!(ICH-GCPの日本語訳です。)
   ↓
http://www.jmacct.med.or.jp/plan/files/ICH-GCP.pdf


このガイダンスを読んだら、治験薬概要書の最初に戻ります。

まず、治験薬の化学的、物理的性質が記載されているので、ここでは「安定性」を確認する。

室温で保存なのか、冷蔵保存なのか、さらに「使用期限」(有効期限)などはここに関連して記載されている。

水に溶けるのか、アルコールに溶けるのか、なども忘れずに読む。

このあたりを薬剤部の方に質問されることが多い。


治験薬概要書の次の箇所からはひたすら「非臨床試験」のデータが記載されている。

ここを飛ばさないように!

ここに「有効性」の根拠と予測される「危険性」がある。

「薬効薬理」と一般に呼ばれている試験に、この治験薬の有効性を確認した動物実験のデータがある。

どんな動物を使って、どのような試験を使って有効性を確認したのか、を確認します。

場合によっては、「薬効薬理」が無い場合もある。

たとえば「更年期障害」のように「人間の自覚症状」に対する治験薬などは動物実験では確かめられないね。


次に「一般薬理」と呼ばれている箇所に、薬効とは直接関係しないけれど、発現する生理作用が記載されている。

これは、人によっては「副作用」になるので、しっかりと読もう。

この治験薬を投与すると血圧は上がるのか、心拍数は増えるのか、行動は活発化されるのか、等。


そして、各種「毒性試験」が記載されている。

そもそも、この治験薬は蓄積性があるのか、急性毒性にはどのようなものがあるか、慢性毒性はどうか、がん原性はどうなのか、など等。

これれは直接、人間に対する毒性にも関連しているので、しっかりと読もう。


動物実験のデータが終わると、次が「臨床試験」。

もちろん、その治験がフェーズ1の単回試験なら、その前に行われた臨床試験は無いけれど、それ以外は全ての臨床試験のデータが簡潔にまとめられている。

このあたりは、治験責任医師等に治験の概略を説明するときに使えるので、全て、暗記する。(せめて、どのページに、どんなデータが記載されているかぐらいは最低限、覚えておく。)

海外での臨床試験を既に実施しているなら、その海外データも記載されているので、それも要注意。

日本人のデータと海外データとの間に差があるのか無いのかがポイントだ。



こうして、自分が担当する治験薬の全てを理解する。

そこには(繰り返すけれど)、治験薬の存在意義が記載されているので、そこを自分で納得しないと治験を担当するモチベーションが下がる。

しっかりと、存在意義を理解して、納得しよう。

自分が存在意義を感じていないのに、治験責任医師に治験を勧めることなんて、できっこない。


次はCRF(症例報告書)を確認しよう。

 

■モニターがやるべきこと(CRFを確認する)
自分が担当する治験のCRFはどのようなデータを集めるのか、まず、確認する。

被験者の基本データ(年齢、性別、体重、身長等)、既往歴、合併症、そして、当該疾患。

既往歴はどれくらい遡って調べるのか、あるいはどの程度の既往歴をCRFに記載するのかをチーム内で確認しておこう。

次にvisitごとに集めるデータはどのようなものがあるのか。

それらのデータは、どの原資料から集めるのか、場合によっては「患者日誌」から集める、なんていうのもあるから要注意。

「患者日誌」に記載されている情報をそのままCRFに記載するのか、それとも、その情報をもとに治験責任医師等が取捨選択して、なおかつ「医学用語」に書き直してCRFに記載するのか、再確認しよう。

もし、そういうことが決まってないなら、決めるように上司に進言すること。

ついでに、その「患者日誌」は治験依頼者が最終的に回収するのか、それとも医療機関で保存してもらうのかも確認しておく。


さて、visitごとに有効性のデータと安全性のデータを集めるのが一般的だけど、CRFの記載欄ごとに、この記載欄に書いてもらうデータは、どの原資料のどの原データを記載するのかも確認しておく。

「有害事象」のコメント欄には「因果関係が無い」時に医師からコメント記載してもらうのか、逆に「因果関係を否定できない」場合にコメントをもらうのか、そもそも、そういうコメントはもらわないのかにも注意しよう。

もし、有害事象が発生した場合、いつまで追跡するのかもチーム内で決めておく。

有害事象の程度もCRFに記載することが普通だ。

たとえば「軽度」「中等度」「高度」のように。

どういう場合が中等度なのか、等は通常、CRFに書かれているので、そこもしっかり確認しておく。


併用薬については、一般的に「市販名」で記載されると思うが、「規格」(20mg錠とか)まで記載するのか、有害事象に使われた薬は、併用薬欄に書かないで有害事象欄に記載するのかも確認しておく。

モニターは、これらのことを全て分かっていないとCRCの聞かれた時に困る。


まれにあるのだが、プロトコルで規定していないデータを記載する欄があることがある。

これは、DM等がCRFを作成する際に、他の治験で使ったモジュールをそのままコピペで使ってしまった場合に起こりうる。

そんなことがないように、CRFの全ての記載欄を逐一、確認しておこう。


・・・・・・ということで、モニターはCRFの全て、隅から隅まで目を通すように。

さらに、治験が開始されたら、データが記載済みのCRFを確認する時の「CRFのチェックリスト」というものが作成されるはずなので、それもしっかりと暗記しておこう。

このチェックリストは治験が進むに従って、改訂、追記がなされることが多いので、それもフォローしよう。


以上が終わったら、次は「同意説明文書」を確認する。
■モニターがやるべきこと(同意説明文書を読む)
モニターの中には「同意説明文書」を読まない人がいるが、それはいけません。

自分が担当する治験について、患者に、どのように説明されるかを知っておくことはモニターの基本だ。

で、同意説明文書を読むときは患者の気持ちになんって読もう。

本当に、この説明文書で患者は治験を理解できるのか、あるいは、自分の父母や祖父母が読んでも理解できるだろうか、という視点で読む。

もし、難しい言葉や説明があったら、改善できないかも考える。

こんな本も出版されているので、参考にしよう。
    ↓
臨床試験・治験用語・用例集―わかりやすい説明文書作成のために
    ↓
●「臨床試験・治験用語・用例集―わかりやすい説明文書作成のために


あるいは、こんな提言もある。
   ↓
「病院の言葉」を分かりやすくする提案
   ↓
http://www.ninjal.ac.jp/byoin/teian/byoin_tyukan_hokoku.pdf


さらに、治験を実施する医療機関にも同意説明文書の規定がある場合もあるので、その場合は、その規定に従う。

(言うまでも無く、GCP上、最終的に同意説明文書を作成するのは治験責任医師の責務。)


緊急の場合や患者が治験について相談したい場合、どこに連絡・相談することになっているのか。

患者に守ってもらいたい事項として、どんなことが記載されているのか、等も確認しておこう。

それをCRC等を通じて、患者に確実に伝えてもらうようにお願いする。


説明箇所を読んだら、「同意」を署名するページも確認する。

CRCが説明の補助を行った場合に、CRCの署名欄があるかどうか、代諾者が多そうな治験(例えば「にきび」の治験なんかは中学生等が多いことが想定されるよね。そんな場合)では、代諾者の署名欄があるかどうか、など。

「公正な立会人」の署名欄があるのかないのか。

そもそも、治験責任医師等が同意書に記載する日付は「説明した日付」を書くのか、患者から同意書を受け取り、患者の同意を確認した日付を記載するのか、念のために確認しよう。


ついでに、「スクリーニング名簿」って、あるよね?

ここに載せるのは、どのような場合に記載するのかも確認しておこう。

「登録名簿」と「スクリーニング名簿」の関係は? とかね。

同意を取得して、血液検査などのスクリーニングに入った患者を「スクリーニング名簿」に記載するのか、登録名簿は同意を取得し、スクリーニングも終わり、治験薬の投与まで進んだ患者を記載するのか、このあたりは治験依頼者によって、考え方に差があるので、確認しておこう。


さらに、ついでのついでに、医療機関との契約で「症例数」は「同意を取得した患者」なのか「治験薬の投与まで進んだ患者」なのかも確認しておく。

それによって、治験費用の金額が変わるからね。

(ちなみに、今年度内に予定されているGCPの改訂で、「契約書」には「症例数」を記載しないことになりそうだ。)


さて、治験のツールを全て確認したら、「対象疾患の勉強会」をやろう!
■モニターがやるべきこと(疾患の勉強会をやる)
新しい治験プロジェクトに配属されたら、その疾患の勉強会をやろう!(自分が企画するのだ!!)

今まで、その疾患にはどのような治療薬があるのか、その治療薬にはどんなデメリット、副作用があるのか。

また、その疾患には「治療ガイドライン」があるのか。

たとえば、高血圧治療ガイドライン。
    ↓
http://www.jhf.or.jp/a&s_info/guideline/kouketuatu.html



あるいは(こっちが先か)「臨床評価ガイドライン」があるのか。

たとえば、抗悪性腫瘍薬の臨床評価方法に関するガイドライン
    ↓
http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/171101-b.pdf

これらに対して、担当する治験薬はどのようなことを提供できるのか。



競合他社の開発状況は?

競合他社のライバルとなる治験薬の情報はなかなか得られないが、たとえば、ここも活用する。
 ↓
http://www.jpma.or.jp/medicine/shinyaku/development/index.html

(上記のサイトはあまり更新されてないので、ちょっと使えないのが現実ですが。)

そのライバルとなる治験薬の特徴などは、信頼できる治験責任医師等から(こっそり)得られる場合もある。



話しは戻りますが、対象疾患の勉強会では、そもそも、何故、そのような疾患が発生してしまうのか、Wikipedia、ネット、論文、成書と、ありとあらゆるツールを駆使して勉強する。

結構、使えるのが「メルクマニュアル」。
  ↓
http://www.msd.co.jp/merckmanual/Pages/home.aspx


さらに、最近ではYouTubeも使える。

たとえば「胃潰瘍」について。
  ↓
http://www.youtube.com/watch?v=PlW6ZWTtxx8


モニターは対象疾患について治験責任医師等と「同等以上」に会話ができないといけない。

そのためには疾患や医学一般の知識が必要だ。

モニターは書類を運ぶだけの「伝書鳩」ではない。

そこを忘れないようにしようね。


こうして、治験の対象疾患の知識を増やしつつ、あらゆる疾患領域を渡る歩く、というのもモニターとしての生き方だし、ある特定の分野(例えば、がん領域とか中枢神経系とか)に特化したモニターとして生き残るという戦略もある。

ちなみに、製薬会社では得意とする領域があるので、あらゆる疾患とはいきにくいが、CROのほうが幅広く疾患を担当する確率が高いかもしれない。


今週の内容をまとめると以下のようになります。

初めて治験を担当するモニターの勉強方法。

●プロトコルを熟読する(逸脱しやすい個所を特定し、プロトコル逸脱の予防策を考える)

●治験薬概要書で治験薬の存在意義を確認する

●CRFのデータはどこから集めるのか全ての欄について検討する

●同意説明文書もしっかり読む

●担当する疾患領域を勉強する
 


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