【治験を実施する上での注意点。治験を行うときの注意点。治験実施のポイント。】

治験の流れ(6)
6.治験中のモニタリングについて





ホームに戻る

【主な作業の流れ】
1)症例登録の依頼

2)同意取得の確認

3)被験者選定の確認

4)症例報告書の回収・点検・修正・固定

5)欠陥品、使用期限切れの治験薬の回収および追加交付

6)症例登録終了の通知
■■■6−1 症例登録の依頼
【事前準備】

@フローチャートを提供する等、症例登録の施策を講じる。

A施設の対象患者の来院・搬送状況を把握しておくこと。


【具体的行動】

モニターは、責任医師または分担医師に対し症例登録を依頼する。また、CRCに対しても症例登録推進の協力を依頼する。


●注意点

症例登録の依頼

(1)直接訪問や電話等によりアプローチをかける。頻度は、1〜2回/月が目安である。
また、症例登録の意識が高く、しっかりとスケジュールを組んで症例登録を実施しているような施設では、頻繁なアプローチは逆効果な場合がある。
しかし、アプローチを怠ることは厳禁であり、何らかのの他の用件ののついでにふれてみる程度がよい。

(2)全体の進捗状況をグラフにしたものを提示することも効果的な場合がある。

(3)治験薬の長所をアピールし、関連する新しい情報(文献紹介等)を積極的に提供し、治験薬に興味を持って頂きモチベーションを上げる。



「症例が無い」といわれる場合、その理由として以下の項目が挙げられる。

・本当に患者がいない

・競合する治験が同施設で実施されている

・類似薬の発売・処方

・責任医師、分担医師が治験に対して怠慢である

・手順がスムーズに流れない   等

すなわち、@治験を実施するにあたり適格な責任医師・医療機関を選定し、A責任医師や分担医師、CRCとの信頼関係を確立することが、症例登録依頼、さらには症例数獲得に大きく影響する。

また、モニターの働きかけにより改善できる点もあるため、モニタリング時に問題点を探り解決することも重要である。

その他、エントリーに必要な選択・除外基準のクリアが目前の症例の場合(あと一つ基準をクリアできればエントリーできるという場合)は、特に注意して責任医師等に対し、その症例の経過等を確認することが大切である。


■■■6−2. 同意取得の確認    ■■■6−3. 被験者選定の確認
●【事前準備】

同意文書は原資料である。

そのため、原資料の直接閲覧申請を行わなければならない。

各被験者から、治験に参加する前に、治験への参加について自由意思による同意が文書により得られていることを記名捺印又は署名ずみ同意文書〔44.1〕 で確認する。

電子カルテの場合、カルテに書類は入れられないので、施設ファイルに保管されていることが多い。


同時に、記名捺印または署名ずみ同意文書写し等を被験者に渡したことを記名捺印又は署名ずみ同意文書写し等を被験者に渡した記録〔44.3〕 で確認する。

同意が得られていることを確認した上で、責任医師または分担医師が治験に適格な被験者を治験に組み入れていることを確認する。

●確認項目としては以下に示すものがあげられる。

(1)被験者に対し治験に関する十分な説明がなされた後に同意が得られている。

(2)同意文書及びその他の説明文書〔10.1〕、記名捺印又は署名ずみ同意文書〔44.1〕 の写し(再同意の場合は〔44.1〕
の写し)が被験者に手渡されているか(答申7‐2‐1‐4に該当)を、記名捺印又は署名ずみ同意文書写し等を被験者に渡した記録〔44.3〕
により確認。

(3) 説明者または説明補助者として同意文書に記載されている分担医師・協力者名が、医療機関の長が指名した治験分担医師及び治験協力者のリスト〔4.1〕
に記載されている者であり、説明または説明補助が分担業務とされている者であることを確認する。

(4)被験者識別コードのリスト〔39.1-1〕、被験者のスクリーニング名簿〔39.1-4〕、 被験者登録名簿〔39.1-3〕 等と同意文書の整合性がとれている。

(5)記載漏れがないか確認する。

(6)代諾者Q2から同意を得ている場合は、代諾者と被験者の関係を示す記録〔44.1-1〕 により被験者との関係を確認する。

(7)同意取得日が適正か否かを確認する。


ここでポイントとなるのは、「十分な説明」がなされたかどうか「被験者が質問をする機会と参加するか否かを判断するのに十分な時間が与えられたか」である。

以上の着目点としては、説明した日から同意取得までに十分な時間が被験者に与えられているかが考えられる。

しかし、同日同意の場合もありそれを「十分な時間」と判断する事は難しい。

対策: モニターは、責任医師、や分担医師および、CRC等の協力者に対して、被験者への説明文書をもとに行なった治験に関する詳細で十分な説明と、被験者からの質問とそれに対する回答など、説明の全ての経緯を記した「説明記録」の作成を提案し、その記録を確認する方法が良いのではないかと考えられる。(ただし強制はできない。あくまでも理想的な治験を実施するために…という提案であることを忘れないこと)



同意が取得できていることを確認した後、適格な被験者のみが治験に組み入れられていることを原資料(カルテ・検査伝票等)の直接閲覧により確認する。

確認項目は以下に示す。

・責任医師、分担医師が作成したスクリーニング名簿に記載された症例であることを確認

・プロトコルの選択基準に合致し、除外基準に抵触していないかを確認

・プロトコルに従い、被験者の既往歴、合併症、処方薬等を確認


【注意点】

それぞれの担当医師の最初の1〜2症例目登録前および登録時は、特に注意深く同意文書・被験者選定について確認する必要がある。

初期段階における直接閲覧の主な実施目的は、責任医師等がプロトコルおよびGCPを遵守して治験を実施していることを確認することにあり、極めて重要である。

この段階では、ミスや逸脱が発生しやすいため、頻繁に施設を訪問して確認する。

早期に方向修正を確実に行っていくことで、以降の同意取得および被験者選定における逸脱を防ぐことができる。

また、他院での処方薬、薬局で購入した薬剤の服用の有無を確認することで、併用薬の確認からひいては有害事象の発現を見逃すことを減らせる。


 
*********治験に関する質問と答え***********

Q1:同意文書の署名が被験者本人のものであることはどのように確認したらいいのですか?

A1:被験者署名欄に被験者以外の筆跡で署名されている事はありえません。
例外として、代諾者が誤って被験者名を記載してしまう事があります。

この事は、同意文書内の代諾者筆跡と被験者筆跡が一致する事で確認できます。
また、カルテ上には他にも同意文書等の資料がファイルされている場合もあり、そこから被験者や代諾者の筆跡を特定する事ができます。

*******************************





*********治験に関する質問と答え***********

Q2 :代諾者にはどのような人がなれるのですか?

A2 :答申GCP第の2条第19号解説‐18には、以下のように規定されています。

「治験への参加について、被験者に十分な同意の能力がない場合に、被験者とともに、又は被験者に代わって同意をすることが正当なものと認められる者であり、被験者の親権を行う者、配偶者、親権者、後見人、その他これらに準じる者で、両者の生活の実質や精神的共同関係から見て、被験者の最善の利益を図りうる者でなければならないあること。」

決してCRCが代諾者ということではありません。

つまり、戸籍上の関係がなくても、生活の実質や精神的共同関係があると判断できれば、代諾者になることができます。

弁護士等は、被験者の利益を考えて判断してもらえるように思えますが、生活の実質や精神的共同関係がない場合にはあまり適していないことになります。


*******************************





*********治験に関する質問と答え***********

Q3:公正な立会人の資格については、何か規定があるのか。

A3:GCP省令第52条第4項に、「立会人は、治験責任医師等及び治験協力者であってはならない」とある。
これは、治験責任医師、治験分担医師あるいは治験協力者は、説明する側に位置するものであり公正な立会人にはなり得ないためである。

立会人は、治験の実施から独立し、治験に関与するものから関係者から不当な影響を受けない者であり、被験者あるいは代諾者が同意説明文書等を読むことができない場合に、被験者あるいは代諾者から同意を得る過程に立会い、治験責任医師等から適切な説明が行われたことを保証できる第三者でなければならないインフォームド・コンセントの過程に立ち会うものである。


*******************************


■■■6−4.症例報告書の回収・点検・修正・固定
●責任医師、または分担医師が作成し、責任医師が内容に問題がないことを確認した、記名捺印、または署名済みのCRFを速やかに回収する。
回収にあたりCRFの内容に不備がないことを確認し、写しを責任医師に保存依頼する。



モニターは、基本的に責任医師を訪問のうえでCRFを入手することになる。

責任医師の最終確認が完了していれば、分担医師やCRC経由で入手することも可能である。
また、紛失を避けるため、郵送でのやりとりはなるべく行わないほうがよい。

なお、入手時は、責任医師へCRF(写)の提供・保管依頼が必要となる。



●チェックの際には通常「チェックリスト」を用いる。
チェックリストはCRF記載項目やプロトコルに従って作成される。
このリストが記載漏れや内容の矛盾等を「全て」見付けることができるデザインであれば、誰でも問題なくチェックすることが可能である。

また、チェックリスト作成時には、チェック漏れがないように、細心の注意を払う必要がある。

そのためには、プロトコルの内容およびCRFの記載方法を理解しなければならない。




●「CRFの社内点検時に必要な資料」

@SDVの記録

A署名・印影一覧表〔41.1〕
署名・印影一覧表は、少なくとも1症例目の同意取得前〜CRFを作成する前までの間に入手しておく。
また、分担医師、協力者の追加があった場合には、適宜、署名・印影一覧表を入手する。

B医療機関での治験薬の保管・管理記録〔32.1〕の(写)

C検査の基準値及びその範囲〔12.1〕の最新版

D原資料との矛盾を説明した記録(該当する場合)〔38.1-1〕

Eその他:被験者のスクリーニング名簿〔39.1-4〕や実施医療機関の長が指名した治験分担医師及び治験協力者のリスト〔4.1〕 等


■■■6−5.欠陥品、使用期限切れの治験薬の回収および追加交付
・治験実施中に使用期限切れの治験薬が生じる前(内服薬の場合期限の2〜3ヶ月前)に、また、欠陥品があった場合、適宜回収し、必要に応じて使用可能な治験薬を追加交付する。

・追加交付の際には、初回交付と同様に治験薬を交付し、治験薬納品書を提出する。また、治験薬受領書を入手する。

・回収の際には、治験薬および治験薬返却書を入手し、治験薬受領書を提出する。


品質等に関する事項で治験薬を回収する必要が生じた場合には、責任医師、医療機関の長および治験薬管理者に治験薬の投与を中止して頂く等の指示を速やかに行う。


*********治験に関する質問と答え***********

Q1: 治験薬を追加交付するとき、モニタリング報告書にはどのようなことを記載するのですか?

A1: 初回交付時と同様の内容、追加理由(症例追加等)、並びに追加数、組番を記載します。

*******************************




*********治験に関する質問と答え***********

Q2 :欠陥品を医療スタッフが発見した時に、モニターはどのように対応するのですか?
また、モニターが連絡を受けた後に、医療機関や依頼者へどのような対応をするのですか?

A2 :欠陥品を発見した時点で、すぐに連絡するように前もって説明しておきます。
医療機関からの連絡があり次第、依頼者に内容を報告して対策を練ります。

*******************************





*********治験に関する質問と答え***********

Q3 :欠陥品の回収はどこまで行われますか?
(例えば、ロット番号の同じもの、PTP等のシート、治験薬が入った小箱単位で回収する。)

A3 :欠陥の内容によりますが、どこまで回収するかは依頼者に相談する必要があります。

*******************************

■■■6−6.症例登録終了の通知
・症例登録数が治験実施計画書の予定症例数に到達した時点で依頼者は責任医師、分担医師および協力者に対し登録完了の通知を文書により行う。

・予定症例数は除外・脱落例を加味した解析対象例とする(契約書に記載された「予定症例数」の定義は、依頼者あるいは実施医療機関により異なることもあるので、あらかじめ十分確認しておくこと)。

・医療機関への連絡は、文書の郵送により一斉に行うことが一般的であるが、電話・面談等により再確認することが必要である。
 <<治験中の注意点へ文書の改訂・情報提供へ>>



ホームに戻る

【治験を実施する上での注意点。治験を行うときの注意点。治験実施のポイント。】

inserted by FC2 system