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 「GCPガイダンス」と「治験119」の合体:GCPの注意事項、GCPのグレーゾーン(4)
つづき
 (実施医療機関の長への文書の事前提出)
第10条 治験の依頼をしようとする者は、あらかじめ、次に掲げる文書を実施医療機関の長に提出しなければならない。
  ↓関係
質問番号:2008-13 対照薬の添付文書改訂に伴う被験者への説明文書の改訂の必要性

【背景】

同じ疾患を対象としている2社、2剤の治験において、対照薬は共通の市販薬が使用されていた。治験期間途中で、市販薬の添付文書が改訂となりました。

A社は、社内判断で添付文書の改訂があったことを治験責任医師への情報伝達を行っておりましたが、治験審査委員会の審議事項とはしませんでした。
B社は、添付文書の改訂の内容を治験審査委員会での審査対象と考えて、審査の依頼を受けました。
その結果、添付文書の改訂内容が被験者への説明文書に十分反映されていないということで、改訂が必要ではないか?という議論になっています。

【質問】

@ 対照薬(市販薬)の添付文書の改訂は、治験薬概要書と同様、審議資料となる必要があるのか?J-GCPからはそれを必要と考えるような記載が見当たらないようです。

A 添付文書の改訂が直接的に説明同意書の改訂に及ぶかどうかは、改訂の内容や程度によりますので、ここではその是非の議論の必要はないと思いますが、Dal-Reらの論文(R Dal-Re,et.al. Ethics. 2008;83:788-793)のように、改訂が必要となる議論もあります。
しかし、こうした類似の治験実施計画書で、同一の対照薬を使った試験を審議している治験審査委員会として、一つの共通の事象に対して、治験依頼者の対応の相違がそのままその後の試験対応の違いになることを恐れます(事実上のダブルスタンダード)。こうした対応が、問題と指摘されたケースは過去にありますでしょうか?

B 治験依頼者と対照薬の販売会社が違う場合、既に市販されている対照薬を使った試験の場合(白箱提供)の情報提供責任ですが、治験依頼者はどのような情報責任があるのでしょうか?当然、ビジランス活動は販売会社が行うことだと思うのですが、治験依頼者が提供可能な対照薬に関する情報は、厚労省の公表資料のみということでしょうか?


製薬協見解

ご質問の@につきましては、
対照薬(市販薬)の添付文書の改訂情報は、治験とは関係なく医療機関側に提供されているかと思われます。
治験としては、実施医療機関の長への文書の事前提出文書として、GCP第10条第1項ガイダンス1(8)に「その他の必要な資料」、また、治験審査委員会の審査資料として、GCP第32条第1項第5号には「その他当該治験審査委員会が必要と認める資料」が規定されています。

治験を行うことの適否についての審査資料として対照薬の添付文書が提出されている場合には、当該文書の改訂時にも最新の添付文書を実施医療機関の長へ提出する必要がありますが、当該改訂を治験審査委員会で審査してもらうかどうかは実施医療機関の長の判断に拠るものと思われます。
しかし、添付文書の改訂内容が治験に重要な影響を与えると判断される場合には、改訂された添付文書を治験審査委員会に提出し、審査を依頼する必要があると考えられます。

ご質問Aにつきましては、
ご質問のようなケースに対して問題となった事例があるか否かについてはわかりかねます。
GCP省令では、実施医療機関において複数の治験が実施されている場合の治験間での情報共有や対応の統一化等についてまでは触れられていません。しかし、「全ての被験者の人権、安全及び福祉の保護」という治験審査委員会の責務から考えますと、GCP省令に規定されていなくとも必要な調査や対応を指示することは問題ありません。今後の治験審査委員会の機能として発展していくべき内容とも考えられます。

ご質問Bにつきましては、
対照薬(市販薬)を使用する治験の場合、基本的には、治験依頼者と対照薬提供会社との間で、対照薬と同一成分の医薬品に係る安全性情報の伝達手順について協議、確認されているかと思われますので、治験依頼者はその手順にしたがって実施医療機関側に情報を提供しているものと考えられます。
 
質問番号:2008-23 治験分担医師の履歴書(その1)

平成20年10月1日発出されたGCP運用通知(薬食審査発第1001001号)によって、治験分担医師の履歴書は実質不要となっているかと思います。
@実施医療機関の手順書において、治験分担医師の履歴書は求めがあった場合にのみ提出すると規定することに問題はあるでしょうか?
A治験依頼者として、今後は治験分担医師の履歴書を求めない方向であるとの認識でよろしいでしょうか?


製薬協見解

@ 問題ありません。
平成20年4月1日以前に開始している治験に関しては、従来の治験届の法規制が適用されますので、治験分担医師の履歴書を今後も求めてくる可能性はあります。(2008-35の見解もご参照下さい)
質問番号:2008-31 治験審査委員会による被験者紹介依頼状審査の必要性

A医療機関で実施している治験について、当該治験の治験責任医師が、知り合いの他医療機関の医師へ下記の内容でレターを発行し、被験者候補の紹介を受ける予定の場合、やはり当該レターや手順については、GCPの規定する『被験者募集手順』に該当し、治験審査委員会の承認が必要となるのでしょうか?

<レターの記載内容>

治験責任医師医師から知り合い医師宛
・A病院で「治験」を実施している旨
・対象疾患
・当該治験の簡単な選択基準の記載
・該当しそうな患者がいる場合には紹介して欲しい旨


製薬協見解

治験に係る被験者募集につきましては、平成11年6月30日付け医薬監第65号にて厚生省医薬安全局監視指導課(現 医薬局監視指導・麻薬対策課)から「治験に係る被験者募集の情報提供の取扱いについて」が通知されています。
この被験者募集は、「治験を円滑に推進するための検討会」からの一つの提言「イ.被験者募集のための情報提供活動」を受けて通知されたものですが、主に、個々の治験の実施に当たっての被験者への情報提供活動として、実施医療機関内外において国民が個々の治験の情報に触れる機会を与えることができる旨について提言されていたものです。

ご質問のケースは、治験の対象と考えられる被験者向けの情報提供活動ではなく、実施医療機関外の医療機関に向けての治験の情報提供に該当するかと思われますので、GCP第32条第1項ガイダンス2(3)でいう「被験者の募集手順(広告等)」には該当せず、治験審査委員会の承認を取得する必要はないものと考えます。

しかし、実施医療機関以外への情報提供が、被験者募集に該当するか否かは、提供される情報の内容及び提供先での使用方法にも左右されるかと思われますので、詳細な治験の内容などが提供先で患者さんに説明される場合や、被験者を紹介する側の医療機関(の医師)に対して何らかの報酬が生じるかなども考慮の上、当該手順について治験審査委員会による審査の必要性を判断されることをお奨めします。

なお、通常、治験契約書及び/又は治験実施計画書においては「治験依頼者の事前の同意なしに第三者に情報を開示するができない」旨の注意事項が記載されており、治験責任医師には秘密の保全義務が生じることになりますので、この観点から、「知り合い医師にレターを送る(情報開示する)」ことについて、治験依頼者との事前合意は必要になると考えます。
質問番号:2008-34 症例報告書のEDCへの変更

GCP第10条(実施医療機関の長への文書の事前提出)には「(3)症例報告書の見本」の提出が定められています。
新規申請の際に見本が提出されており、その時点では紙媒体のCRFとのことでした。

その後、体制が変わったらしくElectronic Data Caputure System (EDC)に変更になるという連絡を受けました。CRFの内容自体の変更はないそうです。

GCP第10条に「症例報告書の見本」の提出が定められている理由は報告内容を確認するためだと思うのですが、紙媒体⇒EDCへの変更(又はその逆)の場合はIRBへ変更の報告などは不必要と考えて宜しいでしょうか。
元々新規申請の際に「症例報告書の見本」について紙媒体かEDCかを明記する必要もないと考えていますが、いかがでしょうか。


製薬協見解

ご質問の場合においては、報告方法が単に紙から電子に変更されるだけでなく、治験責任医師等及びCRCによる臨床データや電子署名のeCRFへの入力、中央臨床検査会社から治験依頼者への臨床検査値のロード、モニターによる直接閲覧方法など実施医療機関側を含む治験実施体制も変更されることになることから、治験実施計画書中のCRFの記載・提出に関する記述が変更されるものと思われます。

以上のことから、CRF見本の変更に関する審査は必要ないと考えられますが、治験実施計画書の変更という点ではIRBの審査が必要(多くの場合は迅速審査で可)になると考えられます。

(注釈)
GCP第10条第1項ガイダンス1では、「治験実施計画書において、症例報告書に記載すべき事項が十分に読み取れる場合は、当該治験実施計画書をもって症例報告書の見本に関する事項を含むものと解してよい。」とありますので、症例報告書の見本は、実施医療機関の長への提出文書として必須ではありません。
質問番号:2008-35 治験分担医師の履歴書(その2)

平成20年10月1日付GCP運用通知では、治験審査委員会の審査資料として治験分担医師の履歴書が必ずしも必要ではないとされました。
ICH-GCPでは、治験分担医師の履歴書が必須文書(Essential Documents)の一つ(8.2.10)とされております。治験分担医師の履歴書がないことが、本邦のGCPとICH-GCPとの共通性の点において、問題とはならないのでしょうか。


製薬協見解

平成20年2月29日付GCP改正及び平成20年10月1日付GCP運用通知改正は、ICH-GCPとの整合性も考慮した上で制定・施行されています。

治験審査委員会及び治験依頼者による治験分担医師の履歴書の入手については、ICH-GCP本文では明記されていませんが、ご質問のように、ICH-GCP Essential Documentsにおいて、治験依頼者は治験分担医師の履歴書の入手が必要である旨が記載されています。

一方、ICH-GCP Essential Documentsに対応する厚生労働省医薬食品局審査管理課 事務連絡(平成25年2月14日付)「治験に係る文書又は記録について」においても、「治験責任医師の履歴書等の文書及び治験分担医師の氏名リスト」は治験依頼者が入手すべき文書として記載され、「求めがあった場合には治験分担医師の履歴書」と規定されていますので、必要と判断される場合には入手することは可能ですので問題はないと考えられます。
質問番号:2008-36 治験分担医師の履歴書(その3)

治験実施診療科名が循環器科から循環器内科に変更されました。
その際、同意説明文書や治験分担医師・治験協力者リスト、契約書の*変更手続きは取りましたが履歴書の再入手を失念しておりました。

同時に治験分担医師の追加もあり、新規の分担医師の履歴書は循環器内科で取得しています。
その為変更はされていることは確認できると考えておりました。
私のエラーですが、今後の適切な処置についてご教授頂けないでしょうか?

*:GCP省令改正(平成24年12月28日)により、治験契約書への治験責任医師の職名、治験分担医師の氏名及び職名の記載が不要になりました。


製薬協見解

治験責任医師の履歴書は、GCP第10条第1項ガイダンス1(5)において「治験責任医師となるべき者がその要件を満たすことを証明した履歴書」とあることから、婚姻等による氏名の変更、診療科名称の変更等の事務的変更であれば、要件には影響しないと考えられますので履歴書の再入手・再提出は不要と考えます。
治験分担医師の履歴書は、GCPガイダンスにおいて、求めがあった場合に入手・提出する資料となりますが、治験責任医師と同様に事務的事項の変更であれば再入手・再提出は不要と考えます。
 
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