【モニター教育担当者用】
1)一番大切なこと | 2)研修のあり方 | 3)カリキュラムの作り方 | 4)講師の育て方 |
1)一番大切なこと |
モニターの教育担当者として、一番大切なこととは何か? それは、モニターの貴重な時間を無駄にしないことです。 それでなくても、モニターは忙しいのに、研修のために時間を空けてくれています。 その貴重な時間を無駄にしないように、注意したいところです。 もちろん、自分の時間も大切にしないといけないでしょう。 両者の時間を無駄にしないために、実のある研修をしましょう。 そのためにはどうしたらいいのでしょうか? |
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■一番大切なこと | ||
それは、『モニターの役に立つ研修』を提供することです。 簡単そうでいて、これが一番難しい。 文字通り「役に立つ」研修というところが、一番重要です。 教育なんていうものは、巡り巡れば、無駄になることはありません。 しかし、忙しいモニターにそんな悠長なことは言ってられません。 即、明日から実践の場で使えるスキルや知識を研修で提供し、身につかせること。 これが一番大切なことです。 研修が安易なプログラムになっていないか、もう一度、見直してみることをお奨めします。 以下、見直す際のポイントをあげます。
以下、順次解説していきます。 なお、具体的な解決方法は 2)研修のあり方 と 3)カリキュラムの作り方 で提示します。 |
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1.講義形式が8割以上になっていないか? | ||
研修として、一番やりやすい方法が「講義形式」です。 しかし、これほど眠くなる研修は無い。 受講者の人数が多くなれば「内職」をする者も出てくるでしょう。 もし、年間プログラム、一日プログラムの8割以上を「講義形式」の研修が占めていたら、要注意です。 その時、どうするかはあとで述べます。 いずれにしても、安易だからと言って、無計画に単純な「●●●講演報告会」や「▲▲▲の事例報告」などと研修をしていては、いずれ、「テーマ」に行き詰まります。 「来月の研修テーマは何にしようか? 誰かやってくれないかな。」なんてなるのがオチです。 また、講義形式だけでは、知識が身につきません。 「知っていること」と、「実行できること」との間には50億光年の差があります。 僕の経験でも、「医薬品機構からの指摘事例」という報告をしたことがあるのですが、その講義のすぐあとで、模擬SDVをやってもらったら、報告したばかりのミスを犯していた人が大半でした。 ■研修の目的 研修の目的は--- 知らない→知っている→行動に移せる、と持っていくことにあります。 |
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2.事例検討会に走ってないか? | ||
「事例検討会」ほど、研修担当者から見ても、受講するほうから見ても、「受け入れやすい、人気の高い」研修はありません。 しかし、そこには、危険な罠が潜んでいます。 ■罠その1 「事例検討会」というのは、ある事例をもとに受講者が自分なりの「意見(output)」を出し合いながら検討しあうということになります。 この「意見(output)」は、どこから来るかというと、「知識(input)」です。 つまり「知識」が低い者同士で意見を交換しても、あまり適切な検討になりません。 実は、これは僕の体験談からも言えます。 今の会社に入ったばかりの時に、「事例検討」をやっているのを見学したことがあります。 すると「あぁ、この人たちGCPを知らないで検討している」というのが良く分かりました。 GCPに既に書かれていることを、延々と検討していたり、明らかにGCP逸脱するようなことを考えたりしていたのです。 これでは時間の無駄です。 そこで、「まずは、GCPの条文を覚えてもらうところから始めないといけないな」と思いました。 そう思って今年で2年がたちました。 やっと「事例検討会」が有意義になる程度のGCPなどのガイドラインの知識がモニターのみなさんについたので、これからは、事例検討会をやろうかと計画しているところです。 もちろん、「事例検討会」を完全に否定するわけではありません。「注意」が必要だということです。 ■罠その2 もう一つ注意点があります。 例えば「GCPの条文」で、明確に規定されてない部分がありますね。 いわゆるグレーゾーンと呼ばれているところです。 そのような事例を検討すると、最終的には、「会社として、どう対応するか」を決めないといけなくなります。 事例検討会で、そのような結果が出た場合、じゃ、それを今後はうちの会社ではこうしよう、と誰が決定してくれるのか? それが決まらないと、結局、なにも決まらずに「ただ検討しただけ」という不満が、受講生に残ることが多いようです。 もちろん、事例検討会で出た結果を、すぐにきちんと会社としての今後の態度と決定してくれるならいいと思います。 ■「事例検討会」の効率的な研修方法としては、次の流れのほうが良いでしょう。 1)問題事例が有ったら、まず会社として、どう対応するかをしかるべきところで検討し、決定してもらいます。 2)それから、その決定事項を徹底させるために、事例検討会をやります。 また、会社で方針を決めておかないと、事例検討会で下手な結果が出た場合、困ることになることもあります。 あるいは、答えが既に明確になっていることを検討してもらうのも手です。 これなら、事例検討会後に、自分たちの思考経路が間違っていなかったかどうかが確かめられて、受講生も納得します。 たとえば、ある程度、検討された結果としての「社内のQ&A集」や「JSQAの成果物」を利用したり、市販されている「GCPのQ&A集」があるので、その正解を伏せて、事例を検討してもらい、正解と自分たちの検討結果と比較するといいでしょう。 |
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3.受講生のレベルに合っているか? | ||
鉄棒の「逆上がり」もできない人に「大車輪」を教えようとしても、無理があります。 また、「大車輪」ができる人に「逆上がり」の方法を教えても、退屈なだけです。 研修は、受講生のレベルに合っている必要があります。 そのためには、どうするか? ■全ては「現状把握」から始ります。 まずは、自社のモニターのレベルを測定します。 その方法の詳細は 2)モニター研修のあり方 で述べますが、簡単に言うと以下の方法を取ります。
これらの方法を使いながら、自社のモニターの現状(強い点、弱い点)を把握し、受講生のレベルに合った研修を行います。 もちろん、全員が同一レベルではありません。それはカリキュラムの作り方で工夫する必要があります。 |
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4.研修技法が適切か? | ||
上記の1.講義形式が8割以上になっていないか? でも述べましたが、例えば「SDVの研修」を考えてみましょう。 監査や医薬品機構からの指摘を講義形式だけで終わらせても意味がありません。 それらの指摘を繰り返さないようにするのが、研修の目的です。 そのためには、研修技法を考える必要があります。 「SDVの研修」では、たとえば「講義形式」で注意点を講義したのち、今度は模擬カルテと模擬CRF等を使い、実際に、その指摘事項を繰り返さないようになるまで、訓練させる必要があります。 また、「医師、CRCとのコミュニケーション」という研修を「講義形式」だけで終わらせる人はいないと思います。 必ず、ロールプレイを使って、体に染み込ませる必要があります。 このように、研修の目的に沿った研修技法を使うことが重要です。 |
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5.研修そのものを評価しているか? | ||
研修をただ漫然とやっていても無意味です。 本当に、研修した内容を受講生が覚えたか、身につけたかを評価すべきです。 実は、これも僕の体験談があります。 SDV研修を模擬カルテと模擬CRFを使い、半年実施しました。その半年間は、受講生が模擬SDVをやったあとに、受講生に気づいた点を言ってもらい、その後、僕が正解を述べるというスタイルでした。 半年が過ぎ、念のためと思い、模擬SDV研修の評価をしました。 模擬SDVを実施してもらい、カルテとCRFの間での不整合個所、気になる点、あとで医師に確認すべき点などをリストアップし、提出してもらいました。 提出された用紙を採点して、愕然としました。 満点が100点だとすると、平均点が50点くらいでした。 僕としては、80点は固いだろうと思っていたのでショックでした。 「この半年の研修に、何を教えていたんだろう・・・」 そこで、次の研修では教え方を変え、研修した結果、今度は平均点が80点くらいになりました。 つまり、モニターの評価も重要ですが、それ以上に『研修そのもの』の評価が重要ということです。 評価方法については 2)研修のあり方 で検討します。 ■以上のことに注意しながら、研修のあり方を考えたいと思います。 →「2)研修のあり方」 |
【モニター教育担当者用】
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