【治験の進め方のコツ・ポイント】

モニタリングのコツ・治験の効率的な進め方。治験の進め方のポイント(8)
治験を進めることで注意すること。治験の進め方のコツ・モニタリングの注意点




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●治験責任医師・施設の調査選定から治験薬交付まで(まとめ)
●治験の進め方のポイント(28)

ここで、一回、整理しておきましょう。

モニターが施設を担当したら、まずやることから治験薬の交付までをまとめておきましょう。


【調査・選定〜治験薬交付】

●施設と治験責任医師候補を訪問し、施設と治験責任医師(候補)がGCPの要件(下記参照)に合致しているかを確認。
(GCPに医療機関の要件と治験責任医師の要件があるので、それに合致しているかを確認。)
     ↓
●治験事務局で治験申請手順を教えてもらう。(どんな書類を何部、どこに提出すればよいか?等)
     ↓
●治験責任医師に治験を打診し、内諾を得る。
     ↓
●治験依頼者はモニターの調査結果を参考に、正式に治験を依頼する治験責任医師候補を決定。
     ↓
●治験責任医師にプロトコル等を説明、提出して治験の可能性を検討してもらう。
     ↓
●治験責任医師とプロトコルの合意。(合意書を2部作成。それぞれを治験責任医師と治験依頼者が保管)
     ↓
●履歴書、同意説明文書、協力者リストの作成を治験責任医師に依頼。
     ↓
●治験申請書類一式を治験審査委員会に提出し、審議してもらう。
     ↓
●治験審査委員会で治験が承認されたら医療機関の長から「指示・決定通知書」を「治験審査委員会審議結果通知書」とともに入手。(統一書式ではこの2種類の書類は一体化している。)
     ↓
●治験の契約を締結。治験事務局から「医療機関の長が了承した協力者リスト」を入手。
     ↓
●契約書の内容を治験責任医師に確認してもらう。(確認してもらったことをモニタリング報告書に記載。)
     ↓
●治験薬を医療機関の交付。


・・・・ふぅ。細かいことはともかく、大きな流れとしては上記のようになります。

この流れをしっかりとモニターは頭に入れておきましょう。

そして、先を読みながら、日々の仕事を行います。



●(実施医療機関の要件)

第35条 実施医療機関は、次に掲げる要件を満たしていなければならない。

1)十分な臨床観察及び試験検査を行う設備及び人員を有していること。

2)緊急時に被験者に対して必要な措置を講ずることができること。

3)治験責任医師等、薬剤師、看護師その他治験を適正かつ円滑に行うために必要な職員が十分に確保されていること。

実施医療機関は、十分な臨床観察及び試験検査を行うことができ、かつ、緊急時に必要な措置を採ることができるなど、当該治験を適切に実施しうるものであること。

通常、次の条件を満たすことが必要である。

(1)当該治験を安全に、かつ、科学的に実施するための設備が備わっていること。

(2)治験責任医師、治験分担医師、当該治験に関係する薬剤師、検査技師、放射線技師、栄養士及び看護職員等必要な職員が十分揃っていること。

(3)治験薬管理者が治験薬の性質及び治験実施計画書を理解し、当該治験薬の適切な保管、管理及び調剤等を実施し得ること。

(4)記録等の保存を適切に行い得ること。


小さなクリニック等で「緊急時に被験者に対して必要な措置」ができそうもない場合は、近くの病院(緊急時に被験者に対して必要な措置ができるところ)と連携するよう申し出る。


また、IRBの構成もしっかりと確認!!

(治験審査委員会の構成等)

第28条 治験審査委員会は、次に掲げる要件を満たしていなければならない。

1)治験について倫理的及び科学的観点から十分に審議を行うことができること。

2)5名以上の委員からなること。

3)委員のうち、医学、歯学、薬学その他の医療又は臨床試験に関する専門的知識を有する者以外の者(次号及び第5号の規定により委員に加えられている者を除く。)が加えられていること。

4)委員のうち、実施医療機関と利害関係を有しない者が加えられていること。

5)委員のうち、治験審査委員会の設置者と利害関係を有しない者が加えられていること。


治験を依頼する病院が自前のIRBをもっていない時は外部のIRBを利用することになるが、その場合は、病院とIRBの設置者が契約していることを確認すること。

なお、治験審査委員会の成立要件は上記の1)〜5)に「加えて」、「過半数の出席」が必須!!(ただし5名以上)





●(治験責任医師の要件)

第42条 治験責任医師は、次に掲げる要件を満たしていなければならない。

1)治験を適正に行うことができる十分な教育及び訓練を受け、かつ、十分な臨床経験を有すること。

2)治験実施計画書、治験薬概要書及び第16条第7項又は第26条の2第7項に規定する文書に記載されている治験薬の適切な使用方法に精通していること。

3)治験を行うのに必要な時間的余裕を有すること。



1 治験責任医師は、教育・訓練及び経験によって、治験を適正に実施しうる者であること。治験責任医師は、本基準を熟知し、これを遵守すること。

2 治験責任医師は、治験実施計画書、最新の治験薬概要書、製品情報及び、第16条第7項又は第26条の2第7項に規定する文書に記載されている治験薬の適切な使用方法に十分精通していること。

3 治験責任医師は、モニタリング及び監査並びに治験審査委員会並びに規制当局による調査を受け入れること。治験責任医師は、モニター、監査担当者、治験審査委員会又は規制当局の求めに応じて、原資料等のすべての治験関連記録を直接閲覧に供すること。

なお、直接閲覧に関する事項は、治験実施計画書に記載されるべき事項である(第7条第1項第9号又は15条の4第1項第10号参照)。

4 治験責任医師は、合意された期間内に治験を適正に実施し、終了するに足る時間を有していること。

5 治験責任医師は、合意された募集期間内に必要数の適格な被験者を集めることが可能であることを過去の実績等により示すこと。

6 治験責任医師は、治験を適正かつ安全に実施するため、治験の予定期間中に十分な数の治験分担医師及び治験協力者等の適格なスタッフを確保でき、また適切な設備を利用できるものであること。


●緊急の危険回避のための逸脱または不遵守
●治験の進め方のポイント(29)

●緊急の危険回避のための逸脱または不遵守(GCP省令第46条)


緊急の危険回避のための逸脱または不遵守の場合、以下の書類作業が必要となる。

●治験責任医師に「治験実施計画書からの緊急の逸脱又は変更の記録」の作成を依頼する。
  ↓
●「治験実施計画書からの緊急の逸脱又は変更の記録」を治験責任医師より入手し保存する。
また、治験責任医師には写しの保管を依頼する。
  ↓
●「治験実施計画書からの緊急の逸脱又は変更の記録」 の内容(逸脱内容とその理由等)を確認し、医療機関の長より「治験実施計画書からの緊急の逸脱又は変更の記録」を入手する。
  ↓
●IRB審査

●IRB審査にて承認後、「治験実施計画書からの緊急の逸脱又は変更に関する治験審査委員会の承認の文書」に基づく「医療機関の長の了承の文書」を治験責任医師に保存していただく。
  ↓
●逸脱が医療上やむを得ない措置であったことを、依頼者と医療機関の長との間で治験依頼者の「合意の文書」により合意する。


・緊急の危険回避の逸脱が発生した場合は、早急にプロトコルの改訂の可否について治験責任医師に確認する。

・治験責任医師より緊急回避のための逸脱情報を事前に入手する場合もある。

●有害事象&副作用
●治験の進め方のポイント(30)

●有害事象&副作用


・モニターは実施医療機関で生じた全ての有害事象について、プロトコル、IRB、治験依頼者及びGCPによって要求されている期間内に適切に報告されていることを確認する。

・モニターは担当医療機関で発生したSAEについて、早期に直接閲覧にて確認を行うことが望ましい。

・モニターは海外や他医療機関で生じた重篤な副作用について、治験責任医師等、協力者および医療機関の長に報告する。



・有害事象とは治験薬を投与された被験者に生じたすべての好ましくない又は意図しない疾病又はその徴候(臨床検査値の異常変動を含む)をいい、当該治験薬との因果関係の有無は問わない。

・治験薬においての副作用とは、当該治験薬と有害事象との間の因果関係について、少なくとも合理的な可能性があり、因果関係が否定できない反応を指す。

因果関係の判定を行う際には以下のことが参考になる。(GCP省令第2条ガイダンス15−(10)

●投与中止後の消失

●投与再開後の再発

●既に当該被験薬又は類薬において因果関係が確立

●交絡するリスク因子がない(簡単に言うと「併用薬がない」とか、ほかに関係しそうなことがない、ってことね。)

●曝露量・曝露期間との整合性がある

●正確な既往歴の裏付けにより被験薬の関与がほぼ間違いなく説明可能

●併用治療が原因である合理的な可能性がみられない

・・・・・・等を参考にすることができる。




・SAE(重篤な有害事象)とは、治験薬が投与された(投与量に関わらない)際に生じたあらゆる好ましくない医療上の出来事のうち、以下のものをいう。(薬事法施行規則第273条)

@死亡

A死亡につながるおそれのある症例Q2

B治療のために病院または診療所への入院または入院期間の延長が必要とされるものQ3(治療のために入院したが、特に処置を行っていない場合も含む。検査を行うための入院またはその期間の延長は含まれない)

C障害(日常生活に支障を来す程度に機能不全の発現を示すもの、永続的または顕著な障害もしくは機能不全に陥る症例)

D障害につながるおそれのある症例

E@〜Dに準じて重篤なものQ4

F後世代における先天性の疾病または異常を示す症例





・実施医療機関で有害事象が発生した場合、全体として以下のような業務が発生する。


●有害事象発生
  ↓
●担当医師による判断(既知・未知、因果関係等)
  ↓
●重篤な場合、速やかに依頼者と医療機関の長に報告(速報)する(医師)
  ↓
●発生した有害事象について、早期に直接閲覧を行い、詳細を確認する(モニター)
  ↓
●依頼者は既知・未知、(因果関係も)を判定する。
  ↓
・因果関係を否定できない
・未知・重篤である 
・既知であり、死亡、死亡のおそれのあるもの

治験責任医師・依頼者の両方が因果関係を否定した事象については、規制当局および他の医療機関(医療機関の長・治験責任医師)への報告は不要である。
  ↓
●依頼者は規制当局に当該SAEを報告する。
  ↓
●依頼者は、全ての医療機関の長および治験責任医師に重篤で予測できない副作用等の報告にて速やか(1ヶ月以内)に報告する。
  ↓
●治験継続の可否をIRBで審議する。




・他施設で重篤な副作用が発生し規制当局への報告対象となる場合、全ての医療機関の長および全ての治験責任医師に安全性情報として提出しIRBでの審議を依頼する。

・治験責任医師に、上記の情報を踏まえて治験継続について問題がないか、同意・説明文書の改訂の要否について確認を行う。 

・同意・説明文書の改訂が必要な場合は、治験参加中の被験者に治験責任医師から当該情報を伝えて治験参加継続の意思を確認し、その結果を診療録に記録してもらう。

また改訂された同意・説明文書が、IRB承認された後に、同意・説明文書(改訂版)を用いて、再同意を文書で取得する。


・以上は個別症例の報告に関する手順である。

これとは別に、依頼者に、因果関係を否定されたSAEも含めて規制当局へ定期報告(1年毎、2か月以内)を行うので、その報告内容についても全医療機関(医療機関の長・治験責任医師)への報告する必要がある(1年毎、3か月以内:報告手順など詳細については、事前に依頼者へ確認しておくこと)。


 
有害事象&副作用(その2)
●治験の進め方のポイント(31)

●有害事象&副作用(その2)



治験における重篤な副作用の規制当局への緊急報告は重篤区分により、以下のように分けられる。

●情報を知りえた日から7日以内に報告

治験薬概要書から予測できない
・死亡
・死亡につながるおそれのあるもの


●情報を知りえた日から15日以内に報告

治験薬概要書から予測できない
・治療のために病院または診療所への入院または入院期間の延長が必要とされるもの
・障害(日常生活に支障を来す程度に機能不全の発現を示すもの、永続的または顕著な障害もしくは機能不全に陥る症例)
・障害につながるおそれのあるもの
・上記に準じて重篤なもの
・後世代における先天性の疾病または異常を示すもの

予測できる
・死亡
・死亡につながるおそれのあるもの


●定期報告(1年ごと)

上記の事象に加えて、「予測できる副作用による入院、障害、準じるもの、先天異常」




●SAEが発生した時に行う直接閲覧では、どういったことを確認すればいいでしょうか?
   ↓
医師から受領した、SAEの速報と詳報について、原資料と整合性があるかどうかを確認します。

確認する時期は、なるべく早い時期が好ましいです。

速報と詳報は、様式、記載内容、報告時期がプロジェクトにより異なるので、事前に確認しておく必要があります。




●「死亡につながるおそれのある症例」とは、どのように考えたらよいか?
   ↓
ICHの規定の「生命を脅かすもの」に該当し、その事象の発現時点において患者が死の危険にさらされている場合をいう。

仮にもっと重度であれば死を招いたかもしれないという意味ではない。

「肺炎」だって、こじらせると「死を招く」になりますが、その時点で「家で安静にしていなさい」程度なら、「死亡につながるおそれのある症例」ということ。

でも、たとえば高齢者の「肺炎」が悪化して呼吸困難になり救急救命室に入り危篤状態になった場合は「死亡につながるおそれのある症例」となる。



●「治療のために病院又は診療所への入院又は入院期間の延長が必要とされるもの」とは、どのように考えたらよいか?
  ↓
ICHの規定の「治療のための入院又は入院期間の延長が必要であるもの」に該当する。

副作用治療のために入院又は入院期間が延長になった場合であり、副作用治療のため入院したが特に治療を行っていない場合(安静治療)も該当する。

例えば、アナフィラキシーショック、偽膜性大腸炎で入院した場合等が該当する。

なお、検査を行うための入院又はその期間の延長、副作用が治癒又は軽快しているものの経過観察のための入院は含まない。
(副作用等報告に関するQ&Aについて 平成18年5月31日事務連絡)



●「@〜Dに準じて重篤なもの」とは、どのように考えたらよいか?
  ↓
ICHの規定の「その他の医学的に重要な状態と判断される事象又は反応」すなわち直ちに生命を脅かしたり死や入院に至らなくとも、患者を危機にさらすおそれがあったり、「死に至る」、「永続的又は顕著な障害・機能不全に陥る」、「生命を脅かす」、「治療のための入院又は入院期間の延長が必要である」ような結果に至らないように処置や治療が必要になるような重要な医学的事象の場合がこれに該当する。

例えば、救急処置室等又は自宅において集中治療を必要とするアレルギー性気管支痙攣、入院には至らないものの血液障害又は痙攣を来した場合、薬物依存症又は薬物乱用等がこれに該当する。
(副作用等報告に関するQ&Aについて 平成18年5月31日事務連絡)




●SAEの速報の報告は治験責任医師からでなくても良いか?
  ↓
詳報の報告については、省令第48条2項により治験責任医師から報告すると定められていますが、速報についてはGCP上特に定められていないため、分担医師からでも報告は出来ます。

ただし、プロトコルによっては速報も治験責任医師から報告すると定められている場合や速報についてはモニターが記載しても良いとしている依頼者もありますので、注意が必要。



 
●治験薬割付けコードを早期に開封した場合 
●治験の進め方のポイント(32)

●治験薬割付けコードを早期に開封した場合

・モニターはプロトコルに定められた手順によって開封が行われていることを確認し、治験責任医師に「予定より早い治験薬割付けコードの開封記録」の作成を依頼する。

・盲検法による治験においてSAE等が発生し、治験責任医師が割り付けられた治験薬の種類を知る必要が生じた場合、エマージェンシーキーコードの開封が行われる。

・盲検法による治験において予め定められた時期よりも早い段階での開封(事故による開封、SAEのための開封等)を行った時は、治験責任医師はこれをその理由とともに速やかに文書に記録し、依頼者に提出する。

・盲検下の治験では、依頼者は治験薬のコード化および包装に際して、医療上の緊急時に当該治験薬がどの薬剤であるかを直ちに識別できるようにし、かつ盲検性が破られたことを検知できるようにしておかなければならない。

・エマージェンシーキーコードを開封する場合には即時性が大切であるため、24時間体制で開封できる方法が考慮されている必要がある。

24時間対応のため、エマージェンシーキーコードの保管・管理を業者に委託している場合もある。

・事故による開封や紛失においても開封となるため、治験責任医師に十分注意して頂くように予めコードの設定手順も含めて説明しておくこと。




●健康被害に対する補償

治験に関して被験者に生じた健康被害(治験に係る業務の一部を委託した場合における当該委託業務により生じた健康被害を含む)の治療に要する費用その他の損失の補償履行を確保するために、保険、その他の措置を講じてあるかを確認する。

治験において実際に「補償」の対象となる代表的な事例は「副作用」が発生した時だね。


・健康被害に関する申し出・訴えの情報を治験責任医師・分担医師より因果関係も含めて入手

・施設事務局及び依頼者へ報告

・被験者保護の立場から、発生した費用(副作用に対する医療費、入院費、必要な交通費等)を一時的に支払う必要性の有無、その他について検討する。(依頼者)

・依頼者から検討結果(補償の対象となるかどうか)を受ける。

・医療機関を通じて被験者への対応を行う。

・治験との因果関係が否定されれば(有害事象ならば)、補償対象外である(治療は行う)。当初は否定できなくても、その後の追加情報から否定された場合は、否定された時点以降が補償対象外になる。

ただし、「補償」に対する対応・考え方・ポリシーは会社ごとに異なるので、先輩、上司によく確認しておくこと。



●治験に関して被験者に健康被害が生じた場合には、「過失によるものであるか否かを問わず」、被験者の損失を適切に補償すること。

その際、因果関係の証明等について被験者に負担を課すことがないようにすること。(GCP第1条解説)

GCPの精神に基づき、有害事象に基づく治療費等の支払いをすることになった場合は、速やかに行うことが望ましい。



●依頼者が保険に入っておれば、CROは保険に入らなくていいか?
   ↓
健康被害に関してCROは依頼者と共同で補償の責任を負うことになり、依頼者との間で補償についての取り決めをしておかなければなりません。

CROは、自らが責任を取れるように、別途、保険に加入する等、適当な措置を講じなければなりません。

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